持ち合い解消、自社株買いで需給悪回避-クレディSのダン氏

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コーポレートガバナンス(企業統治)の改革 機運が広がる中、10年以上ぶりに株式市場の話題に浮上した持ち合い解 消。メガバンクは相次ぎ解消促進の意向を示し、今後は売り圧力の増大 が懸念されるところだ。クレディ・スイス証券は、企業の自社株買いの 増加で需給悪化の回避は可能と予測、日本株の上昇持続を見込む。

クレディ・スイス証券の株式営業本部長、バジリアス・ダン氏は7 月22日のブルームバーグのインタビューで、「持ち株を売りたい企業は たくさんあったが、それを相手先企業に伝えることができなかった。新 しい規定の下、企業は最適な言い訳を手にした」と指摘。持ち合い解消 が進む一方、企業は自社株買いも活発化させるとみて、「株主資本利益 率(ROE)が向上し、配当も増える。良いことしかない」と持ち合い 解消の動きを歓迎した。

政府の日本再興戦略に基づき、東京証券取引所が上場規程の別添と して6月に導入した「コーポレートガバナンス・コード」では、企業が 政策保有株として上場株式を保有する場合、方針を開示すべきと明記し た。取締役会で政策保有のリターンとリスク、経済合理性や将来の見通 しを毎年検証し、これを踏まえた保有の狙い、合理性に関する具体的説 明を行うべきとしている。

みずほフィナンシャルグループは6月に公表したコーポレートガバ ナンスに関する報告書で、政策保有のための上場株式は「保有しないこ とを基本方針とする」と表明した。三井住友フィナンシャルグループ も、同様に「原則として保有しない」と記述。三菱UFJフィナンシャ ル・グループは7月末、「残高削減を基本方針」とし、成長性や収益性 などの観点で保有の妥当性が認められない場合、取引先企業の理解を得 た上で売却を進めるとの考えを示した。

潜在売却規模は34兆円

三菱UFJでは、自社のROE目標に基づき検証を行った結果、全 体の約2割が目標値を下回っており、採算が改善しなければ売却を検討 するとしている。検証対象となった同社の政策保有株の時価合計は3月 末時点でおよそ3.8兆円だった。

一方、金融庁は7日、スチュワードシップ・コードやコーポレート ガバナンス・コードの普及・定着状況のフォローアップと、さらなる充 実に向け、フォローアップ会議を設置すると発表した。必要な施策を議 論、提言するとしている。

不良債権問題が深刻化した1990年代後半から2000年代前半にかけ金 融機関と事業会社による持ち合い解消の動きが強まり、国際的な銀行に 対する自己資本規制の強化もこれに追い打ちをかけた。全国4証券取引 所が毎年度公表する株式分布状況調査によれば、金融機関と事業法人の 株式保有比率は88年度に約7割を占めていたが、14年度は約4割にまで 低下。特に都銀・地銀は88年度の15.7%が03年度に5.9%まで減少、14 年度は3.7%となっている。

SMBC日興証券の15年3月期時点の試算では、なお潜在的な政策 保有株の売却規模は東証1・2部の総額で34.1兆円。時価総額ベースで は全上場銘柄の15%程度を占める。業種別で最も政策保有が多いのは銀 行の12兆円で、保険、輸送用機器、卸売などが続く。

クレディS証のダン氏は、コーポレートガバナンス改革の元年とな った15年は「多くの企業が持ち合い株保有について説明することを選ぶ かもしれないが、来年同じようにはできない」と話し、合理的説明の難 しさから持ち合い解消は進むとみる。

アクティビスト恐れ自社株買いも

一方で、日本企業は「自社の株式がどこにいくか、とても関心があ る」と同氏。市場に放出され、経営方針の転換や株主還元の強化を厳し く求めるアクティビストの手に渡ることを経営陣は懸念しており、自社 株買いを増やすと予想している。

野村証券によると、4-6月の自社株取得枠の設定は全上場企業ベ ースで前年同期比41%増の2.12兆円。1000億円以上の大型枠を設定した トヨタ自動車や東京エレクトロン、三菱商事をはじめ、社数も211社 と50社増えた。同証では、自社株買いの積極的・戦略的な実施を検討す る企業は増えるとし、15年度の自社株買い実施額は前年度の3.4兆円か ら3.8兆円への増加を見込む。実際8月に入り、医療製品・機器メーカ ーのテルモが持ち合い解消と資本効率の向上を図るため、110億円を上 限とした自社株買いの実施を発表した。

クレディS証では円安効果による収益モメンタムの強さなどから、 日本株の評価を「オーバーウエート」としている。コーポレートガバナ ンス改革は、「今はまだ初期段階。時間はかかるが、少なくとも正しい 方向に向かっている」とダン氏は話した。

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