原発事故後に不足した電力供給を増やすため 石炭火力発電所の新設が計画されているが、このうち3分の1が、環境 に影響を及ぼす恐れのある事業に求められた国の環境アセスメントの対 象にならない事業であることが、環境団体が発表したデータで明らかに なった。

NPO法人「気候ネットワーク」が企業や政府の発表、報道を基に まとめたデータによると、現在国内で45基の石炭火力発電所建設が計画 されている。そのうち15基が、環境アセスの対象とならない出力11 万2500キロワット以下の小型石炭火力発電所となっている。

石炭火力建設の反対派は一定の規模以下の発電設備が環境アセスの 対象外となっている点を問題視しており、小型の発電所を計画すること で規制を回避していると批判する。

気候ネットワークは、震災後に政府が石炭火力の活用を後押しする 中「電力会社を始め多くの事業者が猛烈な勢いで石炭火力発電の新規建 設計画を推し進めている」と指摘。このままでは発電燃料として最も環 境負荷の高い石炭火力への依存が続き、二酸化炭素(CO2)を「大量 に排出し続けることになる」との見解を示したリポートを4月に発表し た。

小型石炭火力発電所2カ所の建設を計画している日本製紙はブルー ムバーグの取材に対し、「大型火力発電所を建設するとなると、必要な 事業用地面積や港湾等のインフラ面での制約から、非常に困難なものに なる」と電子メールでコメントした。

同社は小型でも高効率の設備を導入する予定で「大型並みの効果が 得られ、さらにバイオマス燃料を混焼することで、二酸化炭素の発生を 抑制して環境負荷の低減を図る」としている。さらに、静岡県内で計画 中の発電所では自主的な環境アセスも実施している。

バイオマス燃料との混焼

小型石炭火力事業の大半が木質ペレットやリサイクル木材など木質 バイオマス燃料との混焼を想定している。混焼することで再生可能エネ ルギーの普及拡大のために導入された政府の補助金が交付される。

前日本環境学会会長で3月まで経済産業省の有識者会合で委員を務 めていた和田武氏はバイオマスとの混焼は「批判かわす意味合いがあ る」と指摘。「混焼は石炭のみよりCO2の排出が下がることになる が、本来は石炭そのものを増やすべきでない」との見解を示した。

原発の停止で不足した電力を補うため、石炭への依存度が増加。再 生可能エネルギーの普及促進を目指して世界でも有数の補助金制度が確 立されたものの、13年度の全発電電力量に占める石炭火力の割合は30% と、10年度の25%を上回った。

環境アセスでは大気汚染や騒音、水質や景観への影響などの点につ いて評価することを求めているほか、評価の過程で住民、地元自治体や 環境相などが意見書を提出することもできる。審査期間には数年を要す ることから、環境アセスが不要で完成までに必要な期間を省略できる小 規模な石炭火力に注目が集まった。

小規模は非効率

CO2排出量の少ない石炭火力発電の技術の推進派も、小型石炭火 力の利用については疑問を呈する。コマツの坂根正弘相談役は経産省の 有識者会合で「日本の石炭技術は世界一といいながら、一方で原発すべ てを止めている中で小規模な非効率な火力発電所をどんどん作ってい る。果たしてこれでいいのかという疑問を持っている」と述べた。

気候ネットワークの平田仁子理事は小型の石炭火力について「10基 建てば大型1基に相当する。効率も環境影響も悪く、アセス逃れの計画 があることは問題」と指摘。その上で「小型への対応を考えることが大 型の建設を加速させることになってはならず、大型、小型両方への対策 が必要だ」と話した。

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