現実味薄いPB黒字化、成長シナリオ織り込み骨太方針を決定

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安倍晋三政権は、基礎的財政収支(PB) を2020年度に黒字化するための財政健全化計画を盛り込んだ「経済財政 運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を30日夕に閣議決定した。

安倍政権は、実質2%以上、名目3%以上の経済成長率、2%の物 価上昇率を目指している。計画は1991年以来の高成長と、消費者物価は 足元のほぼゼロ%からの上昇が前提。加えて足元の好調な税収を前提に 「税収の一層の伸び」に期待をかける。

SMBC日興証券の末沢豪謙財政アナリストは「政府のPB黒字化 目標はハードルが高い。成長率や税収など全て楽観シナリオにすると、 一つ見通しが狂うだけで計画が台無しになる」と指摘する。

税収増の追い風が吹いているのは事実だ。アベノミクスの円安・株 高効果による企業収益の改善や消費税税率8%への引き上げで、12年度 に42.3兆円(当初予算ベース)だった税収は15年度に54.5兆円に増 加。15年度のPB赤字のGDP比は3.3%と10年度の6.6%から半減する 見込みだ。15年度の税収は予算額より上振れる可能性が高い。

原動力となっているのが、デフレ脱却に向けて黒田東彦総裁が13年 4月に導入した日銀の量的・質的緩和だ。円は対ドルで24%の円安とな り、株価は2万円台を回復。日本企業は相次いで過去最高益を確保し た。金利も日銀の大量の国債購入によって低水準で推移している。

日本の長期債務残高は増加傾向が続き、14年度には1000兆円の大台 を突破した。国際通貨基金(IMF)の予想では16年のGDP比の債務 残高は247%に上昇する。一方で、GDP比の財政収支の国際比較では リーマンショック後の09年度から徐々に改善している。

政府の総債務残高から金融資産を差し引いた純債務残高の増加ペー スも鈍化している。野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは、「アベ ノミクスによる資産価格の上昇が純債務の伸び鈍化に寄与している。政 府の債務持続性の観点からは好ましいトレンドだ」と話す。

政府は17年度に消費税率をさらに2%引き上げ、10%にする方針 だ。16年度から18年度の3年間を「集中改革期間」と位置付け、18年度 のPB赤字の対GDP比1%程度にするよう歳出改革も進める。具体的 には今後3年間で国の一般歳出の総額の実質的な増加を1.6兆円程度 (うち社会保障費は1.5兆円)に抑制する「目安」を設定した。

しかし、末沢氏は好調な経済成長や税収が持続し、計画通りに歳出 を抑制できたとしても、PB黒字化達成には20年度に消費税率を12%に 引き上げる必要があると試算。追加増税は不可避との見方だ。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「PB赤字 が1%程度より上振れ、歳出カットとなれば景気にダメージが及び、逆 に緩和強化の議論になる」と指摘。社会保障費の抑制は高齢者層の消費 低迷をにつながり、景気が下振れる可能性もあるとみている。

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