ソニー初代CFOがエレキ再生で平井体制批判-成果ないと意見書

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構造改革を断行し、株価も金融危機前の水準 に迫るソニーだが、エレクトロニクス事業の再生に成果が見られないと して、ソニーの初代最高財務責任者(CFO)が1日、経営陣に方針の 見直しを求めた。

ソニーの初代CFOで現ソニーフィナンシャルホールディングス顧 問の伊庭保氏は、取締役や執行役などの経営陣宛てに「ソニー・スピリ ットが甦(よみがえ)る日」と題した意見書(全文)を送付した。意見 書では、本業のエレキ事業でイノベーションが十分でない現状に懸念を 示すとともに、平井一夫社長が就任してから3年間にエレキ事業の再生 について「見るべき成果はほとんどない」と批判した。

ソニーは前期(2015年3月期)に1260億円の巨額赤字を計上した が、構造改革の断行で今期業績は回復する見込みで、株価も08年9月以 来となる4000円台に迫っている。しかし、ソニーの中核にある民生エレ キ事業は近年、「トリニトロン」テレビや「ウォークマン」ポータプル 音楽プレーヤーといった革新的製品を生み出せずにいる。

伊庭氏は1月19日と4月15日にも経営陣に意見書を送り、もっとイ ノベーションを重視するよう促した。平井社長と吉田憲一郎CFOら経 営陣は、4月に伊庭氏と面会して経営の現状を説明したが、伊庭氏は今 回の意見書で数カ月たっているが、「明確な回答はいただいていない」 と、述べている。

伊庭氏はブルームバーグの取材で、経営陣に意見書を3回送ったこ とについて、「一方通行でかまわない」としながらも、「株主総会が近 づいたので、広く思いを知ってもらいたい」と電子メールで述べた。

外れたエレキ

平井社長は2月の経営方針説明会で成長けん引役として、スマート フォンのカメラ用に使われるイメージセンサー、「プレイステーション (PS)」ゲーム、映画、音楽の4事業を掲げた。テレビやデジタルカ メラなど民生エレキは外された。

モバイル事業を除いて構造改革が一巡したソニーは、今期に固定資 産への投資を前期の約2倍に増やす計画だ。安定した収益が期待できる 法人向けビジネスでは、イメージセンサーの生産能力増強などがすでに 発表されている。

意見書では現行の経営方針について、短期の株価向上を意識したも ので「中・長期的企業価値の向上を目指す戦略に考えが及んでいない」 と批判。エレキ再生に向けて特許を含む知的財産の活用を促した。メカ トロニクス技術を活用した各種ロボット群や医療支援機器、スポーツ支 援デバイスなどを有望な事業領域として例示している。

取締役会の選任については、伊庭氏は有能な経営陣によって会社を 苦境から立ち直らせた例として米アップルと米ゼロックスを取り上げ、 ソニーの取締役会でも「エレキ技術に知見のある人材を起用」すること を促した。また、研究開発を行う資金調達の手段として、種類株の発行 や13年に米投資ファンドのサード・ポイントが提示した娯楽事業の分社 化と一部上場も再検討することを提案した。

ソニー広報担当のジョージ・ボイド氏は、伊庭氏の書簡についてコ メントを控えた。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は電話取材に、 「観念論ではエレキを再生できればよいが、具体案が示せていない」と 指摘。ソニーのエレキ事業は「ひと山終わって下っている状態。昔の繰 り返しでは難しい」とし、いまは米アップルのように、独占的な仕組み とソフトをつくることが重要だと語った。

伊庭氏は意見書で、1日からコーポレートガバナンスコードが上場 企業に適用になり、ソニー経営陣が「中期計画の未達の総括」や「経営 トップの報酬」などについてどう対応するかに注目していると述べた。 ソニーは23日に株主総会を予定している。

--取材協力:Pavel Alpeyev.

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