英投資ファンド、JTの株主総会で全敗も「今のところ大成功」

更新日時

英投資会社、ザ・チルドレンズ・インベスト メント・ファンド(TCI)が日本たばこ産業(JT)の経営陣と初め て会ったのは4年ほど前。TCIがJT株を取得以来、株主総会で提案 してきた自社株買いや増配、金庫株の消却はすべて否決されてきた。し かし、結果を悲観してはいない。戦略通りだという。

「われわれの目的は必ずしも総会で勝つことではなく、会社を動か すことだ」-。TCIのパートナー、オスカー・フェルトハウゼン氏は 語った。TCIが提案した1株当たり150円(会社側予定は100円)の配 当と1500億円の自社株買いは3月の株主総会で否決された。しかし、提 案公表後の2月、最大1000億円の自社株買いを決定し発表していた。

TCIはアクティビストとして電源開発(Jパワー)などへの投資 で知られる。2005年から3年間、増配や株式持ち合いの制限、社外役員 導入などを求めたが、総会で否決されてきた。08年には同社株の20%へ の買い増しを日本政府に拒否され、11月に全株式を売却して撤退した。 こうした経験を教訓に、今は違う姿勢で投資に臨んでいる。

フェルトハウゼン氏(46)はJTへの投資を「今のところ大成功 だ」と総括する。「彼らは公式には自発的に株主還元を強化してきたと 言うだろうが、それでも構わない。われわれにとって大事なのは結果だ けだ」と言い切る。「100を要求すれば、50も答えが返ってくる」と、 要求が完全に通らなくても一定の結果を得られていることに自信を示 す。

グローバルを意識

JT広報担当のクリフツォフ・ドミトリ氏は「あらゆる意思決定は 経営理念に基づいて行っている」とコメント。最大1000億円の自社株買 いについても「株主提案は全く関係ない」と話した。このような説明の 中で、JTは実際には増配により配当性向を11年の29.7%からことし3 月末では50.1%に高めるなど、株主還元の強化を着実に進めている。

クレディ・スイス証券の森将司アナリストは「JTはしっかりした 戦略を持った会社で、株主の圧力で変わった感じではない」という。た だ、「あえて言えば、TCIがグローバルな視点で要求をしてきたこと で、世界のたばこ大手4社の一角を占める会社として、他社と比べた収 益性や株主還元を意識させた意味はあった」と分析する。

安倍晋三政権は成長戦略の一環として投資家、企業が守るべき規範 を制定。双方の対話を通じた日本企業の持続的な成長を目指しており、 国際的に低い株主資本利益率(ROE)も上昇傾向にある。こうした動 きはTCIのような「物言う株主」にとって追い風で、フェルトハウゼ ン氏は「われわれがドアを開けるのに一役買った」と感じている。

対話

TCIはさらなる株主還元などを求めて安倍首相にJTの政府保有 JT株を全て売却するよう求める書簡を送った。ただ、フェルトハウゼ ン氏はこうした派手な攻撃の一方で、企業経営者と対話を積み重ねるこ とも重要だと指摘する。そして今、JTとの対話について「非常に建設 的だった」と振り返る。

フェルトハウゼン氏はガバナンス改革の流れを受け今後、日本には 多くのアクティビストがやってくると予想する。その中でアクティビス トは性質を変化させていかざるを得ないとみる。「短期主義は減るだろ う」-。

6月19日のJTの株価終値は4454.5円。TCIがJT経営陣と初め て会ったという11年5月に比べ3倍弱に上昇した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE