【コラム】イエレン議長のお陰、米経済は安堵のため息

ジャネット・イエレン氏が米連邦準 備制度理事会(FRB)議長に就任して、もうすぐ1年と8カ月にな る。FRB議長としての成績をつけるのに十分な時間が経過した。結論 から先に言えば、極めて優秀な成績だ。

多くの議員からは、FRBは持続的な成長を促進できているのかと いう疑問の声が挙がっている。しかし投資家がイエレン議長に寄せる信 頼感は世界的にみて、ベン・バーナンキ、アラン・グリーンスパン両氏 が率いたFRBへのものより高い。

FRBに対する信頼感の度合いは、市場での資産価格の安定性に目 を向けると分かりやすい。安定性こそFRBの主要な責務だからだ。安 定性は企業の景況感と歩調を合わせ、お互いを補完する。変動性の高い 市場は投資家や企業経営者を臆病にし、投資を先送りさせる。FRBが 信頼感を醸成するような環境においては、市場の変動性は低下する傾向 にある。

イエレンFRB議長の下で、まさにこの状態が達成されており、米 経済の健全性が気になる議員らを安心させることになるだろう。規模13 兆ドル(約1620兆円)の米国債市場ではイエレン議長の就任以来、平均 ボラティリティーが35%低下した。グリーンスパン氏の時代に比べれ ば69%下がっている。いずれもブルームバーグがまとめたデータに基づ く。

理由を考えてみよう。もちろん、経済的環境が重要な部分であるこ とは間違いない。バーナンキ氏は1930年代以降で最悪の金融危機に対応 しなくてはならなかった。グリーンスパン氏の19年間には何度も経済的 波乱が起きた。一方のイエレン氏に吹きつける経済の風はまだ、追い風 だ。

テーパー・タントラム

とは言え、タイミングの良さだけでは語れないものがある。前任者 2人に比べて、イエレン氏は次に何が起きるかを投資家に伝達する術に 長けている。2013年春、当時のバーナンキ議長が資産購入プログラムを 縮小し始める可能性に言及し、10年債利回りが1ポイント上昇した。「 テーパー・タントラム」と呼ばれた市場の混乱を、投資家は決して忘れ ないだろう。

グリーンスパン議長が金融政策の魔術師と賛美された90年代の良き 時代でさえ、米国債市場のボラティリティーは比較的高かった。94年に FRBは突然の金融引き締めを実施し、10年債利回りは2ポイント以上 急伸した。グリーンスパン氏は後に、当時恐れていたインフレ加速が実 現しなかったため、あの政策は経済に動揺を与える不要なものだったと 認めている。

バーナンキ氏が始めたFRBの考えを公に説明するというイニシア チブを、イエレン氏は引き継いだ。このお陰で株式市場はそこそこ安定 した状態が続いている。ブルームバーグがまとめたデータによると、イ エレン氏が議長に就任してから、S&P500種株価指数の想定ボラティ リティは14.3%に低下。バーナンキ氏の時代は平均21.53%、グリーン スパン氏の時代は19.61%だった。

市場のストレス低下

市場の健全性の目安であるブルームバーグ米金融コンディション指 数には、マネーと債券、株式市場におけるストレスレベルがこの25年間 での最低に落ちていることが示されている。前任者2人の時代よりも健 全だというだけでなく、欧州と比較した優位性においてもグリーンスパ ン、バーナンキ両氏の時代を上回っている。

経済への自信は米国の消費者にも表れている。S&P500種採用の 選択的消費財企業の1株当たり売上高は、ブルームバーグが集計を始め た1990年以来の最高に達した。留意すべきなのは、こうした活発な消費 にインフレが芽生えつつある兆候が伴っていない点だ。つまり連邦公開 市場委員会(FOMC)は今年、利上げを決定するとき、大きく引き上 げる必要はないということになる。

ありがとう、ジャネット・イエレン議長。

(マシュー・ウィンクラーはブルームバーグ・ニュースの名誉編集 主幹。このコラムは必ずしも同社編集部、ブルームバーグLP、もしく はそのオーナーの意見を反映したものではありません)

原題:Yellen Brings a Sigh of Economic Relief: Matthew A. Winkler(抜粋)

--取材協力:Shin Pei.

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