バルファキスとショイブレ、ギリシャ悲劇の2大役者を読み解く

ドイツのショイブレ財務相とギリ シャのバルファキス財務相はこの5カ月、同じ舞台に立ち、ユーロ誕生 から16年の歴史の中で最悪の危機への対応について正反対の考え方で闘 いを繰り広げてきた。

一方は学者として経済学とゲーム理論に通じる自称「風変わりなマ ルクス主義者」。もう一方は法律の専門家で、保守派のキリスト教民主 同盟(CDU)に忠実な党員、議員歴40年のベテランだ。

バルファキス氏はユーロ圏に内在する欠陥への鋭い洞察でジョゼ フ・スティグリッツ氏ら経済学者の一部から称賛されたが、ショイブレ 氏はそのユーロ圏の誕生に貢献している。

2人の対立は、1999年1月1日のユーロ誕生時点で答えが出なかっ た問題に根差している。通貨同盟の参加国が破産しそうになった時、ど うするのかという問題だ。ギリシャは今、ものすごい勢いで破綻に向か っているように見える。

バルファキス氏は欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨 基金(IMF)という債権者側の3機関が場当たり的対応に終始してい ると考える。ピレウス港を中国企業に売却したり公務員の年金を削減し ても、ギリシャもユーロ圏も救われないという見方だ。同氏に言わせれ ば、必要なのはドイツのように豊かな国の「使われていない貯蓄」をギ リシャなど比較的貧しい国に投資資金として回しやすくする仕組みだ。 「技術的な問題ではなく設計の問題だ。現在の設計では長くはもたな い」という。

そんな複雑な話ではないと、ショイブレ氏は反論する。ドイツの財 政を均衡させるという悲願を昨年達成した同氏は、収入の範囲でやりく りすることが繁栄への道だと考える。歳出を減らし労働法を見直し企業 の競争力を高めるという改革を実施したスペインは今や、フランスとド イツを上回る成長を遂げている。ポルトガルとアイルランドも成果を出 している。「真の改革を実施した国は、努力が本当に実を結ぶことを実 感し始めている」とショイブレ氏はブルッキングス研究所での講演で語 った。「構造改革とは労働市場を柔軟にするだけではない。教育・職業 訓練の改善、政府の合理化、効果的な法制度の整備も改革だ。さまざま な制度の枠組みの弱さこそが低成長の主因だ」と論じた。

両者の主張の違いには、それぞれの出身国が大きく関係している。 ショイブレ氏はドイツが理想とする規則に基づく統治がユーロ圏の合法 性の土台と考えていると、ベルリンのシンクタンク、米ジャーマン・マ ーシャル・ファンドの欧州プログラム担当ディレクターのダニエラ・シ ュワルツァー氏は話す。ショイブレ氏にとって規則は全ての基本なので 同氏の下での財務省スタッフはエコノミストより法律家が多い。

一方、商店主が付加価値税(VAT)の支払いをできるだけ避けよ うと売り上げを帳簿に載せないことが日常茶飯事のギリシャでは、規則 は主として破られるためにある。国税庁のトップだったハリー・テオカ リス氏は残念そうにそう話す。規則がころころと変わるため、ギリシャ 人たちは臨機応変に自分の金銭を管理する。つまりバルファキス氏にと って、緊縮プログラムを拒否するのは反乱ではなく、ギリシャ再生のよ り良い計画を生み出すための創造的破壊なのだ。ドイツの政治経済学者 であるシュワルツァー氏は、「ギリシャとドイツの対立の根本はここに ある。ドイツ人にとって規則に基づく取り決めがあり、その規則を破る 人間がいるなら、そこを土台に作業を進めることはできない」と説明し た。

異なる2人だが、バルファキス氏とショイブレ氏には同意すること が一つある。それは、世界一の通貨同盟を存続させなければならないと いうことだ。3億3500万人が属する通貨同盟の利点は欠点を補って余り ある。ショイブレ氏は今年2月5日のバルファキス氏との共同記者会見 で、「私たちはともに欧州の統合に賛成だ。強い欧州、世界の中で力を 持ち立場を主張できる欧州を望む」と語った。

もし、ギリシャがユーロ圏を離脱し同国抜きのユーロ圏という世界 が始まっても、持続不可能な債務にどう対処したらよいのかという問題 は残る。バルファキス氏は景気刺激を重視し、ショイブレ氏は緊縮を中 心とした改革を主張する。「われわれは政治的な政策論議やユーロ圏の 設計理念の考察に時間を割いてきたが、この先この同盟をどこに導いて いきたいのかという将来像を描くのは難しい」とシュワルツァー氏は言 う。

アテネの財務省のオフィスでは、バルファキス氏が再びアイデアを 練っている。「債務の共有化」だ。ユーロ圏が真の通貨同盟になるとい うなら、なぜECBが債券を発行して財政難の国を助けないのか。「共 有された債務というのは大き過ぎない限り、国を一つにまとめる絆にな る」と語ったのは米国の建国の父の1人と言われるアレクサンダー・ハ ミルトン氏ではなかったかと、バルファキス氏は問い掛ける。初代米財 務長官も務めたハミルトン氏は諸州の債務を連邦政府で引き受けて共有 化し、これを「国家に恩恵をもたらす賜物」と呼んだ。ショイブレ氏と ドイツ人はもちろん、そのようには受け止められないだろう。

原題:European Disunion: It’s Personal for Two Rivals in Greek Drama(抜粋)

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