中国自身も知らない人民元切り下げの意義-社説

中国人民元の実質的切り下げは世界 の市場にとって想定外の出来事で、それが何を意味をするのか、アナリ ストの間に疑問が広がった。中国の指導者も恐らく同じことを自身に問 い掛けているだろう。

中国金融当局は人民元の対ドル中心レートを1.9%引き下げた。こ れは果たして同国の人民元管理体制の自由化なのか、低迷する経済の刺 激策なのか、それとも通貨戦争の始まりなのか。

答えはおおむね最初の2つを合わせたものと考えられるが、当局が 今問われているのは、市場重視の改革と輸出促進策とをどのように調和 させるかだ。

中国人民銀行(中央銀行)は営業日ごとに人民元の中心レートを設 定し、その上下2%が許容変動幅とされている。資本の海外流出や中国 の輸出鈍化という市場の圧力を背景に、このところの為替相場は変動幅 の範囲内で元安方向に押し下げられてきた。

人民銀は日々設定される中心レートを2%近く引き下げることで、 市場の元安選好に応えた形で、人民銀は実際、その措置をそのように説 明した。

人民銀はさらに、今後の中心レートの設定に当たっては前日の終値 を考慮に入れるとし、従来よりも市場志向型の新たな手法を示唆した。 これは国際通貨基金(IMF)など部外者が望んできたものだ。

通貨戦争にあらず

IMFは特別引き出し権(SDR)構成通貨に人民元を採用するこ とについて、中国当局と協議を進めている。中国は世界の経済体制にお ける同国の地位を確認するものとして人民元のSDR採用を求めてい る。

それはとても良いことではあるが、今回の切り下げは中国の輸出を 促し、海外からの輸入を割高にする景気刺激策の一形態でもあり、中国 指導部が市場の力のプラス面を認めるには好都合なタイミングと受け止 められる。

こうした市場の力が先行き反転して元高方向に働き、中国の輸出部 門が不利な立場に置かれるような事態となれば、同国当局はジレンマに 直面する。その時に一連の疑問への答えは明らかとなるだろう。現時点 では部外者は何が起こるか確信が持てず、中国指導部もたぶん分からな いはずだ。

中国の貿易相手国は当面、同国と同じように低成長に直面しなが ら、自分たちにとっては不都合な人民元切り下げに対処しなければなら ない。現状で見る限り、それは深刻な懸念材料ではない。切り下げは中 国の基準では大きいものの、変動相場制の国々の基準では到底、劇的と は言えないためだ。

中国による為替操作に特に神経質な米国の政策策定者は、このとこ ろの人民元相場は貿易加重ベースで上昇していたことも念頭に置くべき だ。ドルは円やユーロなどの通貨に対し上昇してきた。選挙戦を控えた 政治家にとって、新たな経済的対立の幕開けを嘆いて見せるのは魅力的 かもしれないが、現状は通貨戦争からは程遠い。

原題:Even Beijing Doesn’t Know What Yuan Devaluation Means: Editorial(抜粋)