「カオス」か「クドス」か、戦術に走ったチプラス首相の5カ月

ギリシャのチプラス首相はとにかく予測不可 能な交渉相手であることを身をもって示した。

旅行者に脱税を摘発してもらうアイデアや、緊急首脳会議の数時間 前に送る提案の文書を間違えるなど、秩序ある他のユーロ圏諸国とはど うも性が合わない。敵対的で観念的、そして時には混沌(こんとん)と している。この戦略は痛めつけられたギリシャ人を奮い立たせ、瀬戸際 作戦は勇敢さと受けとめられた。ブリュッセルとベルリンでは味方にで きたであろう相手を怒らせた。首相の軌跡は「カオス(混沌)」、それ とも「クドス(称賛)」の5カ月だったのだろうか。

英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のケビン・ フェザーストーン教授(現代ギリシャ研究)は「多くが失われ、得られ たものはほとんどなかった」とし、「引き延ばし作戦は条件改善につな がらなければ意味がない」と指摘した。

次の融資はどうやら手が届くところまで来たのかもしれないが、ユ ーロ圏の債権者らは最新のギリシャの財政案をさらなる作業の基盤とみ ており、これで完了とは考えていない。

同国政府は勤労者と雇用主の拠出を増やすことや、早期退職制度の 見直しで低所得層への年金給付を守ることになると主張する。向こう数 年の財政目標についても、それほど野心的でない数字で債権団を納得さ せたと考えている。

しかし債権者側は、目標見直しを認めたことについて、ギリシャ経 済の状況があまにもひどく悪化して、当初見通が現実的でなくなったた めだとしている。

政治的資本の浪費

「詳細な計画の代わりにどう喝、脅迫を手段とした数カ月にわたる 交渉の間にチプラス首相は自らの政治的資本を浪費した」と英シェフィ ールド大学の講師、エイリニ・カラムージ氏は話す。

欧州連合(EU)当局者の1人は今週のギリシャ案について、チプ ラス首相の急進左派連合(SYRIZA)が1月に政権の座に就いて協 議が始まってから初めての真剣な提案と評した。チプラス首相は現行救 済プログラムからの約70億ユーロ(約9700億円)を確保する最後の試み のため、ドイツのメルケル首相およびフランスのオランド大統領と会談 した後、21日の閣議で提案を説明し、ブリュッセルに向かった。

ブリュッセルではEUの行政執行機関、欧州委員会が提案文書を待 っていた。待たされた揚げ句に2つの文書が届けられたため、大混乱に なり会合までに準備をする時間もなかったと、アイルランドのヌーナン 財務相が述べた。

国民の支持得た「素人と学者」

米エール大学のスタティス・カリバス教授(政治学)は、「素人丸 出しが非常に大きな悪影響を生んだ。当然、これが最終合意の内容に響 くだろう」と語った。

チプラス政権のバルファキス財務相はアテネ大学教授出身で、会合 の場で経済学の講義をして交渉相手を退屈させた。4月にラトビアの首 都リガで行われた会合ではいら立ちを募らせた他の財務相らがバルファ キス氏について時間の無駄遣いを非難した。

世論調査によれば今のところ、5年にわたる強いられた緊縮からギ リシャを救い尊厳を回復させようとしたチプラス首相とバルファキス財 務相を国民は支持している。

しかし、国民が経済の現実を実感しSYRIZAの中の急進派議員 らが合意文書の詳細をじっくりと読むのに伴い、政治的な駆け引きがも っと必要になってくるだろう。

チプラス氏が野党時代に売り物にしていた経験の無さは過去40年の ギリシャ政治に失望していた有権者にアピールするのには大いに役立っ たが、「もっと時間を与えるよう欧州のパートナーらを説得するのには それほど効果がなかったようだ」とカラムージ氏は解説した。

原題:Chaos or Kudos? Tsipras’s Tactics Leave Greeks a Costly Legacy(抜粋)

--取材協力:Marcus Bensasson.

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