【コラム】FOMC、9月は利上げを見送るべき3つの理由

米連邦公開市場委員会(FOMC) は利上げの準備を進めており、早ければ来月にも動きそうな気配だ。ア トランタ連銀のロックハート総裁は最近、「ゼロ金利解除」は差し迫っ ていると認めた。米経済が回復しているという見方がその理由だ。

ロックハート総裁は先週の講演で、年初以降の経済の進展は「極め て心強い」と評価、つい数カ月前に比べて経済の弾力性への信頼を強め たとして、今後この展開が反転するかも知れないという「心配はかなり なくなった」と述べた。

しかしこの時期に利上げとは実に奇妙だ。以下の3点がその理由 だ。

*インフレは極めて低い。インフレ率はFOMCの目標水準である 2%をもう1年半以上も一貫して下回っている。ほとんどのエコノミス トが異論を唱えないと思うが、金利の上昇はデフレの方向に作用する。 ならばFOMCはなぜ、利上げを検討するのだろうか。

*中国経済が急降下している。中国政府の主張では経済はなおも 7%という快調なペースで成長していることになっているが、ここ数年 の世界経済のけん引役であった中国経済は、大方の見方では失速しつつ ある。統計の内容は非常に悪い。最近では株式相場が急落、不動産価格 も大きく下げ、政府は通貨の切り下げや株式市場のてこ入れに踏み切 り、パニックに陥っているように見える。

中国ショック増幅

中国の景気減速は必ずしも米経済に災いをもたらすとは限らない。 資源価格が押し下げられるため、米企業に歓迎される部分もあるだろ う。しかし中国の減速は中国側の輸入減少を意味するため、米企業の利 益率が低下する。人民元の切り下げも短期的には米企業の競争力を低下 させるだろう。つまり米国の国内総生産(GDP)と雇用の伸びに下向 きの圧力がかかる。これに利上げが加われば中国ショックは増幅され る。

*米労働市場はまだ、グレートリセッションから完全回復してな い。失業率が6%を割り込んだとはいえ、労働市場からの労働者撤退が 影響した結果だ。最近ではこの減少が反転に向かっている兆候もある が、それにしても生産年齢人口に対する雇用者の比率は2000年代全般に 比べてかなり低い。利上げとなれば、さらに労働需要が抑圧されるだろ う。

FOMCはなぜ、9月利上げに固執しているように見えるのだろう か。一つには、期待の固定化を心配しているのかもしれない。期待の固 定化とは基本的に、ゼロ金利が長く維持されると投資家はそれが永久に 続くと思い込んでしまうことだ。投資家や企業はこの期待に基づいて事 業や投資の計画を立てる。そのため、実際に利上げとなったときのショ ックは非常に大きい。つまり気まぐれな市場心理を考慮すれば、低金利 を長く維持すれば、その分将来の利上げが及ぼす被害が大きくなるわけ だ。だからFOMCは、今を逃したら二度と利上げに適したタイミング はめぐってこないと感じているのかもしれない。

日本銀行

しかしFOMCは慎重に構えるべきだ。理由は先に列挙したものだ けではない。歴史に目を向けることも大事だ。ちょうど米国のハイテク バブルがはじけた直後の2000年8月、まだデフレを脱却していない日本 では日本銀行がゼロ金利を解除した。この利上げがその後続いたリセッ ションの原因だとする意見は多い。

現在の米経済は驚くほどに2000年の日本と似ている。金利はゼロ、 インフレは目標を下回り、雇用はまだ軟調で、主要な貿易相手国の経済 が苦しい立場にある。FOMCはゼロ金利がいずれ経済にダメージを与 えるかもしれないとの心配はほどほどにして、慎重に考えるべきだ。

(ノア・スミス氏はストーニーブルック大学の准教授です。コラム の内容は必ずしも同社編集部、ブルームバーグLP、もしくはそのオー ナーの意見を反映したものではありません)

原題:Three Reasons Fed Can Wait on Rates: Noah Smith (Correct) (抜粋)

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