スバル:急成長遂げるブランド、生産能力も限界に-拡大か否か

米インディアナ州ラファイエッ トを竜巻が襲ったのは、2013年11月17日午後3時頃。日曜日だった。

富士重工業傘下のスバルにとって、唯一の海外生産拠点である自動 車工場が同地にあった。屋根は吹き飛ばされ、3トンもある空調設備は ビールの空き缶のように転がり、コンクリートの壁も組み立てラインの 上に倒れていた。

インディアナ工場の責任者を務めるエグゼクティブバイスプレジデ ントのトム・イースターデー氏は、「翌月曜日は休みで、火曜日の午前 6時には操業を始めていた」と話す。屋根はパネルを寄せ集めて急場を しのぎ、床は数インチの雨水で覆われ、工場内は寒かった。しかし、ス バルには生産を停止する選択肢はなかった。米国内に約11日分の在庫は あったが、需要を大きく上回る供給で有名な自動車業界ではあまりにも 少ない水準だった。

それ以来、竜巻が襲ってきたことはないが、スバルに対する増産圧 力は強まる一方だ。11年以降、スバルの世界販売台数は45%増えて91 万3100台に達している。この伸び率は急成長を遂げている一部の中国ブ ランドや、欧州やアジアで「ジープ」を人気車種に押し上げようとして いるフィアット・クライスラーに見劣りする程度だ。米国では同期間で 販売台数がこれほど伸びているのはテスラだけだ。そして、スバルは自 動車業界で最も高い利益率も誇っている。

昨年、自動車世界最大手のトヨタ自動車は約3秒ごとに自動車を販 売したのに対し、スバル車は35秒を要した。大半の自動車メーカーはス バルの親会社、富士重工よりも規模がはるかに大きい。自動車販売台数 で見ると、独BMWの規模は2倍強、韓国の起亜自動車は約3倍、マツ ダでも50%多く自動車を販売している。

小ささが強み

だが、規模の小ささがスバルの強みでもある。生産能力が限界に近 づく中、スバルはどのような自動車メーカーになりたいのかを決断しな ければならない時期に来ている。

大半の自動車メーカーからすれば、単に増産すればよいだけのこと だろう。それは経済モデルを見れば一目瞭然だ。エンジニアの給与や金 属のプレス加工機械などの自動車生産の固定費は大きく、こうしたコス トを吸収する生産台数を増やせば、1台当たりの利益も大きくなる。

だが、台数に重点を置く手法には欠点もある。供給が需要を上回る と、さまざまな影響が出て結果的に消費者の評判を落としてしまう恐れ がある。まず、在庫調整に向けた値下げや奨励金の積み増しで利益が圧 迫される。また、その負担をめぐって販売店とメーカーの間で摩擦が生 じることにもなる。さらに、こうした値下げは再販価格にも影響し、潜 在的な購入者を逃がすことになりかねない。

米国部門スバルオブアメリカ(SOA)のトム・ドール社長は自動 車メーカーでは異色の経営者だ。同社長は会計士出身であり、販売でも マーケティング出身でもない。ドール社長(61)は1982年にSOAに入 社し、それ以来スバル一筋で、競合他社に移籍したことはない。

ドール社長はホテル内のスターバックスに閉じこもり、直前に迫っ た販売店への年次スピーチの原稿に入念に手を入れていた。最近の目覚 ましい実績に関して尋ねると、同社長は肩をすくめ、笑みを浮かべて自 動車業界の浮き沈みを見てきた職人の言葉を教えてくれた。

「このビジネスの利益は全て一過性だ。結局はどこかにしわ寄せがいく だけなんだよ」

原題:Subaru Sells Out: Will a Fast-Growing Carmaker Decide to Stay Small?(抜粋)

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