日本的が生んだ企業改革、物言う株主成功せず-フィデリティ

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日経平均株価が15年ぶりに2万円を回復する 原動力の1つになったコーポレートガバナンス(企業統治)改革への期 待感。フィデリティ投信のアレキサンダー・トリーヴス運用部長は、政 府主導で始まった企業改革の流れは横並びや合意形成を重んじる日本的 風土があってこそ速まった、とみている。

トリーヴス氏は10日に行われたブルームバーグとのインタビュー で、経営者は資本効率の向上を求める政府に応じている面が大きく、 「この国では他の企業のようでありたい、そうでなければ恥ずかしいと いう考えがあり、動かす勢いになっている」との認識を示した。

同氏は、官民挙げてコーポレートガバナンス改革に取り組む日本の 姿を評価。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF)が株主資本利益率(ROE)を重視し始めるなど、「内部 から総意を築いていった」と指摘する。その上で、「企業がリターンを 考えていると分かってきた。投資家にとって非常に大切だ。6カ月前は 評価されていなかったが、今は市場に歓迎されている」と述べた。

安倍政権は日本再興戦略で、企業の国際競争力を高めるためにコー ポレートガバナンスの強化を重要施策の筆頭に掲げ、経済産業省のプロ ジェクトチームではグローバルな投資家との対話が可能なROEの最低 ラインを8%以上に設定、経営者に一段の収益性向上を促している。野 村証券によると、資本効率の改善につながる配当と自社株買いを合計し た総還元額(全上場ベース)は、2014年度に12.8兆円と7年ぶりに過去 最高を更新した。15年度は14.6兆円と、さらに増える見通しだ。

売買代金シェアで6割以上を占める海外投資家の間でも日本株への 投資意欲が高まり、経営陣に対し厳しい姿勢で改革を迫るアクティビス ト(物言う株主)の動きも活発化してきている。米投資ファンド、サー ド・ポイントのダニエル・ローブ氏は2月に工作機械・ロボットメーカ ーのファナックに対し、自社株買いを通じた株主還元の強化を要求。フ ァナックは4月、配当性向を倍増させると発表した。

日本株市場では、2000年代に潤沢な資本の活用や生産性改善を企業 に求めるアクティビストが活躍した時期があり、村上ファンドや米ステ ィール・パートナーズはその代表格だ。しかし、多くの日本企業が拒絶 反応を示した経緯がある。

トリーヴス氏はローブ氏の動きについて、アベノミクスの「『第3 の矢』がない中で彼のアプローチが成功したかというと、難しかっただ ろう」と分析。コーポレートガバナンス改革は、「日本の文化的な枠組 みの中で機能するもので、急進的に変化したわけではない」とし、アク ティビストが「企業に強く要求する古い方法に戻ることができると解釈 するならば、間違いを犯す」とみている。

日本株上昇基調に、一部海外勢は疑いの目も

日本企業の変化を示す事例では、社外取締役数の増加も1つ。議決 権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サー ビシーズ (ISS)が6月の株主総会シーズンを前に2500社以上を調 査した結果、1人以上の社外取締役を選任する企業は昨年12月の72%か ら94%以上に増加。2人以上の企業は55%と24ポイント上昇した。株主 の権利など企業が守るべき規範を定めたコーポレートガバナンス・コー ドでは、社外取締役2人以上の選任が求められている。

現状の日本株について、企業改革や賃金上昇、デフレからインフレ への変化、他市場と比べた良好なバリュエーションなどから「歴史的に みても、とても良い方向」とトリーヴス氏。海外投資家の関心は高まっ ており、「出張の予定を埋めるのに困らない。海外勢、日本の個人はま だ十分に買えていない」と話し、当面の上昇基調持続を予測する。同氏 が関与するファンドでは、小規模でも競争力を持つ機械企業の株式を保 有、金融やインターネット小売分野にも注目している。

ただトリーヴス氏は、デフレが長期間続いた中で20年前に日本を知 っていた専門家も世代交代でいなくなり、日本のことをよく知らない海 外投資家が増えたため、「株価上昇、コーポレートガバナンス改革の継 続性に疑いを持っている一部の投資家はいる」と言う。また、政府が一 度に多くのことに取り組もうとし過ぎており、農業や女性活躍の面で進 捗(しんちょく)はあったが、移民や雇用改革は進まず、「今は数年前 より大きな変化を感じなくなっている」と懸念も示した。

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