黒田氏:原油、予想インフレ率、需給ギャップは「昨年と違う

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日本銀行の黒田東彦総裁は7日の記者会見 で、追加緩和に踏み切った昨年10月と現在を比べ、原油価格の下落幅、 企業や家計の予想物価上昇率、さらに経済の需給ギャップのいずれも、 現在は違うと述べ、現時点で追加緩和が必要な状況ではないとの見方を 示した。

追加緩和に踏み切った昨年10月末について、黒田総裁は「原油価格 が急速な勢いで下落し、結果的には50%以上の下落になった。そういっ た大幅な原油価格の下落が予想物価上昇率に大きく影響すると、物価の 基調に大きく影響することが懸念されたので、量的・質的緩和の拡大を 決定した」と述べた。

その上で、足元の状況について「確かに物価上昇率はコアでも総合 でもどんどん下がっていて、コアは足元でゼロ%程度になっているが、 予想物価上昇率は比較的維持されている。それが昨年10月末との違いの 第1点だ」と指摘。

違いの2点目として「原油価格はここ数週間、若干下がっている が、それでも昨年夏から今年始めにかけてのような一方方向の急速で大 幅な下落は起こっていない。また、市場の先物価格等を見ても、これか らどんどん下がっていく見通しにはなっていない。従って、原油価格の 動向も昨年とは違っている」と語った。

さらに、「4-6月の成長率は1-3月に比べると落ちる可能性が あるのでよく見る必要があるが、いずれにせよ需給ギャップがほとんど なくなった状況にあることに変わりはない。昨年の10月の状況と比べる と、石油価格の状況も違うし、物価上昇の期待の動向も違っているし、 需給ギャップの状況も違う」と述べた。

原油次第で2%達成時期は「若干前後」

生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比の見通しにつ いては「年度後半から次第に加速」していくと指摘。「今のところ、原 油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくという先物価格の状 況を前提にして考えると、2%程度に到達するのは2016年度前半ごろに なるとみている」と語った。

一方で、「今後の原油価格の動向、特に先物価格が変わってくる と、達成時期が若干前後することはあり得る」と述べた。ただ、金融政 策運営上重要なのは「物価の基調的な動き」だと指摘。原油価格の動き が「予想物価上昇率などに影響し、物価の基調的な動きに影響すること になれば政策の調整ということになるが、今のところそういうことにな っていない」と述べた。

エネルギー除くコアは「1つの参考指標」

日銀は7月の金融経済月報で、エネルギーを除くコアCPIを独自 に公表。5月は前年比0.7%上昇と総合(0.5%上昇)、コア(0.1%上 昇)、食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合(0.4%上昇)のい ずれより高い伸びを示した。

黒田総裁は「物価安定目標自体は消費者物価指数の総合で考えてい る。その総合の動きを判断する際に、生鮮食品は大きく振れるので、い わゆるコア指数を重要な指標としてみていて、展望リポートでも見通し は生鮮を除く指標でみている」と指摘。

その上で、「生鮮食品とエネルギーを除いた指標も1つの参考指標 になるし、その他もろもろの指標も従来から示している。物価情勢判断 にはさまざまな指標を点検することが重要だ。何も、生鮮とエネルギー を除いた指標が物価の動向を判断する主要な指数になったわけではな い」と述べた。

景気については「輸出、生産のこのところの鈍い動きは一時的とみ られる」としながらも、先行きについては「輸出は海外経済の回復、あ るいは既往の円安の下支え効果などを背景として、ある程度振れは伴い つつ緩やかに増加していくと考えている。生産もこうした輸出の増加、 あるいは在庫調整の進ちょくに伴い、振れを伴いつつ緩やかに回復して いく」と語った。

中国経済については「成長モメンタムが低下してきていることは事 実だと思うが、中国政府がさまざまな景気対策を打ってきており、政策 的余地も十分あることを踏まえると、7%前後の成長が今年、来年と続 くことは一応見通せるのではないか」と指摘。株価の下落の影響などい くつかのリスク要因はあるものの、「安定的な成長を続けるとみるのが 妥当ではないか」との見方を示した。