量的・質的緩和の早期縮小の見方浮上、2%達成前

量的・質的金融緩和の持続可能性への疑問か ら、日本銀行が2%の物価目標の達成前に量的・質的金融緩和の縮小 (テーパリング)を行うのではないかとの見方が一部の市場関係者の間 で浮上している。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎シニアエコノ ミストは「国債の流動性が乏しくなりつつあり、いずれ国債の買い入れ を進めることに限界が来ると考えられ、買い入れペースを落とさざるを 得なくなる」として、16年下期のテーパリング開始を見込む。

クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは「年内の追 加緩和の可能性は低下した」と指摘。今や、金融政策運営の最大の関心 事は「マネタリーベース目標政策の維持可能性だ」とした上で、2016年 上期に「政策枠組みを変更とテーパリング」を予想する。

黒田東彦総裁は10日の衆院財務金融委員会で、実質実効為替レート で「ここからさらに円安はありそうにない」と発言。これが円安けん制 と受け取られたこともあり、早期の追加緩和観測は後退している。ブル ームバーグが8-15日にエコノミスト35人を対象に実施した調査で、 「緩和なし」との回答が13人(37%)と前回(28%)から増加した。

黒田総裁は同委で、「国債買い入れに支障が出るとはみていない」 と述べるとともに、「2%の物価目標が安定持続するまで量的・質的緩 和を継続する姿勢に変わりはない」との立場を繰り返した。

限界が「どこかで来る可能性」

しかし、日銀内からも量的・質的緩和の持続可能性に疑問の声が出 ている。1月の金融政策決定会合で、複数の委員が「買い入れを継続す ることは技術的には当分可能であるとみているが、先行きにおける持続 可能性についても留意しておくことが必要である」と発言。佐藤健裕審 議委員は10日、甲府市内の会見で、限界点が「どこかで来る可能性があ る」と述べた。

大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは23日のリポートで、 「買い入れの持続可能性をめぐる議論が活発化することは当面なさそう だ」としながらも、物価が伸び悩み、量的・質的金融緩和の長期化が避 けられなくなった場合は、「市場環境の変化等を受け、プラグマティッ クな対応がとられる可能性を排除すべきではないだろう」という。

日銀は2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に 持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続すると している。日銀は生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)前年比が 2%程度に達するのは「16年度前半ごろ」としているが、ブルームバー グ調査では32人中30人がこの見通しは「実現しない」とみている。

継続条件に潜む抜け道

バークレイズ証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストは24日のリ ポートで、2%の物価目標を安定的に持続するまで継続するのは、量 的・質的金融緩和(QQE)という政策の枠組みであり、「今の買い入 れ額自体を継続するわけではない」と指摘する。

昨年10月に追加緩和を実施した際も、日銀はQQEの継続条件に関 する文言は変更しなかった。福永氏は「つまり、例えば今のQQE2の 買い入れ額からQQE1の時の買い入れ額まで戻すような政策変更を実 施することは、文言に書かれた条件を満たしていない段階でもあり得る ということである」と指摘している。

実際、似たような議論が過去にも行われている。日銀は01年3月、 日銀当座預金残高を目標とする量的緩和政策を導入。06年3月まで5年 間続けた。この間、資金供給オペで札割れが相次いだことを受けて、福 間年勝審議委員が04年4月の金融政策決定会合で目標額の引き下げを提 案。水野温氏審議委員も賛同したが、大勢の支持は得られなかった。

政府の反対はさほど強くない

野口氏は「現在と当時では、状況が異なるところもある」と指摘。 特に、政治サイドが量的緩和の縮小に強い拒否反応を明らかにしていた 当時と比べ、現在は「政府からのけん制がさほど強くないように見え る」という。

同氏は「巨額過ぎる日銀の買い入れ額を維持することが明らかに困 難になり、副作用の少ない形に修正する方が日本経済全体にとってもメ リットが大きい、との見方が市場参加者の多くに共有されれば、インフ レ率が日銀シナリオを大幅に下回っている状況でも、日銀は減額に動く 決断を下そう」と指摘。

その場合、「政府・財務省が本腰を入れて反対に回る公算は、かつ てより小さそうだ」としている。

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