人民元安も黒田総裁を直撃、超長期債に妙味-日銀の物価目標に暗雲

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中国人民銀行(中央銀行)による突然の人民 元切り下げで、日本国債の強気派は超長期債への投資にますます重きを 置くことになりそうだ。人民元安が世界的なデフレ圧力となり、日本銀 行の物価目標達成にも暗雲を漂わせていることが背景にある。

財務省が11日に実施した30年利付国債の入札結果によると、投資家 需要の強弱を反映する応札倍率は3.30倍と3月以来の高水準だった。新 発30年債利回りは翌12日に1.395%と今月の低水準に並んだ。人民元の 中心レートは11日からの3日間で、ドルに対して5%近く下落しており 、輸入の2割以上が中国からという日本にとっても物価の押し下げ要因 になりかねない状態だ。

損害保険ジャパン日本興亜投融資部投資グループの石崎竜也グルー プリーダーは、「商品市況の下落により、インフレ圧力が弱まっている 。海外市場は、利回り曲線の平たん化が強まりやすい状況にある。日本 の中期債利回りは限界まで低下しているので、長い年限に低下圧力がか かり、平たん化傾向になりやすい」と言う。

ブルームバーグ商品指数は今月に入り、約14年ぶりの安値圏で推移 している。原油安を背景に、全国消費者物価指数(CPI)の上昇率は 今年に入って、生鮮食品と昨年4月の消費増税の影響を除けば、前年比 ゼロ%近辺だ。

岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「中国経済の減速 を含めて、海外経済のリスク要因が警戒されている。原油価格など、物 価下落により、期待インフレ率も低下している。日銀の追加緩和期待も 将来的には高まる方向だろう。金利低下余地はあると思う」と言う。

10年物固定利付国債と物価連動債の利回り差で、市場の予想インフ レ率を示すブレークイーブンレート(BEI)は先週、2月以来の低水 準を付けた。一方、バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチ債 券指数によると、7月から現時点までで10年超の日本国債の収益率は、 10年以下の3倍以上となっている。

利回り曲線は平たん化

市場関係者からは、米国債やドイツ国債に比べて、日本国債の10年 物と30年物の利回り格差は大きく、利回り曲線には平たん化(フラット ニング)が進む余地が残されているとの指摘が出ている。

日本の10年-30年債利回り格差は14日、102ベーシスポイント(b p、1bp=0.01%)程度。一方、米国の同利回り格差は64bp程度、 ドイツは67bp程度と日本の大きさが際立っている。

パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「 原油など商品市況が下落し、デフレ傾向になっている。中国はデフレを 輸出する状況にあり、世界的にデフレ圧力がかかる」と分析。日本は「 世界的に見て、10-30年債利回り格差が広がり過ぎている感じ」だと言 う。

需給の観点からは、30年物などの超長期債には生命保険会社など実 需の投資家が多く存在し、金利上昇局面では買いが入りやすいと指摘さ れている。

バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「利回り曲 線上では、相対的に超長期の方が魅力がある」と指摘。30年債などの超 長期債市場には、「目線を決めて、生保など実需の投資家が入ってくる ので、売られても止まる。利回りがある程度上昇し、1.5%程度の水準 では実需の買いが入ってくるので底堅い動きをする」と見込んでいる。

野村証券の中島武信クオンツ・アナリストによると、 「生保も外 債をどんどん積み増す感じではない。景況感は悪化しており、日本国債 を買いやすい方向になっている」と言う。

実質国内総生産

内閣府が17日に発表した4-6月期実質国内総生産(GDP)速報 値は、前期比年率1.6%減と、3期ぶりのマイナス成長となった。1- 3月期の3.9%増から大幅な悪化だ。

日銀は7月の金融政策決定会合で、「経済・物価情勢の展望(展望 リポート)」の中間評価を行い、2015年度の実質GDP見通し(政策委 員の中央値)を前年度比1.7%増に下方修正した。4月時点では2.0%増 だった。

三井住友アセットマネジメントの深代潤債券運用グループヘッドは 、「日銀は『展望リポート』で今年度の成長率見通しを下方修正してお り、4-6月期の弱さは織り込んでいる。ただ7-9月期に景気回復し 、10月以降に原油価格の前年比マイナスが消えてくるという2つの前提 があるので、これが崩れると、日銀に対して追加緩和期待が出てくると 思う」と話した。

内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は13日、中国の人民 元切り下げについて、日本の外需に過大な影響が出るようならば、日銀 が追加緩和する可能性もあると述べた