みずほFGの「2日間の即決」が呼んだ米国社債市場での躍進

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米医薬品メーカーのアクタビスが昨年11月に 米アラガンを約660億ドル(約7兆6900億円)で買収することで合意し た巨額案件。コードネーム「フルーツバスケット」として秘密裏に進ん だ交渉の過程で融資団への参加を打診されたみずほフィナンシャルグル ープに与えられた決断の時間は、週末の2日間だけだった。

みずほFGの佐藤康博社長は、月曜の朝までに案件に参加するとの 返答を用意したと、5月の投資家との電話会議で明らかにした。この決 断は462億ドルの協調融資にJPモルガン、ウェルズ・ファーゴと並び 邦銀として唯一、名を連ねただけでなく、4カ月後に一部借り換えのた めに210億ドルの社債発行の引き受け主幹事獲得にも結び付いた。

ブルームバーグのデータによると、みずほは2015年の米投資適格社 債(自社発行を除く)引き受けで現在11位。11年の21位から10ランク浮 上した。みずほを含む邦銀3メガは、国内融資が伸び悩む中、相対的に 利ざやが厚い海外事業に活路を求めている。15年6月末の海外融資残高 は3グループとも過去最高を更新した。

ジェフリーズ・グループのマカリム・サルマン氏(東京在勤)は、 「グローバル企業の最高財務責任者(CFO)が資金調達を考えるなら 邦銀は喜んでパートナーになってくれるだろう」と話す。「彼らはしば しば競争相手より低いスプレッドを用意するだろう。邦銀はとても競争 力があると思う」と、メガバンクの国際競争力の高まりを指摘した。

ブルームバーグ・インテリジェンスのフランシス・チャンシニアア ナリストは、日本の主要9行が15年3月期に海外支店などを通じて合 計60兆円超を融資したと試算。5年前の2倍に相当する金額だ。国際決 済銀行によると、3月末時点の邦銀の海外与信残高は英国を抜き、少な くとも1999年以降で初の世界一となった。

RBS

みずほが11位となったブルームバーグの米社債引き受けランキング によると、ほかの邦銀3メガでは三菱UFJフィナンシャル・グループ が11年と同じ15位、三井住友フィナンシャルグループは31位から23位に ランクを上げているが、中でもみずほの躍進が目立っている。

7月に米たばこブランド買収資金の借り換えで45億ドルを起債した 英インペリアル・タバコ・グループはみずほをブックランナーの1社に 起用。広報担当のサイモン・エバンス氏は「買収時のつなぎ融資でもみ ずほは上位の貸し手として参加してくれた。起債での起用は過去のトラ ックレコードや米国事業拡大戦略などが決め手になった」と述べた。

みずほFGは今年、英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットラン ド・グループ(RBS)から北米の優良企業などへの貸し出し債権や融 資枠約421億ドルを取得すると発表。RBSから債券市場担当30人程度 を含む約100人を引き継いだ。

みずほ証券の福士裕資本市場グループ長は、米投資適格社債引き受 けで「トップ10入りも夢ではなくなっている」とし、RBSの資産買収 で「新たな取引先が増え、既存顧客に対しても付加価値を高められてい る」と話す。RBSから採用したバンカーの最初の一言は、「われわれ はみずほを軽く見ていた」との台詞だったという。

ビジネス開拓リスク

福士氏によると、RBSの人材が合流した4月以降の米国での債券 引き受け案件は、前年同期比で2倍以上に増えた。福士氏は米国の良好 な起債環境もあったが、「優秀な人材が加わった効果が大きかった」と 語る。今年の米国での社債発行額は現時点で昨年同期比23%増の8813億 ドルと市場が拡大している。

一方、日本国内の社債市場はさえない。バンク・オブ・アメリカ・ メリルリンチのデータによると、米国社債の対国債平均スプレッド(上 乗せ金利)は158bp(1bp=0.01%)なのに対し、日本は平均24b p。国内市場での15年上半期の社債発行額は、低利の銀行融資に押され てここ9年間で最低水準にとどまっている。

債券調査会社クレジットサイツのデービッド・マーシャル氏(シン ガポール在勤)は、海外市場での事業拡大は邦銀に稼ぐ機会をもたらす が借り手への知見が低く、クレジット市場が手のひらを返した時には危 険にさらされると警告する。みずほは08年3月期にサブプライム(信用 力の低い個人向け)住宅ローン関連で約6450億円もの損失を計上した。

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