【クレジット市場】三菱UFJ、最高益に潜むリスク-海外業務拡大で

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三菱UFJフィナンシャル・グループは、主 要業務の国内貸し出しの低収益を他の業務が補い前期(2015年3月期) に過去最高益を更新した。これは三菱UFJを含む3メガバンクが拡大 している海外業務に新たなリスクが潜んでいる可能性を示している。

各行の決算資料によれば、三菱UFJ、三井住友銀行、みずほ銀行 の前期(15年3月期)末の海外貸出金残高合計は前の期に比べて15%増 の約6900億ドル(約85兆円)でスイス経済に匹敵する規模。海外融資の 方が利ざやが厚いためだ。国内を含めた全貸出金残高の伸び率はそれぞ れ7%前後にとどまった。

キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズのアナリスト、デービッ ド・スレッドゴールド氏(東京在勤)は、「国内融資が一番のメイン業 務と思われるが、利ざや縮小でもはやそうではない」と述べた。一方で 「預金や店舗網のコストが残る中では貸し出しを止める訳にいかず、融 資と関連したビジネスで稼ぐこともできる」と語った。

国内業務では貸出利息や配当などの資金運用利回りからコストであ る預金利息や人件費などを差し引いた収益性指標の総資金利ざやは、前 期の三菱東京UFJ銀行がマイナス0.06%、みずほ銀が同0.07%ととも に2年連続で逆ざやとなった。地銀でも少なくとも6行がマイナスだっ た。資金運用利回りには手数料収入は含まれていない。

国際展開の強化

3メガの前期純利益は合計で前の期比4.4%減の2兆3993億円。三 菱UFJは5%増の1兆338億円と日本の金融機関で初めて1兆円の大 台に乗せた。三井住友Fは9.8%減の7536億円、みずほFGは11%減 の6119億円だった。今期(16年3月期)はみずほFGと三井住友Fが増 益を見込んでいる。

みずほFGは今年に入って英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコット ランド(RBS)から北米の優良企業向けの32億ドルを含む約200社の 債権・与信枠の総額約365億ドルを取得すると発表した。買収したタイ 大手アユタヤ銀行を連結化した三菱UFJは、今後3年間で国際部門の 営業純益を35%増の6750億円に引き上げる計画だ。

全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほFG社長)は21日の会見で、 海外融資について「個人的には不確定な要素があるとみている」と述べ た。その例として、融資先事業に影響する可能性のある原油価格の下落 や外国の財政問題などのソブリンリスクを挙げ、「今後リスクが出てく る可能性は残っている」と説明した。

債券調査会社クレジットサイツのデービッド・マーシャル氏(シン ガポール在勤)は邦銀の海外業務に関して、「有力な顧客のことを知ら ないことが多い」という。このためリスクは高くなると分析する。

地銀の利ざや

好業績の裏にリスクが潜んでいるのは一部地銀も同様だ。全国地方 銀行協会の寺門一義会長(常陽銀行頭取)は20日の会見で、同日までに 決算開示した63行中50行が増益で、このうち26行が過去最高益だったと 公表。「一見、好決算に映るが、増益の要因は有価証券の売却益や信用 コストの低下によるもので、収益基盤はボラタイルである」と述べた。

地銀は国内融資の収益性が低い中、運用収益確保のため国債や外国 債券を大量に抱えている。日銀統計によれば、15年3月末の地銀・第二 地銀が保有する外国証券の残高は約13兆円で1年間で約3兆2000億円増 えた。国債はほぼ横ばいの約40兆6000億円保有している。3月末の貸出 金残高(平残)は前年同期比3.9%増の約220兆円だった。

野村証券の高宮健アナリストは25日付リポートで上場地銀84行の貸 出金残高について「堅調に伸びているが、利ざや悪化を打ち返せなかっ た。貸出金利回りは10pb低下し、低下幅は引き続き大きい」と指摘。 有価証券運用多様化は低金利下での収益確保策として否定すべきではな いが、「本業収益の質・安定性やリスク管理の面では課題」という。