インサイダー情報の「アマゾン」開設、巨額稼いだ新型犯罪

ウクライナのキエフから2010年に発信された 電子メール。添付された動画には「ログインデータをご指定のアドレス に電子メールで送ります」とロシア語での説明があった。こうして昔な がらのインサイダー取引にデジタル時代のサイバー犯罪が結び付いた。 米司法当局はまったく新しいタイプの不正取引とみている。

この不正に絡んで、5人のトレーダーが11日に逮捕された。米当局 が摘発した集団は、システムへの不正侵入で盗んだ発表前のプレスリリ ースを基にした株のインサイダー取引で、最大1億ドル(約124億円) の不正利益を得たとされている。当局はこれまでにない手の込んだ手口 だとしている。

実際にその手口は当局が言うように気が遠くなるほど複雑そうであ りながら、ひどく単純にもみえる。突き詰めれば、ハッカーが海外から 情報を盗み、それをオンラインビジネスにしてしまったということだ。 さながらインサイダー情報のアマゾン、といった感じだ。犯人たちはご 利用説明ビデオまで作って、顧客に不正の指南をしていた。

当局によればハッカーらはウクライナを拠点に、決算や買収合意な どの発表によく利用される米国のニュースワイヤー数社のシステムに侵 入し、5年余りの間に数万というプレスリリースを公表前に入手。こう した市場に影響を与える情報を、大西洋を挟む両大陸のトレーダーらに 売りさばいたという。

この事件は21世紀経済の根幹にあるシステムの技術的な脆弱性をあ らためて浮き彫りにする。ウォール街や金融犯罪を取り締まる当局は、 インサイダー取引が新たな時代を迎えたことを思い知らされた。

米証券取引委員会(SEC)のホワイト委員長は11日の会見で、 「ハッキングの規模や関わったトレーダーの人数、取引された証券の 数、その利益の規模で、前代未聞の国際犯罪スキームだ」と述べた。 SECは個人17人を相手取る民事訴訟を起こし、うち9人は司法当局か ら刑事訴追された。ハッカーや一部の被告はまだ逮捕されていない。

侵入されたのはPRニューズワイヤ・アソシエーションとマーケッ トワイヤード、ビジネスワイヤの3社のシステム。3社ともに捜査に協 力しているとしたほか、マーケットワイヤードは問題となったシステム を修正したと説明。残る2社もセキュリティーシステムを検証中だとい う。

起訴状によれば、トレーダーらは不正入手を希望するプレスリリー スの「ほしい物リスト」を作成。入手すると即座に株式を売買した。ハ ッカーは仲介屋を通してトレーダーと連絡を取り、「ビジネス」がうま くいくにつれ、規模を拡大しようとチャットや電子メールでの勧誘でト レーダーやハッカーを新たに加えていったという。

原題:Hackers’ $100 Million Insider Shop Sold Data on Demand (1) (抜粋)

--取材協力:Erik Larson、Chris Dolmetsch.