【FRBウオッチ】完全雇用=景気後退の扉、利上げでダメ押し

利上げシナリオを推進する米公開市場委員会 (FOMC)のメンバーは、政策目標である「最大限の雇用確保」実現 に向け自信を深めている。

アトランタ連銀のロックハート総裁は10日、7月の雇用統計につい て、「かなり満足できるしっかりしたもので、警戒すべき兆候が全くな い統計だった」と指摘。連銀法に定められた2大目標の一つである「最 大限の雇用確保」の達成に自信を示した。

本稿の狙いはFOMCの利上げ確率を探ることではない。「最大限 の雇用確保」の実現は景気循環の中でどの段階にあるかを分析する。結 論を先に示せば、「最大限の雇用確保」は景気の山が差し迫ってきたこ とを意味している。

最新の7月の雇用統計を中心に分析し、実相に迫ってみよう。同統 計の中で、最も注目すべき項目の一つは家計調査に含まれるフルタイム の雇用者数だ。それも前月比での増減ではなく、総数を追跡する必要が ある。

事業所調査の雇用者数が前月比で3カ月連続して20万人を上回るペ ースで拡大してきたことから、政策当局者は「最大限の雇用確保」に自 信を深めている。しかし前月比でもトレンドを読めば、昨年11月の42 万3000人増でピークを付けた可能性が高いことが分かる。

フルタイム雇用者数もピーク圏

7月のフルタイム雇用者数は前月比53万6000人増の1億2159万人だ った。今回の景気拡大局面では最高水準になったが、前回景気拡大局面 のピークである2007年11月の1億2188万人をなお29万人下回っている。

前月比が50万人以上も増加したのは、調査先サンプル数が少ない家 計調査の宿命で変動が大きいためだ。従ってトレンドを見ていく必要が ある。

過去4カ月間を平均すると、フルタイム雇用者数の月間の伸びは14 万1000人となる。その前の4カ月間の平均37万9000人増から大きく減速 してきたことが分かる。

さらにフルタイム雇用者数の長期トレンドをみると、前回の景気拡 大局面で07年11月にピークを付け、米経済はその翌月の12月に景気後退 に陥っている。その前の景気拡大局面では2001年3月に1億1462万人で ピークを付け、景気の山を形成していた。

フィッシャーFRB副議長は年内利上げが視野に入る中で、「雇用 に問題はない」と断言しており、「最大限の雇用確保」に自信を表明し ている。フルタイム雇用者数も今回の景気拡大局面でそろそろピークを 警戒すべき時期に来ているということになる。

「データ次第」の罠

フルタイム雇用は景気一致指数だ。FOMCメンバーのように「デ ータ次第」と言いながら、目先の数値ばかりに注目して過去の長期トレ ンドを振り返らないと、山頂にたどり着いたことに気付かず、谷に転げ 落ちることになる。

パウエルFRB理事は5日に経済専門局CNBCのインタビュー で、「幸いなことに今、答えを出す必要はない」とした上で、「今後は 極めて強くデータを意識して焦点を合わせていく」と話していた。9 月17日のFOMCまであと1、2カ月分のデータに集中して、初回利上 げの是非を決めると言い切った。

しかし現在という時間は過去の積み重ねの上にあり、将来へとつな がっていく。目先の「データ次第」の政策は、経済の長期トレンドを見 失い、景気循環の荒波に飲み込まれるリスクを内包している。

(【FRBウオッチ】は記者個人の見解です)

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