約2年ぶり原発再稼働に期待、採算割れの危機で-国内非鉄など

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九州電力川内原子力発電所1号機の再稼働に 対し、産業界から歓迎の声が上がっている。原発再稼働の遅れが電気料 金の値上げにつながっており、市況の下落で販売の利ざや圧迫に苦しむ 非鉄金属の製錬会社にとって、電力コストが利益を左右する要因となっ ているためだ。

三井金属鉱業の広報担当の尾形純和氏は、電気料金の値上げが「コ ストアップにつながっているのは事実」と話す。「国際競争力を著しく 低下させるという意味でマイナス要因となっている」と指摘し、料金の さらなる値上げを回避するためには「原発の再稼働は望ましいこと」と 話した。

非鉄金属の国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の銅やア ルミ、ニッケル価格は、リーマンショック後の世界的な景気低迷時以来 6年ぶりの安値水準。ブルームバーグ・インテリジェンスの金属担当ア ナリスト、イ・ジュウ氏は「特に最近は金属価格の下落によって製錬会 社のマージンは圧迫されており、より安価な電気料金は間違いなく製造 のコストを圧縮できる」と指摘した。

宮崎県の日向製錬所でニッケルの製錬を行う住友金属鉱山は、原発 の再稼働に関してはコメントは控えたものの、安価で安定的な電力供給 は経営を左右する重要な要素だと話した。広報担当の宮内宏和氏は、 「ニッケルは基本的に市況商品なので国際価格に連動し、原価の上昇を 直接値段に反映することができにくい」と述べた。

存続の危機

大量の電力を消費する11の業界団体は2015年4月、共同で原発の早 期再稼働を求める要望書を政府に提出。その中で、非鉄金属業界は「銅 製錬所をはじめ多くの非鉄製錬所が採算割れの危機にさらされ、特に電 力原単位が高い亜鉛、フェロニッケル製錬業は国内で存続できなくな る」と述べた。

具体的には、非鉄金属業界は値上げを実施している7電力会社から 全国の製錬所で年間約42億キロワット時の電力を購入しており、震災後 から14年5月までの値上げで87億円の負担増となった。

さらに14年度には、燃料費の変動による電気料金の上昇で83億円の 負担増になっているという。経済産業省のエネルギー白書によると、東 日本大震災以降、産業向け電気料金の平均単価は40%上昇した。

製錬会社以外にも原発再稼働がもたらす安定的な電力供給に対する 期待感は高い。九州はシリコンアイランドとも呼ばれる半導体産業の集 積地となっているためだ。

九州に3工場を保有するルネサスエレクトロニクスの広報課は電子 メールで、半導体の生産にはクリーンルームを維持するための安定した 大規模な電力が必要なことから、原発再稼働によって「大規模電力を安 定して確保できる体制が整えられることについては歓迎」するとコメン トした。

需給に余力

供給安定性の面でも、川内原発1号機が再稼働する影響は大きい。 九州電の供給力から需要予想を差し引いた予備率は、電力の安定供給に 最低限必要とされる3%を他社からの融通でぎりぎりクリアする状況 だ。再稼働すれば、綱渡りの夏の電力供給にも若干の余力が生まれるこ とになる。

経済同友会の小林喜光代表幹事は、同1号機の再開を受けて「わが 国のエネルギー需給構造の再構築に向けた一歩として評価する」とのコ メントを文書で発表。全原発の停止でエネルギーコストの上昇、エネル ギー自給率の低下、温室効果ガスの排出増など「国民生活や経済活動に 深刻な影響が生じている」とし、「審査の効率性向上や体制強化を図る べき」との見解を示した。

宮沢洋一経済産業相は再稼働後に都内で会見し、原発の再稼働プロ セスの進展は「エネルギー安全保障、経済性、地球温暖化対策の観点か ら重要」だと話した。

原発の不足を石炭火力で補うと二酸化炭素の排出が増えてしまうと し、「原発もダメ、石炭火力も規制するとなると、相当大幅に電力料金 が引き上げられることは明らか」と指摘。再稼働しない、電気料金は抑 える、温暖化対策をとるの「3つを満たすのは不可能ということを、し っかり国民に説明していかないといけない」との見解を示した。

--取材協力:Chisaki Watanabe.