あなたの全てを上司が知りたい理由、プライバシー侵害寸前でも

パフォーマンスの高い職場という未来が、一 部でこっそりと形成されつつある。

非公開にしておく約束でほとんど語られることはないが、英国のあ ちこちで実は、ヘッジファンドや銀行、コールセンター、コンサルティ ング会社の従業員にウエアラブル端末を装着させ、そこでキャッチした 体からの信号を分析装置につないで解析するというシステムが導入され つつある。スポーツ界のエリート選手が活用してきたような方法だ。

ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジのイノベーション担当ディ レクター、クリス・ブラウアー氏は「選手の競技中とそれ以外での状 態、自宅での様子、就寝中や飲食時の状況とその内容を高度に分析する ことなく競争力を維持しているスポーツチームは世界にない」と説明 し、「職場も同じモデルに向かっている」と話した。

この新しいシステムは、人間の行動や生理学上のデータをビジネス のパフォーマンスに結び付けようとするもので、業務上の効率や安全性 の確保に焦点を絞りがちだった従来のウエアラブル利用目的とは一線を 画す。しかも技術は目立たないように検証されている。押し付けがまし いという批判を避けるためと、競走上優位に立てると信じて試している のだから他社には内緒にしておきたい理由などがあるためだ。

これについて元ゴールドマン・サックスのトレーダーで、現在はケ ンブリッジ大学の神経科学者として生理学上のシグナルをトレーディン グでの成功に結び付けようと積極的に企業と取り組んでいるジョン・コ ーツ氏は「既に現在進行形で、大手一部ヘッジファンドで始まってい る」と明かす。

同氏の学術研究の中心はリスク選好を促す生理学上の要因の理解。 テストステロンなど一部のホルモンが人の自信を高めてリスクを取るよ うにさせることが科学で解明されつつある。

心拍数のモニターであれ皮膚反応センサーであれ、ウエアラブルの 技術を使えば、人間の体が引き起こす影響がもっと目に見えるようにな るとコート氏は語る。「トレーディングするべきなのか、それとも家に 帰るべきなのか、判断する必要がある。そしてトレーディングするな ら、集中できているのでポジションを倍にすべきか」が分かるようにな ると続けた。

このようなトレーダー向けシステムで、コーツ氏は3つか4つのヘ ッジファンドと試行錯誤中だという。「優秀な運用担当者の多くはアル ゴリズムは行き着くところまで行ったと感じている。次にやるべきこと は人間の最適化だ」と語った。

職場以外での行動も仕事のパフォーマンスに影響する。運動や睡 眠、食事、飲酒やカフェイン摂取がこうした行動の一部だ。この関連性 に着目してゴールドマンやバンク・オブ・アメリカ、ヘッジファンドで 働く人を相手にしてきたのがピーク・ヘルスの創業者ダン・ゼレジンス キ氏。同氏は顧客のストレスをウエアラブルで追跡しつつ行動日誌を付 けてもらう。

「高額資産を持つ個人やポートフォリオマネジャー、バイサイドの 組織の経営者は何らかの強みを得られないか探している」と話すゼレジ ンスキ氏だが、「最も手っ取り早い」方法は良く食べて質の良い睡眠を とるという体力の回復に集中しがちだという。

ゼレジンスキ氏のサービスをゴールドマンで利用したコンサルタン トのジェーソン・ラビノウィッツ氏は「直感的な部分が多いが、データ で示されるまで分からない」と述べた上で、体の状態とトレーディング 成績との間には大きな隔たりがあり、「連関性を見つけることはできる かもしれないが追跡するのが難しい」と続けた。

分析の難しさの前に、プライバシー上の問題がないかも気になると ころだ。ブラウアー氏はしかし、体とパフォーマンスのつながりを分析 する技術がもたらす可能性を人々が認識するにつれ、プライバシー論争 はなくなっていくとみる。「技術を使って自分の力を高められるという 考えは絶対に普通になるし、自然な進化だ」と同氏は論じた。

原題:Why Your Boss Wants to Track Your Heart Rate at Work(抜 粋)

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