【コラム】米大リーグ、あり得ないメッツ首位にファン動揺

「これがヤンキース・ファンの気持 ちなのか」。

ニューヨーク・メッツのファンやスポーツライターの仲間から何度 か聞かされたセリフだ。この素晴らしく奇妙で不慣れなムードが、メッ ツの本拠地シティフィールド周辺に漂う。メッツはナショナルリーグ東 地区の首位に立ち、ぎこちない自信にあふれている。

10日のゲームがまさにそうだった。2対1でコロラド・ロッキーズ を追う7回裏、2アウト満塁で打席に入ったグランダーソンへの投球は フルカウント。これまでのメッツなら典型的な残塁パターンだったが、 シティフィールドには逆転への確信がみなぎっていた。グランダーソン はデッドボールで押し出し同点。次の打者マーフィーは初球タイムリー 安打で2打点をはじき出し、試合の流れを決めメッツは4-2で勝っ た。

1年前だったら勝つ自信の持てないゲームだったと、試合後にコリ ンズ監督は話した。8月のメッツは違う。オールスター前を振り返る と、外野手コンフォルトはマイナーから上がって来れず、左腕のニース が好投しても味方がまったく点を取れない、選手枠の半分が負傷してい る、そんな状況だった。チームを変えたのは7月末の期限を前に駆け込 みで行われた思い切ったトレードだった。ニース投手には味方の援軍が 付くようになった。コリンズ監督は故障者リストから復帰する外野手カ ダイアーとコンフォルトのどちらを残すか、ぜいたくな悩みを抱えるよ うになった。故障していた不運のスター三塁手、デービッド・ライトに もようやく運が向いてきた。

もう一つのチーム

一方で、同じニューヨークのもう一つのチーム、ヤンキースは7月 を17勝7敗で終え、アメリカンリーグ東地区のランキングでは2位に余 裕の6ゲーム差をつけて首位安泰のはずだった。トレード期限を大きな ニュースもなく過したヤンキースは現在、大型補強を敢行したトロン ト・ブルージェイズに1.5ゲーム差まで追い上げられている。

ヤンキースとメッツ、立場が逆転したかのようだ。かつては落胆さ せられることを恐れて自ら期待値を低くするのが常だったメッツ・ファ ンは、今乗りに乗っている。愛するチームをグランドに送り出すたび に、きょうも勝つと信じる。そんな気持ちをメッツのファンは大いに味 わってよい。

メッツファンに私が贈る言葉は、「楽しんで」だ。これまでのよう にすぐ不安になったり悲観的になるのはやめて、心の赴くままプレーオ フまで突っ走れ。統計に基づく分析よりも、根拠の無い希望と楽観を信 じる。これこそまさにスポーツを愛するファンが味わえる最大の喜び だ。相手チームがどこだろうが、勝率がどうだろうが、とにかく勝つ運 命なのだと考えていいのだ。

(カビタ・デービッドソンはブルームバーグ・ビューのスポーツコ ラムニストで、前職はハフィントン・ポストのエディター。コラムの内 容は必ずしも同社編集部、ブルームバーグLP、もしくはそのオーナー の意見を反映したものではありません)

原題:Mets Fans Remember What Winning Feels Like: Kavitha Davidson(抜粋)