「特設注意市場」で初のレッドカード、違反企業根絶へ存在感

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東京証券取引所の「特設注意市場銘柄」で4 月、初めての上場廃止事例が発生した。規則違反を犯した企業の更生と 素行不良企業の退場を促す役割を担いながら、これまでレッドカードを 受けた企業はゼロで、投資家の間でその効力が疑問視されていた。今回 厳格な判断が下され、制度の存在があらためて注目されている。

東証マザーズ市場に上場し、携帯電話の販売や保険テレマーケティ ングを手掛ける京王ズホールディングスは29日に上場廃止になる。同社 は有価証券報告書の虚偽記載を行い、その時点で廃止基準には該当しな かったため、2012年1月に特設注意市場銘柄に指定された。今回管理体 制に問題ありと判断され、東証は4月28日に上場廃止を決めた。

特設注意市場銘柄の制度は07年11月に導入され、旧大阪証券取引所 によるものも含め、これまでの7年余りで28社が指定され、その中には 有報の虚偽記載があった総合重機のIHI、医療機器やデジタルカメラ メーカーのオリンパスも含まれる。しかし、最終的には解除される状況 が続き、今回の京王ズHDが審査で上場廃止に至る初のケースだ。

日本取引所自主規制法人の広瀬英明・上場管理部長はブルームバー グの取材に対し、「今まで解除の実績か自らの理由での廃止しか見られ なかったことで、ペナルティを与えたが、上場は維持するという認識を 持っていた投資家が多かったのではないか」と指摘。京王ズHDに対す る今回の決定は「審査の結果、戻るのも廃止するのもあるということを 実績をもって示すことができた」と述べた。

特設注意市場銘柄は、上場規則に違反した企業に内部管理体制の改 善を促す半面、投資家に注意喚起することを狙っている。上場維持が目 的ではなく、指定期間内に内部管理体制などに改善が認められない場合 は上場廃止になるため、「上場廃止に準ずる措置」との位置付けだ。

隙間埋める制度

有報の虚偽記載など違反企業を上場廃止としなければ、市場秩序の 維持が困難な際の最も重い措置として、ライブドア(06年、虚偽記載及 び公益・投資者保護)などが対象となったケースがある。一方、廃止判 断に満たないケースでは、開示情報に虚偽の内容があった虹技などが挙 げられ、違反の経緯や改善措置を記載した「改善報告書」の提出及び公 表という措置が講じられる。

ただ、改善報告書のように問題点が限定された箇所にとどまらず、 会社の内部管理体制全体の改善を継続して見届けなければならないほど 違反の重要度が深刻なケースもある。

重大な規則違反だが、上場廃止基準には抵触しない場合に対応する ため、双方の隙間を埋める措置として特設注意市場銘柄の制度が生まれ た。自主規制法人の広瀬氏は、指定理由では「ほとんどが粉飾決算絡 み。下方修正をしないためや自分に与えられたノルマを達成するためと いう事例が比較的多い」と言う。そうした行為自体に加え、「行おうと したときにできてしまうことが問題。コンプライアンス意識を持ち、そ の機会をつぶす」ことが特設注意市場銘柄の狙い、としている。

セゾン投信の瀬下哲雄ポートフォリオマネジャーは、「投資家のた めに売買機会を残すというのは株主にとっては良いが、市場のためにな るのかは疑問だ」と指摘。問題のある企業の株式は「最低限処分する機 会を設けて退出させないと、どんな企業でも入れる市場だと思われる」 と上場企業の新陳代謝は重要との認識を示す。

特設注意市場銘柄の指定企業は、取引所から内部管理体制の改善が 求められる。当初の改善期間は3年以内だったが、東証では同制度を上 場規則の実効性確保の手段として積極的に活用するとし、13年8月から は原則1年間(今後の改善が見込まれる場合は6カ月間指定を延長)に 短縮した。

特設注意市場銘柄では、IHIやフタバ産業、アイロムホールディ ングス、オリンパスなどが後に指定解除され、民事再生手続きの真柄建 設や完全子会社化によるメルシャン、時価総額基準をクリアできなかっ たデザインエクスチェンジなど別の基準で上場廃止となったケースが7 社あった。現在も指定が継続しているのはリソー教育やアイセイ薬局な ど9社となっている。

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