銀行で働くならコンプライアンス-失業の心配なく賞金も期待

今、米国の金融業界で働こうと思うなら、有 望な成長分野はコンプライアンス(法令順守)だ。利益を生み出すのが 命のバンカーらにはあまり面白くないかもしれないが、それが現実だ。

JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者 (CEO)にとって、規制とコンプライアンスはたいへんな負担だ。

同CEOは1月に投資家との電話会議で、「昔は問題があっても1 つかせいぜい2つの規制当局を相手にすればよかった」が、今では数カ 所の当局が関わり「非常に困難かつ複雑だ」と苦言を呈した。

4月の株主宛て書簡でも、せっかく投資家と顔を合わせて話し合え る機会があっても規制の話に時間を奪われるとして、「顧客の取引や市 場シェアの伸び、そのほかの事業のけん引役など本業について話す時間 がほとんどない」と不平をもらした。ブルームバーグ・マーケッツ誌 7・8月号が報じている。

一方、「コンプライアンスの権威」を自称するジャスティン・ホー ル氏は、ダイモン氏の悩みの種が自分たちの将来を確実に明るくしてく れると考えている。ホール氏(28)はチャールズ・シュワブのリテール 銀行部門のコンプライアンスオフィサー。同氏を含め何千人ものコンプ ライアンス担当者は金融機関の中で、収益を上げるのに一生懸命の同僚 たちが道を踏み外さないように目を光らせている。2008年の金融危機以 降、この業界で本当に成長している分野はバンキングではなくコンプラ イアンスなのだ。

ホール氏はコンプライアンスという職種を選んだことに大いに満足 している。「幾らでも機会がある。会社の中の大物たちと直接に接する ことができる。非常に目立つ立場だ」と同氏は話した。

賞金に報酬も高い

コンプライアンス担当者のウォール街での仕事はインサイダー取引 や談合、マネーロンダリング(資金洗浄)などを防ぐことだ。こうした 事例はたくさんあるので仕事はなくならない。JPモルガンだけでも08 年以降に和解費用や制裁金・罰金で360億ドル(約4兆4600億円)を支 払っている。大きいところでは「有毒な」住宅ローンから組成した証券 を販売した件(130億ドル)やねずみ講詐欺のバーナード・マドフ受刑 囚の疑惑の行動を当局に報告しなかった件(17億ドル)、外国為替市場 のレート操作問題(19億ドル)などだ。

コンプライアンスの専門家たちはこのような金額の大きさを指摘 し、自分たちの雇用は決して無駄にならないと論じる。JPモルガンは 危機以降、コンプライアンスと管理の担当で8000人を採用。従業員は住 宅ローン事業についてだけでも14年に80万時間の研修を受けた。

コンプライアンス分野で働いている人にとって、このような数字は 失業の心配がないことを意味する。それだけではない。規制当局は今 や、巨額の賞金を懸けてコンプライアンス担当者に内部告発をするよう 奨励している。米証券取引委員会(SEC)は4月、ある企業の担当者 に少なくとも140万ドルの賞金を支払ったことを明らかにした。

このケースでは、コンプライアンス担当者が不正を報告したにもか かわらず経営陣が不正を止める措置を取らなかったため、SECが同担 当者に賞金を出した。内部告発者を守るため、詳細や会社名は公表され ていない。

人材あっせん会社コンセリウムの創業者、モーリス・ギルバート氏 はコンプライアンスの最高責任者の報酬は高いと明かす。4月に大手製 薬会社があっせんを依頼してきたが、提示された年俸は150万ドルだっ たという。

もちろん報酬が高い理由の一つには、コンプライアンス担当者が相 当のリスクを負っている事情もある。米当局は法順守の不備についてコ ンプライアンス担当者個人の責任を問うこともある。

原題:Compliance Is Now Calling the Shots, and Bankers Are Bristling(抜粋)

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