野村証カフェ、賃上げ上回るコーヒー19%高-日本経済の縮図

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日経平均株価が15年ぶりに2万円を回復した アベノミクス相場の一歩は、「デフレからの脱却を最優先」とした3年 前の政権公約に始まる。経済好転を評価した株式投資家からの買い注文 が増え、脱デフレを歓迎してきた証券マン。しかし、最近は生活必需品 や1杯のコーヒーまで値上がりし、一消費者としては心中複雑だ。

野村証券のオフィス内にあるカフェでは現在、コーヒーの単価 は190円と3月に比べ19%上昇し、カフェラテの値段も240円と14%上が った。有価証券報告書によれば、野村証の2014年度の平均給与(賞与・ 基準外賃金含む)は前年度比6.7%増の1193万円。厚生労働省の「毎月 勤労統計」を見ると、事業規模5人以上の調査産業全体で0.5%増の379 万円となっており、同証の給与水準は3.1倍に達する。

野村証のコーヒー以外にも、ことしに入り身近な商品の値上げが相 次ぎ、1月に日清食品ホールディングスなどが即席麺を3-8%、2月 は味の素が家庭用冷凍食品を3-10%、4月は明治ホールディングスが バターとチーズの価格を2.6-8.2%引き上げた。ブルドックソースは8 月1日出荷分から家庭用商品30品目を6-9%(6-35円)上げてお り、消費者の出費は増えている。

半世紀にわたり証券界を生きる岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チー フストラテジストは、「過去に消費増税したときは所得や景気先行きへ の期待が出たものだが、今回は時間がかかっている。所得が思ったほど 上がっていない」と分析。昨春の消費増税と輸入価格の上昇で「コンビ ニに行っても、150円で売っていた菓子が今は量が少なくなり200円。い ろいろな物が高くなっている」と実感しており、4-5%の昇給では景 気の先行き期待が高まるには不十分とみる。

インターネット調査会社のマイボイスコムが10代以上の男女1 万2000人を対象にしたコンビニ弁当の利用調査によると、6月時点で利 用率は51.3%、購入価格帯のボリュームゾーンは「400-449円」「450 -499円」でそれぞれ3割弱だ。2年前の前回調査からは「500-549 円」の高価格帯が9.6%から13.9%に増え、出費の増加を裏付けた。

生活意識「苦しい」が過去最高

厚労省の「2014年国民生活基礎調査」では、調査世帯の生活意識で 「苦しい」が62%と過去最高を記録した。「普通」は34%、「ゆとりが ある」は3.6%。同省によれば、インフレを考慮した実質的な賃金 は1990年以来の水準にとどまっている。

匿名を条件にブルームバーグの取材に応じた野村証社員によると、 周囲の社内メンバーは何年間も給与が上がらない中、コーヒーの値上が りに対しぼやき始めている。野村ホールディングスのグループ広報部、 山下兼史氏は給与の変動状況についてコメントを控えた。

岡三オンライン証の伊藤氏は、給与が増えてもベースアップは今回 で終わるかもしれないとの不安は会社員全体にあり、「所得が多くて も、働き盛りの40歳近辺は子育てや住宅ローンなどで絶対値としての出 費が多い」と言う。昭和40年当時の証券界では、「給料が1-2万円で も夫の給料だけで食べていけた。消費税はなかったが、実家があったり で大きな出費でローンを組むこともほとんどなかった」と振り返る。

日銀は、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が16年度前 半ごろに2%に達するとの想定を維持している。6月の全国コアCPI は前年同月比0.1%上昇、これに対し食料は2.5%上昇。食料の上昇率は 過去1年間にわたり、コアCPIを常時上回る。日銀が7月にまとめた 「生活意識に関するアンケート調査」によると、1年後の物価は現在と 比べ何%程度変化するかとの問いに、平均で4.8%と回答した。

厚労省が4日午前に公表した6月の毎月勤労統計調査によると、1 人平均賃金の現金給与総額(規模5人以上)は前年同月比2.4%減の42 万5727円。夏季賞与など、特別に支払われた給与が6.5%減少したこと が響いた。ただ、ことしは一部事業所で5月に前倒し支給が生じた可能 性があり、夏季賞与は7、8月に支払われることも多いため、6-8月 の状況を総合的に判断する必要があるとしている。