ハリスのヘロー氏、企業統治で日本は「2点」-安倍改革でも

「日本のコーポレートガバナンスは30年遅れ ている」-。米運用会社ハリス・アソシエイツのデービッド・ヘロー最 高投資責任者(CIO)はこう批判する。企業統治(ガバナンス)が透 明であれば、東芝の不適切会計のような不祥事は発生しないだろうとの 認識も明らかにした。

ヘロー氏は電話インタビューで日本企業のガバナンスについて「取 締役会のメンバーが多過ぎるし、多様性にも欠ける。内部留保も多過ぎ る」と指摘。安倍晋三政権が改革を始めた企業統治はまだ10点満点中の 2点で、10点を目指してさらなる前進が必要だと述べた。

日本では6月から上場企業に独立(社外)取締役2人の選任を求め るコーポレートガバナンスコードが導入されるほか、投資家の規範を定 めたスチュワードシップコードの受け入れも始まった。ブルームバーグ のデータによると、TOPIX構成企業の株主資本利益率(ROE)平 均は2年前の5.9%から改善し、8.2%となっている。

ハリスは1350億ドル(約16兆4153億円)の資産を運用する。CIO のヘロー氏は2010年に運用調査会社モーニングスターから10年間の運用 で最高の海外株式ファンドマネージャーに選ばれた。ブルームバーグの データによると同社は9本のファンドを運用、日本企業では大和証券グ ループ本社の13.75%、メイテックで12.6%を保有する筆頭株主だ。

東芝-オリンパス

東芝では4月に不適切会計が発覚。第三者委員会を設置して調査に 入り前期決算の発表も延期した。同社は商法改正で2003年に認められた 委員会等設置会社にいち早く移行。14年の非営利団体日本コーポレート ガバナンス研究所によるガバナンス体制に関するアンケート調査では回 答企業118社の中で19位に選ばれている。

ヘロー氏は「東芝の問題は取締役会がきちんと機能することが企業 にとって決定的に重要だということを示している」と指摘。「もし企業 のガバナンスがクリーンであれば、活動的で経営に疑問を持ったりする メンバーもいる。優秀な監査委員会があれば、このようなスキャンダル は起こらない」との見方を示す。

ハリスは11年に表面化したオリンパスの巨額損失隠し事件の当時、 同社の大株主で株価急落の影響も受けた。同社は「飛ばし」による損失 処理を指摘した当時のマイケル・ウッドフォード社長を追放したが、後 に事実を認め経営陣を刷新した。ヘロー氏は12年10月に「今回の問題は いい形で終息した」と宣言し、同社株の保有を2倍に買い増した。

資本効率

ヘロー氏は刑事事件やウッドフォード氏による損害賠償請求訴訟に まで発展したオリンパス問題について、「日本のガバナンスの変化に与 えた影響は大きかった」と振り返る。「この問題を受け、日本は問題を 見ないふりをして過ごすことも、きちんと対策を打つこともできたが、 結局、後者を選んだ」と述べる。

証券会社CLSAとアジアコーポレートガバナンス協会によると、 アジア企業の統治体制ランキングで、日本は12年の5位から3位に上昇 した。一方、大和総研の鈴木準主席研究員の調査によれば、14年の金融 を除く日本企業の対GDP比内部留保額は48%で仏、独の約20%、米 の10%未満に比べ多い。

ハリスのヘロー氏は内部留保について「バランスシートの健全性は 大事だが、5万ドルの車に500万ドルの保険をかけるのは無駄だ。保険 のかけすぎは保険の不足と同じくらい罪深い」という。日本では6月下 旬に株主総会シーズンを迎える。ヘロー氏は「資本効率を上げれば、ア クティビストたちも文句を言えないだろう」と語った。

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