米ISS:低収益性500社トップ選任で反対指南-株主総会控え

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6月下旬にピークを迎える今年の株主総会で は、収益性の低い500社超の上場企業がトップの選任決議で、投資家か らこれまで以上の逆風を受ける可能性がある。

内外の運用会社など1600の機関投資家を顧客に抱える議決権行使助 言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ (ISS)が、株主資本利益率(ROE)が5年間平均5%未満の企業 のトップ選任案に反対するよう今年から投資家に助言し始めたからだ。

ISSは初めてこの独自ROE基準を導入した。石田猛行エグゼク ティブ・ディレクターはブルームバーグの電話取材に、直近の業績では 顧客の株式保有先の企業合計2100社の4分の1がこの基準に抵触してい ると述べた。「ROE基準を導入しているのは日本だけ」とし、日本企 業の資本効率の悪さを問題視していたという。

取締役の選任は、委任状提出を含む総会出席株主の過半の賛成で承 認される。ISSの助言を受けた投資家の議決権行使行動が直接、否決 という結果に結びつくかどうかは不明だが、行使結果は後に臨時報告書 などで取締役ごとに具体的な票数で開示されるため、経営陣はROEに 対する投資家の評価を意識せざるを得なくなる。

ROE=収益性指標

日本では6月から上場企業の経営の透明性向上のためのコーポレー トガバナンスコードが導入されるほか、投資家の規範を定めたスチュワ ードシップコードの受け入れも始まり、企業経営に対する投資家の関心 は高まっている。ROEは経済産業省が昨夏の「伊藤レポート」で企業 に最低8%の達成を迫るなど収益性指標として定着しつつある。

ISSの助言は経営方針をめぐり創業者親子が対立した大塚家具の 株主総会で繰り広げられた委任状争奪戦 (プロキシファイト)で、父 親の大塚勝久会長(当時)を退任に追い込む一因にもなった。同社の総 会は3月下旬に行われた。前期ROEは1.3%だった。

ブルームバーグのデータによると、TOPIX構成企業の32%に当 たる608社がISSの5%基準を満たしていない。この中にはソニーや キリンホールディングス、シャープなどが含まれる。国際的な主要株価 指数採用企業の14年のROE平均は日本の8.5%に対し、米国は15%、 英国は16%、中国が14%となっている。

収益力の底上げに期待

すでに3月に総会を終えたキリンでは、社長の取締役選任案への反 対票が21%に増えた。昨年の社長人事案は他の取締役と同水準の5.8% だった。

三菱UFJ信託銀行の中川雅博・会社法務コンサルティング室長は 個々の取締役への投票結果が判明するだけに、各々の経営陣は投資家を 無視できなくなると指摘。その上で「企業はROE5%の基準をクリア する方向で今後考えていくことになるのではないか。ISSの動きが、 日本企業の収益力の底上げにつながるかもしれない」と期待する。

同行が総会を終えた上場154社について調べたところ、トップ選任 議案の賛成比率は5年平均ROEが5%以上の企業は前年比3.36ポイン ト増えたが、5%未満では2.64ポイント減った。ただ賛成票自体はそれ ぞれ9割を超えている。中川氏は「海外機関投資家へのISSの影響力 は大きく、6月総会でも相応に反対票は増える」とみている。