対立より対話、企業価値向上ファンド台頭-ガバナンス強化追い風

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投資家を通じて企業の競争力強化を図る安倍 政権の施策を追い風にして、長期的な企業価値向上を目指す投資ファン ドが台頭してきた。かつて株主への利益還元を強く迫った米英のアクテ ィビスト・ファンドは日本の企業風土では受け入れられず、経営者との 対話を重視したファンドに活動の場が広がっている。

経営陣との対話を重視するみさき投資は昨年10月に運用を開始。後 藤正樹パートナーによると海外の大学基金や企業年金、世界的なファン ド・オブ・ファンズ、政府系ファンドから問い合わせがあり、「日本が 変わると期待している海外投資家が多いのでは」と話す。運用額が増え るとみて、6月下旬には運用額が200億円までに限定されているプロ向 け運用業から、200億円以上でも運用が可能な投資運用業に移行した。

金融庁は昨年2月、運用を受託した機関投資家が投資先の企業価値 向上を目指すスチュワードシップコード(SC)を導入。株主関連サー ビスのアイ・アールジャパンホールディングスの調査では、今年の株主 総会で会社側議案に対し10%以上の反対票が集まった企業が初めて3分 の1を超えており、無風総会から様変わりしつつある。

みさき投資は、SCの追い風を背景に企業と対話しながら長期的な 企業収益向上と株主利益の両立を図るエンゲージメント型ファンドだ。 中神康議社長は、「株主は企業価値というパイの中で、株主の取り分を 増やせと主張するだけでは十分ではなく、パイ自体が大きくなるよう働 かなければ多くの利害関係者がハッピーにならない」と話す。

株主還元と企業の成長

みさき投資はインテリア商品販売のサンゲツに投資しているが、株 価が大幅に割安だとみて、同社と共同で株主還元の強化策に取り組ん だ。サンゲツは昨年11月、3年間は純利益の100%以上を自社株買いや 増配などで株主に還元すると発表。初の投資家向け決算説明会も行っ た。

株主還元策の発表以降、サンゲツの株価は17日までに71%上昇した ものの、みさき投資は売り抜けることはせず、今後は同社とともに成長 戦略の実施に本格的に取り組む。みさき投資の後藤氏は、「業務内容を 可視化しキャッシュフローの創出力を高めたい」と話す。社員の意欲向 上で生産性を高め、5年平均で3%台だった株主資本利益率(ROE) を20年3月期までに8~10%への引き上げを目指している。

みさき投資のような対話重視のエンゲージメント型が浮上してきた のは近年だ。かつて00年代には米スティール・パートナーズや英ザ・チ ルドレンズ・インベストメントなどアクティビストが対日投資を活発化 させた時期があった。しかし、株主権利から内部留保の吐き出しを強く 迫る手法が経営者の反発を招き、07年にはブルドックソースがスティー ルに買収防衛策を発動。その後の金融危機もあり、影を潜めていた。

経営者の変化

経営に関与するファンドが復活してきたのは、「日本企業の考え方 に抜本的な構造変化が起こっている側面もある」と、欧州系プライベー トエクイティ(PE)投資会社ペルミラの藤井良太郎日本代表は話す。 「15年前は会社は誰のものかという議論から始まったが、今は株主価値 を経営者が普通に語るようになった」という。政府も6月、企業統治の 在り方を定めたコーポレートガナンスコードで後押ししている。

シンフォニー・フィナンシャル・パートナーズも5月、対話型ファ ンドの運用を開始した。デビッド・バラン代表取締役は、ガバナンス強 化の動きで「経営陣は素早い行動を起こす傾向がある」と語り、投資か ら6週間で「経営陣がすべきことを実行した」として、売却した銘柄も あるという。

野村証券によると、配当と自社株買いを合計した株主還元は15年3 月期に前の期比76%増加して12兆8000億円。過去最高となる株主還元を 行った。

中小企業

割安感のある中小型株企業を発掘するクラッシーキャピタルマネジ メントは、海外投資家からの問い合わせがあり、資金の受け入れに向け て海外籍ファンドの設定などを準備中だ。同社は中小型株企業の保有有 価証券に着目し、余剰資金が有効に活用されていない場合は、有価証券 の売却、本業への投資、株主配当などを求める。

片野恒一最高投資責任者(CIO)は、「ガバナンス強化を意識し ている企業もあるが、株主にうまく応えてくれない企業は正直ある」と 述べた。「中小企業ではコーポレートガバナンスを重視しているように は感じられず、浸透するにはもう少し時間がかかる」とみている。

(更新前の記事は社名を訂正済みです)

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