【コラム】米当局が利上げ時期決定に及び腰な訳-エラリアン

米金融当局が9月に利上げするかど うかという多くの市場参加者の関心事について、19日に公表された7 月28、29両日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録はほとん ど明確な手掛かりを示さなかった。

これは必ずしも金融当局が手の内を見せないよう狙っていることを 反映しているわけではなく、当局が直面する状況についての分析上の複 雑さを示唆するものだ。

金融当局者にとって非常に分かりにくく、9月の次回FOMCでの 利上げにコミットすることも、それを見送るとすることもなく、大きな 選択の幅を残すことになった主因として次の4つが考えられる。

まず、米経済と国際的な市場がそれぞれ発するシグナルに不一致が 見られる点だ。このうち、特にインフレや賃金の伸び悩みを踏まえれば 決して明白とは言えないものの、米国の経済指標は早ければ9月の利上 げを後押しする内容のものが多い。

これに対し、日本や欧州、新興市場の指標はいずれも明らかに世界 経済が不調にあり、政策面で一段の警戒が必要であることを示してい る。

次に金融市場の脆弱(ぜいじゃく)性が挙げられる。この数週間で 不振が顕著な分野が増えた。原油市場や新興市場通貨といった、当初は 比較的限られた領域の混乱が波及し、社債市場から最近は株式市場にも 圧力がかかっている。

元切り下げで複雑化

3つ目に、米国の経済動向と金融当局の経済モデルとの不一致の度 合いが大きくなっている点がある。当局の経済予測が正確さを欠けば、 自身の経済情勢をめぐる理解が堅固かどうか当局者は疑念を抱く。疑問 が広がりいつまでも解消されなければ、当局者はそれだけ金利政策の変 更についてリスク回避に傾くことになる。

最後に、引き締め時期を探る米金融当局と、緩和姿勢を維持する他 国・地域の中央銀行との政策の方向性の違いがある。特に日銀や欧州中 央銀行(ECB)、中国人民銀行についてはこうした相違が一層大きく なるだろう。

これに合せて人民銀による先週の人民元の実質切り下げも考慮すべ きだ。元切り下げで多くの新興市場通貨は売り圧力にさらされ、ドル高 につながる利上げのリスクを米金融当局は心配するようになるだろう。 ドル高が進めば米輸出業者の競争力は低下し、景気にも重しとなる。

結局、米金融当局はどっちつかずで臨むしかないことを意味する。 当局が置かれている不確実な情勢を考えれば、これはそれほど予想外の ことではない。このため、金融当局は9月16、17両日の次回FOMCの 直前まで態度を固めない見通しだ。

さらに、大きな選択の余地を確保するため、金融当局は利上げ開始 のタイミングをめぐって市場の関心をそらすことにもっと力を注ぐ一 方、私が連邦準備制度の歴史で最も緩慢な引き締めと呼ぶ、新たな利上 げサイクルを特徴づけるであろう3つの要素に注目するよう誘導するだ ろう。

それらはすなわち「将来の利上げがたどる極めて低い軌道」「引き 続きデータ依存度の高い政策決定プロセス」「過去の平均を下回る政策 金利の到達点」だ。 (モハメド・エラリアン)

(モハメド・エラリアン氏は、ブルームバーグ・ビューのコラムニ ストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Why the Fed Is Wishy-Washy on Rate Timing: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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