背中合わせの日米株式、業績・政策差で日本を向く海外投資家

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5月の高値以降、米国株が停滞している要因 はドル高による企業業績への懸念と、早ければ9月にも実施される利上 げ後の経済情勢に対する不透明感だ。利上げによるドル高は、日本では 円安を通じ輸出企業の収益を押し上げる可能性があり、グローバル投資 家はなお日本に好意的な視線を送り続けている。

ベアリング・アセット・マネジメントのアジア担当マルチアセット 戦略責任者、キエム・ドゥ氏は「欧州や米国、その他全ての地域に比 べ、日本の企業業績は素晴らしいものが出てきた。直近6カ月の間、わ れわれは米国株を売却し、日本に資金を振り向けてきた」と言う。

米S&P500種株価指数は5月20日に年初来高値の2134.72を付けた 後、低迷が続いている。8月14日時点の年初来騰落率はプラス1.6%。 一方、日本のTOPIXは増益決算への期待や低バリュエーション、日 本銀行の金融緩和政策の継続などが評価され、年初来でプラ ス18.3%。10日の取引では、およそ8年ぶりの高値水準を回復した。

ドル高・円安が米国株によりマイナスに作用したのは両指数の推移 が示す。12年半ぶりに1ドル=125円へ乗せる前の5月末時点の年初来 騰落率はS&P500がプラス2.4%、TOPIXがプラス18.9%。その後 の2カ月半で米国株は0.8ポイント、日本は0.6ポイント悪化した。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のまとめでは、TOPIX採 用企業の4-6月期経常利益は前年同期比29.7%増だった。ブルームバ ーグのデータによると、TOPIXベースで向こう12カ月の1株利益成 長率はプラス8.8%、さらに12カ月後はプラス9.1%。一方、S&P500 はプラス8.7%、プラス7%となっている。

ブラックロック・グローバル・アロケーション・ファンドのストラ テジスト、マット・エステズ氏は 「株価の上昇を経ても、日本株には 割安感が残る」とした半面、「米国の企業業績はシクリカルなピークに 近づいてきていると危惧しており、利益確定売りを進めている」と話し た。直近のTOPIXの予想PERは16倍、S&P500は17.7倍だ。

東京証券取引所が発表している投資部門別売買動向によると、7月 までの2カ月間、海外投資家は日本株を月間で売り越したが、直近8月 1週は現物株を2672億円買い越し、先物も7000億円以上買い越した。

金融政策格差、日本には企業改革機運

このほか、日銀の金融緩和政策の継続観測も日本株にとってのプラ ス要因だ。みずほ投信投資顧問の岩本誠一郎シニアファンドマネジャー は、景気拡大やインフレ率を上昇させるため、日銀は緩和策を拡大させ ないといけないだろうと予想する。日銀では、生鮮食品を除く消費者物 価指数(コアCPI)が2016年度前半ごろに2%に達するとの想定を維 持しているが、ことし6月の全国コアCPIは原油価格下落の影響もあ り、前年同月比0.1%上昇だった。

これに対し、連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を正常化さ せるタイミングを見計らう米国では、経済情勢の着実な改善から、早け れば9月にも9年ぶりに利上げを実施する見通し。フェデラルファンド 金利先物が示す9月利上げの確率は50%となっている。

コーポレートガバナンス(企業統治)や株主・投資家との対話促進 など企業改革が進み始めている点も、グローバル投資家が日本株を評価 する要因の1つだ。政府の日本再興戦略に基づき、東京証券取引所が6 月に導入した「コーポレートガバナンス・コード」では投資家が企業に 対しより高いリターンを求めることを推奨、企業が政策保有株、いわゆ る持ち合い株を保有する場合、方針を開示すべきと明記した。

これらの変化は「われわれが求めていることで、買いたいと思わせ る材料だ」とUBSグループのウエルス・マネジメント・ユニットのア ジア・アセット・アロケーション・ヘッド(香港在勤)、エイドリア ン・チュルヒャー氏は指摘する。

ゴールドマン・サックス・グループの試算では、来期(17年3月 期)の日本企業は配当金や自社株買いを通じ06年以来、最高額の株主還 元を行う見通し。野村証券によれば、4-6月の自社株取得枠の設定は 全上場企業ベースで前年同期比41%増の2.12兆円だった。

フィデリティー・ワールドワイド・インベストメントのインベスト メント・マネジャー、アルバ・デヴォイ氏(シドニー在勤)も「日本で のリターン拡大はまだ始まったばかり。米国に関しては、アウトパフォ ームできる可能性について懸念が残る」と話している。

--取材協力:Anna Kitanaka.