ダイヤは永遠でない、高齢化ニッポンの現実-「終活」で海外に

ダイヤモンドは必ずしも「永遠」ではない。 少なくとも日本では-。

日本がバブル景気に沸いた1980年代後半から90年代初めにかけて女 性のファッションを彩ったダイヤの指輪やネックレスが、高齢化を背景 に売却されている。2008年の金融危機の前には世界2位のダイヤ市場だ った日本からの中古ダイヤ輸出量は、1-4月に急増した。クローゼッ トの中で眠っていたダイヤが、新興国の旺盛な需要にけん引され国境を 越えて移動している。

「買い取り価格は30年以上前に購入した時よりは低かったが、ダイ ヤをしまっておくより売ったお金で旅行したり食事に行ったりしたいと 思った」。中古品や新品の宝石・貴金属・衣料品などの仕入れ・販売を 手掛けるコメ兵の新宿店の買い取りセンターで2カラットのダイヤの指 輪を売却した主婦の美津子さん(64)はそう語る。美津子さんはフルネ ームの公表は控えた。

人口が減少し退職者が増える中、バブル期に購入した高級品を売却 する人が増え、リサイクル市場が拡大している。1990年代初めにバブル が崩壊。足元では緩やかな景気回復基調が続く中、安倍政権は投資や消 費を促進しており、リサイクルによる中古品の換金は消費促進につなが る可能性がある。

総務省統計局によれば、65歳以上の高齢者が人口に占める割合 は2013年に25%と、1990年の12.1%から上昇。中古品の売却増加の背景 には、不必要な物は捨てシンプルな生活を送る「断捨離」という考え方 が広がっていることがある。それに加え、この世を去る前に相続の準備 をする「終活」も影響していると、日本リ・ジュエリー協議会の高村秀 三・専務理事は指摘する。

売り手市場

高村氏によると、衣料品も含めたリサイクル市場の規模は2009年以 降、毎年約10%拡大し1兆5000億円に達している。同氏は「バブル期に は友人も買ったから自分も買っておきたいということでダイヤを購入す る人が多かった」と指摘。そうした人々が売却しているほか、「おばあ ちゃんの遺品の中からダイヤがいっぱい出てくるケースなどもある。金 などの貴金属の売却が以前より一般的になり買い取り店が増えているた め、遺族は遺品を売却しやすくなっている」と語る。

警察庁の統計によれば、古物営業の許可総数は13年に04年と比較し て23%増加し74万1045件に達した。名古屋市で1947年に創業したコメ兵 の店舗数は10年前には5店舗だったが現在では全国で24店舗を展開して いる。

コメ兵では買い取ったダイヤの一部を再加工するなどして店頭で販 売している。日本でバブル期に購入されたダイヤは品質が高いため中国 などアジアの顧客に人気が高く、同社は店頭での中国人顧客への対応の ため3年前から中国語を話すスタッフを増やし始め、現在では全国で 約50人が勤務している。

円安の影響もありアジアの国々でダイヤ需要が高まっている。減少 しているダイヤ在庫を補充するためコメ兵は、買い取り価格を前年同期 と比べ20%高くするキャンペーンを今月1日から7月半ばまで開催して いる。円はドルに対して過去1年間に18%下落し、アジアの12主要通貨 のうち最低のパフォーマンスを示している。

中国がけん引

財務省の貿易統計によれば、日本の1-4月のダイヤ輸出量は前年 同期比77%増の3万8032カラットと、この時期としては07年以来の高水 準。輸出総額は2倍以上に増加し30億1000万円と、ウェブサイトで貿易 統計が検索可能な1988年以降で最高に達した。数量で見ると輸出先はイ ンドと香港がそれぞれ30%余りを占める。

世界最大のダイヤ販売会社デビアスによれば、中国のダイヤ市場は 昨年、米国に次ぎ最も急速に拡大した。日本は2008年の金融危機前は2 位だったが現在は米国と中国、インドに次ぎ4位となっている。

サンフォード・C・バーンスティーンのアナリスト、ポール・ゲイ ト氏(ロンドン在勤)は4月のリポートで、中国の需要の大半は中産階 級の台頭によるものだと指摘。「中国のダイヤ宝飾品市場はダイヤ需要 の伸び全体の大きなけん引役となる可能性がある」と述べた。

同じく中産階級が増加しているインドは、ダイヤのカット・研磨の アジアの拠点であることもあり需要を押し上げている。

オークション

宝飾品卸売業者が密集する東京の御徒町では日本国内や外国の宝飾 品業者を対象にダイヤオークションが開かれている。ダイヤトレーダー のバイバブ・バンダリ氏(24)は月に4回のオークションに参加。購入 した中古ダイヤはムンバイと香港の卸売業者や小売業者に販売してい る。

バンダリ氏は「古いダイヤと新しいダイヤは区別が付かない。日本 のリサイクルダイヤは、同じ品質でもインドで新しいダイヤを購入する より15%安く買うことができる」と説明。「円安により日本のダイヤは 海外の業者にとって一段と購入しやすくなっている」と語る。

東京生まれのバンダリ氏は、インド出身の父親が御徒町で経営する ダイヤ卸売会社に昨年10月に入社。その前はロンドン・スクール・オ ブ・エコノミクスで修士号を取得後、ムンバイにあるJPモルガンで株 式調査アナリストとして勤務していた。「人口と所得が増加しているイ ンドと中国ではダイヤ販売が急増する可能性があると考えている。投資 銀行業界での経験を生かし、父の事業を拡張したい」と話す。

コメ兵の営業企画部シニアマネジャー、大脇直人氏によれば、一部 のインド人ダイヤトレーダーは母国にダイヤを持ち帰って加工した後、 中国やドバイ、米国などの市場で売却している。「インドの研磨技術 は30年前と比較して大きな進化を遂げている。コンピューター利用設計 システム(CAD)などの情報技術(IT)と職人技の発達により高度 な加工が可能になっている。これらの技術によって生まれ変わったダイ ヤはカットの品質が高まり輝きが増す。値段も高くなる」と同氏は指摘 する。

日本リ・ジュエリー協議会によれば、1965-2013年に日本に輸入さ れたダイヤは累計8700万カラットに上る。クローゼットの中には、まだ まだお宝が眠っていそうだ。

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