【コラム】儲けたのは誰か、クーレ発言で英金融当局は調査を

18日の夜のことだ。欧州中央銀行( ECB)の債券購入策の調整に関する情報が一部の市場関係者だけに伝 えられた。非公開の会合に出席したトレーダーやエコノミスト、セント ラルバンカーに限定して開示された情報から誰が利益を得たのか、英国 の監督当局に調査させるのが正しい対応だ。一方で、報道機関に事前に 講演テキストを配布する慣行を取りやめるのは間違っている。さて ECBはどちらを選ぶだろうか。

今週何が起きたのか振り返ってみよう。ECBのクーレ理事は月曜 の夜にロンドンで開催された非公開の会合で、ECBがユーロ圏債券の 購入ペースを5、6月に加速させる意向だと述べた。講演テキストが公 になったのは翌朝になってからだ。金融市場に流動性がさらに流れ込む との見方から火曜日の外国為替市場ではユーロが対ドルで下落した。

火曜日にクーレ氏のコメントが公になる前後のユーロの値動きを私 は早速比較してみたが、それは間違った場所だったようだ。シンガポー ルのトレーダーが匿名を条件に教えてくれたところでは、探し物(利益 の機会)はオプション市場にあった。チャートを見ると、彼の言うこと は正しかった。

このチャートが描いているのはリスク・リバーサルと呼ばれるもの だ。オプションを使ってユーロ下落に賭けるトレーダーが増えるにつれ て、チャート上の白線は下に向かう。お金を儲けるにはレバレッジが効 くオプション取引が効果的だ。シンガポールのトレーダー氏が目撃した ところによると、オプション市場が動き始めたのはクーレ理事の講演内 容がメディアに開示される1時間ちょっと前のことだった。ちょうど欧 州時間帯の取引が開始されるころだ。それより早い時間では流動性が低 過ぎて大きなトレードはできないだろう。

このチャートを見て、クーレ氏が一部の市場関係者だけに前夜伝え た情報を利用し、誰かが利益を得たという結論を導き出さないとすれ ば、相当無理があるというものだ。

英金融行動監視機構

イングランド銀行(英中央銀行)が英金融市場における「内部情 報」と見なす事柄が幾つかあるが、「一般に入手・利用できない情報」 という定義もその中に含まれている。

クーレ氏の発言はまさにこれに当てはまるというのが、私の主張 だ。トレーダーが悪用してほしくないと監督当局が考える種類の内部情 報であり、英金融行動監視機構(FCA)がインサイダー取引の可能性 を調査してしかるべきだ。

しかしECBの見解は私とは異なる。クーレ氏の発言内容は月曜の 夜の段階で開示されるべきだったが、手続き面でミスがあったというの がECBの説明だ。ECBは慣行として、要人の講演内容を実際の発言 より前に決して報じてはならないという厳しい条件付きで、事前にメデ ィアに配布している。

無益かつ不可解

ECBは21日になって今後はこの慣行を取りやめると発表した。無 益で不可解な決定だ。従来の慣行がきちんと運用されていれば、こんな 事態にはならなかっただろう。しかも慣行を取りやめたところで、情報 の選択的開示の再発を防止する役には立たない。

しかも今回の出来事との関係が全く理解できない。必要なことは単 純明快だ。月曜夜の盛大なイベントの参加者が、特権的に得た情報を違 法に利用し、金儲けしなかったか調査することだ。 (マーク・ギルバート)

(マーク・ギルバート氏はブルームバーグ・ビューのコラムニスト です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:An Inquiry Should Ask Who Profited From ECB’s Leak(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE