日銀:金融政策の現状維持を決定、8対1-決定会合を年8回に

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日本銀行は19日の金融政策決定会合で、政策 方針の現状維持を8対1の賛成多数で決めた。木内登英審議委員が前回 会合に続き反対した。日銀はまた、経済・物価情勢の展望(展望リポー ト)の公表を年4回に増やす一方、金融政策決定会合の開催を年8回に 減らすなど、金融政策決定会合の運営を見直すことを決定した。

日銀はこれまで展望リポートは年2回、金融政策決定会合は年14回 開いていた。今回の見直しではこのほか、展望リポートにおける政策委 員の経済・物価見通しについて、従来の大勢見通しに加え、全ての政策 委員のそれぞれの見通しとリスク評価を公表する。また、決定会合にお ける「主な意見」を作成し、決定会合終了後1週間をめどに公表する。

公表済みの年内の決定会合等の日程は変更せず、来年1月から実施 する。これに伴い、毎月公表していた金融経済月報の公表は取りやめ る。いずれも全員一致で決定した。四半期ごとに経済・物価の見通しを 公表した上で、金融政策を決定する会合を年8回開く枠組みについて、 日銀は「近年、主要中央銀行で主流となってきている」としている。

SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは発表後のリポー トで、展望リポートが年4回公表されることについて「物価見通しがよ り現実に近いものとなり、機動的な政策発動につながる可能性もあろ う」と指摘した。

為替めぐる発言に注目

日銀はマネタリーベースが年約80兆円に相当するペースで増えるよ う金融市場調節を行う方針を据え置いた。長期国債、指数連動型上場投 資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も 維持した。ブルームバーグが8-15日にエコノミスト35人を対象に実施 した調査でも全員が現状維持を予想した。

黒田東彦総裁は10日の衆院財務金融委員会で、実質実効為替レート で「ここからさらに円安はありそうにない」と述べた。この発言を受け て円高が進行した。16日の参院財政金融委員会では同発言について、 「このところの名目為替レートについての評価や予測として申し上げた わけではない」と説明。この発言を受けて今度は円安方向に動いた。

また、原田泰審議委員は4日のブルームバーグのインタビューで、 現状の円安について「いろんな産業が競争力を取り戻しているところを 見ると、かなりいいところまできたのかもしれない」と発言。為替相場 はこの発言を受けて円高方向に振れた。

黒田総裁は16日、為替相場について「経済のファンダメンタルズ (基礎的諸条件)を反映して安定して推移することが望ましいと思う し、そういうことであれば、全体として経済に悪影響を及ぼすことはな い」と語った。市場関係者の間では円安が日本経済に与える影響につい て見方が分かれている。

日銀は為替より賃金に注目

ブルームバーグ調査で1ドル=125円の為替水準は日本経済にプラ スか聞いたところ、「はい」が20人、「いいえ」が10人だった。バーク レイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「125円までであれば日本 経済にはプラスの影響が若干勝るだろう。ここにきて食料価格が上がっ ている点を見ると円安は消費者物価の押し上げに寄与している」とい う。

しかし、森田氏は「日銀が安定的な物価上昇を見極める上で注目す るのは賃金だろう。円安を2%達成のための主たる手段と日銀がみなす 時間帯はすでに終わっている」という。

メリルリンチ日本証券の吉川雅幸チーフエコノミストは「6月以降 1人当たり現金給与総額が1%ないしそれをやや超えてくるか、9月以 降小幅でもインフレ率の上昇がみられるかが鍵。金融政策の先行きはデ ータ次第の性格が強い。個人的には7対3で年内は現状維持とみている が、データ改善が期待外れに終わり、日銀が動くとすれば12月か」とい う。

信州大学の真壁昭夫経済学部教授は「既に中小企業を中心に円安倒 産が増えている。125円以上の円安は輸入原材料コストの上昇などを背 景とする値上げを通して、個人消費等にマイナスの影響を与えやすい」 とみる。

物価2%達成には不十分

東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは「現在程度の円安 では2%に不十分であり、目標達成にはさらなる持続的円安が必要」と 指摘する。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「円安のチャネ ルだけでインフレ2%を実現しようとすると、国民から激しいブーイン グが起き得る」という。

一方、黒田総裁の10日の発言が円安けん制と受け取られたこともあ り、追加緩和期待は後退している。ブルームバーグ調査で13人が緩和予 想時期を後ずれ。7月緩和予想は2人(5.7%)と前回調査(25.0%) から激減した。年内の緩和予想は17人(48.6%)と前回(61.6%)から 減少。「緩和なし」は13人(37.1%)と前回(27.8%)から増加した。

野村証券の松沢中チーフストラテジストは16日のリポートで「翌日 物金利スワップ(OIS)5年が既に0.2%台に乗せているので、年内 追加緩和なしの見方は既に相場に織り込まれている」と指摘。次は追加 緩和なしが5割を超える時点で「『緩和打ち止め、次の一手は出口論』 の見方が織り込まれ、この際には5年債も0.20%を試す」とみている。

農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「賃上げ・夏季賞与の底 堅さを背景に消費の回復傾向が強まり、夏場以降は経済の好循環入りが 実現するだろう」と指摘。物価も夏場以降は原油安要因の剥落で伸びが 回復し、「16年度にかけて労働需給のひっ迫などとともに、賃金・物価 が適度に上昇し始め、出口が意識され始めるだろう」としている。

木内氏が独自提案も否決

木内氏は前会合と同様、「マネタリーベース及び長期国債保有残高 が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節及び資産 買い入れを行う」などの議案を提出したが、反対多数で否決。「資産買 い入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで 継続する」との議案も提出したが、1対8で否決された。

黒田総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。議事要旨は7月21日 に公表される。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイ トで公表している。

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