【クレジット市場】日銀注視、バブル超え不動産業融資-アパマン活況

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銀行や信用金庫の不動産業向け新規融資額が バブル期も超えて過去最高となる中、日本銀行は不動産市場が今後、過 熱化しないか注視し始めた。都心再開発などに加えて、最近では相続税 対策でアパートやマンションを経営する個人向け融資も伸びており、人 口減に伴う空室リスクを指摘する声もある。

日銀によると、1-3月の不動産業向け設備資金新規貸出額(国内 銀行と信用金庫の合算)は3兆8207億円。四半期ベースとしては、80年 代後半のバブル期や過去最高だった昨年1-3月を上回る高水準。全産 業の25%を占めており、3月末の貸出残高もデータで遡れる93年6月以 降最大の77兆6171億円だった。

日本経済は戦後、二度バブルの生成と崩壊を経験した。狂乱地価を 招いた80年代後半のバブルの崩壊では、多額の不良債権を抱えた金融機 関の貸し渋りで景気が低迷するなど「失われた10年」に突入した。ま た07年ごろのミニバブルは世界金融危機の影響で崩壊。近年はデフレ脱 却を目指す安倍政権の下で、不動産価格が再び上昇、東京五輪をにらみ 湾岸地域など都心再開発も活発になっている。

日銀は4月の「金融システムレポート」で、不動産向け融資の現状 について、「過去の不動産ブーム期にみられた過熱感は全体としてうか がえない」としながらも、不動産向け融資が徐々に伸びを高め、「低信 用先の資金調達も増加傾向にあることなどを踏まえると、先行きの不動 産市場の動向は注視していく必要がある」と指摘した。

警告シグナル

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、2%の物 価上昇に向けて異次元金融緩和を継続する日銀の立場として「不動産市 場の過熱化について本来警戒シグナルを出しにくい」と指摘。そうした 中で、あえて日銀は同レポートで「不動産について一部警告シグナルに 変えてきた」と受け止めている。

農中信託銀行シニアファンドマネジャーの新海秀之氏は、「日銀は 金融緩和をしばらく続けると思われる」とした上で、「20年東京五輪の ころまで地価は緩やかな上昇が続く」との見方を示す。物価目標達成の ための緩和政策がバブルを引き起こしかねないといった「問題がいずれ 出てくる」として、金融政策のかじ取りはかなり難しくなると見る。

積極的な金融緩和や財政出動を柱とするアベノミクスは、株や不動 産など資産価格を押し上げ、日経平均株価は政権が発足した12年末以 来、4日までに2倍に上昇。15年の3大都市圏公示地価は住宅地(前年 比0.4%上昇)、商業地(同1.8%上昇)とも2年連続で上昇した。

不動産経済研究所の調査では、東京都区部の新築マンションは1- 4月の平均発売価格が6222万円と、直前ピークの07年の6120万円を上回 り、バブル崩壊直後の92年以来の高さだ。米調査会社デモグラフィアに よると、世界主要都市で年収などと比べた住宅の買いやすさ調査で、 「東京・横浜」はシンガポールなどとともに4段階評価で下から2番目 の「かなり住みにくい」にランクされた。

アパ・マン経営

不動産業向け新規融資額の増加について、メリルリンチ日本証券の 大槻奈那アナリストは、全般的な不動産ブームに加えて「相続税対策を 目指す中小企業オーナーや富裕層向け融資の伸びが大きい」と分析す る。アパートやマンションなど貸家経営に乗り出す個人向けの1-3月 の融資額(銀行・信金の合算)は、09年6月の集計開始以降で最大の1 兆1206億円に達した。

1月の相続税改正で基礎控除額が40%引き下げられ、相続人が1人 の場合の控除額は6000万円から3600万円となり、資産4000万円でも新た に課税される。相続財産を現金ではなく住宅などの不動産に替えると課 税評価額が下がり、節税効果があるため、アパートやマンション建設が 活発化している。

中小企業や個人向け業務に強みを持つりそなグループは、企業オー ナーや相続対策を希望する顧客に対応するコンサルティング担当者を 計1000人程度に拡大する計画を進めている。これら富裕層クラスを対象 にした不動産や事業承継に関連した貸出金残高は、15年3月末で4 兆4400億円と、1年間で2700億円積み増した。

3メガ邦銀グループ各社も富裕層の高齢化や相続税改正などを踏ま えた資産承継ニーズの獲得に力を入れている。みずほFGは、傘下の商 銀と信託銀、証券会社の連携で企業オーナーや地権者などへのアプロー チを強化し、15年度に事業承継や相続関連などを含む分野で業務粗利 益100億円の増加を見込んでいる。

人口減少

貸家経営について、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミス トは、人口減が地方で一段と顕著になるとし、「入居率や賃料が低下 し、当初の見通しと違ったストーリーとなる人は結構出てくる」と予 測。日銀が注意喚起した意図について、地域金融機関に対し、住宅市場 の縮小など「人口減の中で起こってくるリスクに備えないといけない、 とリスク管理の視点で伝えようとしているのでは」と話した。

総務省によると、13年の空き家率は過去最高の13.5%。空き屋数は 5年前から8.3%増加し、820万戸となった。空家率の高い都道府県は山 梨、愛媛、高知の各県の順。国立社会保障・人口問題研究所は、日本の 総人口は48年に1億人を割り、60年には8674万人に減少すると推計して いる。

--取材協力:持田譲二.

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