バフェット氏は避妊革命の知られざる立役者-決して口外せず

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米コロラド州グランドジ ャンクションにある同州メサ郡衛生当局のクリニックで働く助産師のキ ャサリン・オライリー氏は、同クリニックが常備している避妊具を喜ん でみせてくれた。重い木のドアの鍵を開けて金属製キャビネットまで歩 くと、その一番下の棚を探した。

「ここよ!」と声を上げて指し示したのはチョコレートの箱のよう なサイズの長くて薄いパッケージ。その中にはT字型の子宮内避妊器具 (IUD)とその装着器具が入っている。IUDは最長10年の避妊を可 能にする。「患者に会う時は、その日から避妊を始められることを目指 す」(オライリー氏)ので、IUDを常にストックしておくことが重要 だ。

IUDの価格は高い。一つ800ドル(約10万円)もするので、メサ 郡のこのクリニックのように医療保険のカバーがほとんどない女性の面 倒をみる公共の医療施設では、厳重管理が必要な物質のように扱われ る。15万人ほどの郡住民を対象にサービスを提供する同クリニックの年 間支出は77万4000ドル。コストの高いIUDをストックできる背景に は、無計画な妊娠を減らそうとする州のイニシアチブもあるが、6年前 からのこの取り組みの原資の2400万ドルは匿名での寄付だ。

匿名の寄付

この資金援助は7月に終了したが、オライリー氏によれば、幸運に も今ではコストが安いIUDができた。4月に発売されたリレッタとい う名称のIUDがそれで、この夏に初めて同クリニックに届けられた。 リレッタの製造販売元は米アラガンだが、開発したのは非営利団体のメ ディシンズ360。開発の元手となった7400万ドルの資金も、匿名での寄 付だった。オライリー氏は「当クリニックではリレッタを50ドルで購入 できます。いったんプロセスが回り始めれば、当郡の女性の大半がこの 避妊方法を選ぶようになるでしょう」と話す。

10年前には、米国でIUDを使う人はほとんどいなかった。過去に 起きた健康被害やそれに伴う悪評判が原因だ。しかし、その後の改良と 安全性向上を女性が認識し、2013年には避妊する女性の10%以上が IUDを選ぶようになったと、米疾病対策予防センター(CDC)のデ ータが示している。25-34歳の女性が選ぶ比率はコンドームと同じぐら い。しかも避妊の確実性ははるかに高い。

セントルイスで1万人近い女性を対象に数年かけて実施された調査 では、無料で避妊の手段を与えられるとした場合、女性の75%がIUD とホルモン注入を選んだ。IUD利用の促進を医師に勧める働き掛けの 一環としてCDCを含むさまざまな医療グループが引用する同研究に も、あるところから2000万ドル近い寄付があった。

リプロダクティブヘルス

女性のほぼ全員が、従って男性も、人生のある時点で何らかの避妊 手段を用いるが、政治的、そして法的にあまりにデリケートな問題であ るため、議員や製薬会社は避妊方法の研究や普及に口も金を出したがら ない。従って、コロラド州での取り組みとセントルイスでの研究、そし てリレッタ開発の資金の出所が全て同じなのは偶然ではない。名前を伏 せている寄付金提供者について公に話す人はほとんどいないが、税当局 への届け出や医学誌の記載、そしてある団体の関係者への過去のインタ ビューが、この提供者は投資・保険会社バークシャー・ハサウェイを率 いる資産家ウォーレン・バフェット氏とその一族であることを示してい る。

バフェット氏の最初の妻の名前を冠したスーザン・トンプソン・バ フェット財団は、税申告書で確認可能な最新年の13年に5億ドル近い資 金の大半を、リプロダクティブヘルス(性や生殖に関する健康)に関わ る複数の組織に寄付した。20人前後のスタッフが運営する同財団は、ウ ェブサイトでも多くの情報を提供せず、意図的にメディアを避けてい る。同財団とバフェット氏はこの記事のための取材に応じなかった。

それでもリプロダクティブヘルスに絡んだプロジェクトのための08 年1月のインタビューで、バフェット財団の国内プログラム向け元ディ レクターのジュディス・デサルノ氏は「バフェット財団だけで、リプロ ダクティブヘルス向けに他の全ての財団を合わせた以上の資金を提供す るだろう。今年は既にそうだし、今後もそうだろう」と語っていた。同 氏はこの記事向けには「この取り組みと意図しない妊娠の著しい減少に ついて本当に誇らしく思う」と述べるにとどめた。

女性の権利

バフェット財団はこの10年で、IUDの研究および普及に向けた最 大かつ最も影響力のある支援者となった。コロラド州立デンバー・ヘル スで家族計画を担当する看護師のブランディー・ミッチェル氏は「家族 の夢をかなえ計画的な妊娠というニーズを満たすのを手助けする常識的 かつ前向きな取り組みだ」とし、「その実践のために1個人・団体の寄 付に頼らなければならないのは信じられないことだ」と付け加えた。

静かに、かつ着実に、バフェット一族は避妊についての数十年に一 度の画期的変化を資金面で支えている。デサルノ氏は08年のインタビュ ーで、バフェット氏がそうする理由は「経済的なものです。生殖をコン トロールするのは基本的に女性の権利であり、それを女性ができないと いうことは、米国内の知的資源の半分以上を無駄するようなものだと彼 は考えているのです」と説明。「まあ、米国だけじゃなく、世界全体で そうですね」と語っていた。

原題:Warren Buffett’s Family Secretly Funded a Birth Control Revolution(抜粋)

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