グーグルが月面無人探査レース、賞金25億円-日本チームも参戦

最初に月面無人探査車を走らせるのはだれか -。米グーグルが優勝賞金2000万ドル(約25億円)を提供する月面無人 探査レース「グーグル・ルナ・Xプライズ(GLXP)」に世界から少 なくとも十数チームが参加している。コストは賞金の少なくとも7倍掛 かる見込みだが、成功すれば見返りはさらに大きい。

グーグルとXプライズ財団によるこのレースは、民間資金で探査機 を月まで打ち上げて、月面で少なくとも500メートルを走行、高精細画 像や動画を2017年末までに地球に送信することを競うもの。水を発見す ればボーナス400万ドルが支払われる。

レースには日本や米国、ドイツ、ブラジル、インドなどのチームが 参戦、月探査市場で先行者メリットをつかむチャンスだと期待してい る。コンサルティング会社、ロンドン・エコノミクスの試算によれば、 市場規模は10年以内に19億ドルに膨らむ見通しだ。参加者らは将来的に は白金やレアアース物質の採掘、極地域の氷を利用した月面居住、さら には火星に向けた打ち上げ基地なども構想している。

「私たちは賞金だけのために参加しているのではない。レースは月 の商業利用につながるイノベーションを加速させることになる」と、レ ースに参加する日本の民間宇宙開発チーム「ハクト」のリーダー、袴田 武史氏は言う。その上で「私たちは居住可能な月面の洞窟を探検できれ ば、そのデータはきっと売れると思う」と語った。

打ち上げに使うのは米実業家、イーロン・マスク氏が創業した米ス ペース・ エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)の商 業用ロケット「ファルコン9」。打ち上げ費用は6100万ドルで、宇宙へ の物資輸送や衛星打ち上げなどに商業利用されている。

ビジネスモデル

賞金は、Xプライズのように賞金額の何倍もの投資を引き付ける端 緒となり、アイデアに裏付けを与え、達成可能な目標設定を明確にする と、Xプライズを創設したピーター・ディアマンディス氏は話す。そし て最も重要なことは、優勝者には賞金を使い切って終わりではなくプロ ジェクトを継続させることのできる、実行可能なビジネスモデルが求め られる点だ。

「ハクト」は、月にはウサギ(白兎)がいるという伝承にちなんだ チーム名だ。月面探査車「ムーンレイカー」が集めたデータを日本や海 外の宇宙機関に売ることを計画している。ムーンレイカーの4つの車輪 には多くのパドルが付けられており、粒子の細かな土で覆われた月面で も推進力を得られる設計になっている。このデザイン自体、既に「中間 賞」を受賞、50万ドルを獲得している。

袴田氏によると、ムーンレイカーの車体は炭素繊維強化プラスチッ クでできており、月面の極端な温度変化から内部の電子機器を守ってい る。360度カメラも搭載しており、月面の精細画像を撮影することがで きる。

米航空宇宙局(NASA)が40年前のアポロ時代に取得した月面画 像の解像度は約50センチ四方とグーグルマップ並みだった。ムーンレイ カーのカメラはおよそ100万倍の精度を備えているという。NASAは 新しい詳細データを提供してくれる民間企業に3000万ドルを支払う用意 があることを明らかにしている。

ライバルと組む

そんなハクトにもちょっとした問題がある。自ら月にたどり着く手 段がない、という問題だ。そこでハクトはXプライズのライバルである アストロボティック・テクノロジーと組むことになった。賞金は分割す る。彼らが開発した宇宙貨物船「グリフィン」が地球の軌道から月面ま で月面探査車を届けてくれる。ハクトの総事業費は推計1000万ドルで、 収支トントンになれば成功と考えている。

ピッツバーグに本拠を置くアストロボティックは科学・商業機器な どを届ける月の宅急便を目指している。ほかにもポカリスエット缶など を詰めたタイムカプセルを運ぶほか、スタートレックの生みの親、ジー ン・ロッデンベリー氏ら著名人の宇宙葬を請け負っている会社の荷物も 積み込む予定だ。

「宇宙に行くコストは劇的に下がった」と、アストロボティックの ジョン・ソーントン最高経営責任者(CEO)は話す。「その結果、月 への物資輸送会社も現実に稼ぐことができるようになった。15年前なら SFと思われていたことだ」と語った。

イノベーションの触媒

これまでも賞金がイノベーションの触媒となったことはあっ た。1927年、チャールズ・リンドバーグがニューヨークとパリの間で大 西洋無着陸横断飛行を成功させた時も、オルティーグ賞として賞金2 万5000ドルが与えられた。実際、GLXPはこのオルティーグ賞から着 想を得たのだという。

長距離商業飛行が活発化したのはリンドバーグの快挙がきっかけだ ったと話すのはリンドバーグ時代の出来事を「アトランティック・フィ ーバー」として本にまとめたジョー・ジャクソン氏だ。NASAによる と、この記録達成から1年以内に米国内の飛行機数は4倍になり、航空 旅客数は実に30倍に膨らんだ。

「これは技術と個性豊かな人間、そして資金の3つがうまく一つに なった結果だが、いまここにそうした要素の幾つかがそろっている」と ジャクソン氏は電話インタビューで語った。その上で「勝利か、それと も死か、といった状況で人々の関心は盛り上がる。現代において死の危 険にさらされているのはロボットだが」と話す。

原題:Google’s $20 Million Prize Sparks High-Stakes Race to Milk Moon(抜粋)

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