空飛ぶスケボー、水面を進みレクサス飛び越える-18カ月の挑戦

コンクリートの起伏がある公園で、地面から 数センチのところに浮いているスケートボード。男性が足を乗せると、 左右に揺れながらゆっくり空中を進み始める。

トヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」が日本時間5日早朝、ウ ェブサイト上に公開した映像だ。6月から展開する新たなプロモーショ ンの一環で、約2分間のビデオでは幾度かの挑戦の後、男性がスケート ボードを乗りこなして水面を進み、レクサスの車体を飛び越える。

1989年公開の米映画「バック・トゥー・ザ・フュチャー2」で主人 公がタイムスリップしてスケートボードで空を飛んだのが2015年の設 定。6月の第一弾映像公開時には、「映画が現実のものになった」と世 界各国でツィートが相次いだ。

映画が公開された89年は、レクサスが米国展開を始めた年でもあ る。高級車ブランドとして長い歴史を持つ独BMWやメルセデスベンツ に対抗できるブランド構築を進めるレクサスにとって、注目を集めるこ とも戦略上の課題となっていた。

レクサスのグローバルブランディングのデビッド・ノードストロー ム室長は「映像を公開すれば、市販するのか、値段はいくらだ、どうや ったら入手できるかという問い合わせが相次ぐだろう」と7月29日のイ ンタビューに語り、同時に「レクサスは何かが違うと感じてくれると願 っている」と述べた。

空飛ぶスケボーに使われている技術は、すでにリニアモーターカー などで実用化が進む磁石によるものだ。しかし線路の上をまっすぐ走る リニアとは違い、斜面に沿って曲がったり、ジャンプしたりするのは技 術的に難しく、企画は何度も暗礁に乗り上げた。

乗りこなせる人がいない

技術協力した独の超電導装置メーカーのエヴィコは、平らな場所を 運行する技術を蓄積していたが、レクサスの提案に応え続けた。レクサ スのブランドマネジャーであるヨランド・ウォルドック氏は「最初は楕 円形の平らなコースがあるだけだったのに、1週間のうちに段差や斜面 がつくられ不可能への挑戦が始まった」と振り返る。

もう一つの課題は、空飛ぶスケートボードを乗りこなせる人がいな いことだった。サーファーやスノーボーダー、器械体操の選手などバラ ンス感覚のあるアスリートを集めて試してもらったが、宙に浮いている ため摩擦の起きないスケートボードは想像以上に乗りこなすのが難し く、次々に「自分には無理だ」とあきらめてしまったという。

唯一、粘り強い挑戦をしたのはプロ・スケートボーダーのロス・マ クゴラン氏だった。ウォルドック氏は「彼とは毎日のようにお互いを刺 激し合いながら、斜面を高くして挑戦のハードルを上げていった」と当 時の様子を語った。

壁に突き当たりながらの挑戦は18カ月続いた。バルセロナにレクサ スが建設した特設コースでの撮影では、マクゴラン氏が失敗を重ねなが ら腕を上げていく様子も収録された。

市販予定はない

さまざまな技術や知恵を結集してつくった映像への反響はウォルド ック氏も受け止めているが、それでも「数年後にこのスケボーを街で見 かけるようになるかというと、それはない」と断言する。幾ら出せば買 えるかという質問には「価格も計算しようがない」と答えた。

ノードストローム室長は、スケートボードを売ることはできない が、数年前には空想の産物であったスケートボードを現実のものにした ことで、多くの人の想像力をかきたて、夢を膨らませることはできたと 思うと述べた。同時にレクサスが技術革新に挑み、不可能を可能にでき るブランドと伝われればと期待を示した。

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