【クレジット市場】英アビバがリクシルCBを売却、買収リスクで急落

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買収先の子会社に不適切な会計処理の疑いが 浮上していたLIXIL(リクシル)グループは、転換社債型新株予約 権付社債(CB)が急落、英保険グループのアビバは保有CBの一部を 売却した。事業拡大を目指す日本企業が積極化している企業の合併・買 収(M&A)にはリスクが伴うことを象徴している。

リクシルGは4月27日、買収した独グローエの子会社で中国が基盤 のジョウユウで業績・財政状況の報告が誤っていた可能性があるとし て、特別監査の実施を発表。さらに5月21日にはジョウユウが破産手続 き開始申し立てを検討していると発表した。CB(2020年償還)価格は 4月27日の103円から21日の99.1円まで下落。21日のリクシルG株 は2273円に下げ、転換価額の3880円を約4割下回る。

国内市場が少子高齢化の影響で頭打ちとなる中、リクシルGは収益 源を海外に求め、中期経営計画で19年度に総売上高3兆円のうち海外1 兆円を目標に設定。本格的に海外企業の取得に乗り出し、イタリアのビ ル外装建材会社ペルマスティリーザや北米衛生陶器首位のアメリカンス タンダードブランズ(ASB)を買収したのに続き、13年には欧州最大 の水回り企業グローエの買収を発表した。買収額は約4000億円。

英アビバ・インベスターズ・グローバル・サービシズのファンドマ ネジャー、ジャスティン・クレイブコックス氏は、リクシルCBを売却 した理由について、「的確に買収企業の事業統合を行い、中国事業を拡 大していけるか不透明感がある」と電子メールで回答。ジョウユウの 「監査プロセスや買収後の事業目標の明確化を求めたい」と述べた。

スイスの運用会社、フィッシュも同CBを売却。シニアパートナー のステファニー・ツヴィック氏は、「転換価額は株価に対し60%もプレ ミアムが乗り、CBが株価に反応しない」と話した。

破綻の影響

リクシルGの21日発表によると、ジョウユウが破産手続き開始を申 し立てた場合、リクシルGが持つ同社株式価値約250億円について損失 が発生する可能性がある。また、リクシルGが保証しているジョウユウ 子会社の債務において最大160億円の損失が発生する可能性があり、決 算への影響や損失額は確定次第公表するとしている。

これを受け格付投資情報センター(R&I)は、「A」としている リクシルGの格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更。 R&Iは、ジョウユウが破たんしたとしても「財務リスク評価に大きな 影響を与えることにはならない」とする半面、「海外を伸ばす戦略の中 でこうした問題発生は重く受け止めざるを得ない」と指摘した。

リクシルGの広報担当、福島しずか氏はCBや株価下落についてコ メントしなかった。

買収リスク

東京商工リサーチの調査によると、14年度に不適切な会計処理で業 績に影響が出たか、今後出る可能性がある上場企業は42社と、調査開始 以来最多。中でも製造業は海外子会社における不正経理などが15社(前 年度6社)に急増し、商工リサーチは会計問題について「国内外でグロ ーバル化を進める東証1・2部に増加が目立った」と指摘する。

国内市場縮小を背景に日本企業の海外買収は増加。ブルームバーグ データによれば、今年これまでの買収額は少なくとも90年以降で最大 だ。リクシルGのような会計問題だけでなく、相手方の経営問題が表面 化することも多く、性急な買収にはリスクが伴う。第一三共は08年に買 収後、経営不振に陥ったインドのランバクシーを売却。資生堂も買収し た米企業ののれん減損損失286億円を13年3月期に計上した。

コンサルタント会社、SCSグローバルの松本茂取締役は、買い手 と売り手の間では「買収するまでは情報の非対称性があり、良い案件で も2、3年は思ったのと違うことはある」と話し、買収後の数年はネガ ティブな要素が出やすいと指摘した。自らの調査によると、日本企業が 買収した海外企業の半数は10年後に売却、撤退に至ったという。

アリックスパートナーズの高松越百マネージングディレクターは、 「過去5年に行われた日本企業による海外企業買収の多くは、明確な方 向性がなかったり、事業統合がうまくできていなかったりしていること が原因で失敗している」と指摘する。

誤算

リクシルGはグローエ買収資金の借り換えに、日本企業としては過 去2年で最大規模のCB1200億円を2月に発行するなど、資金調達を社 債よりもCBに依存している。安倍政権発足後の株価上昇の流れに乗っ て、ゼロクーポンCBで低利調達を図ったが、今回の会計問題で株価は 急落。特別監査の結果が出た後も株価が回復しなければ、株式転換は進 まず、償還資金の手当ても必要になる可能性がある。

グローエ買収時のデューデリジェンス(資産査定)に問題がなかっ たかどうかについて、クレディ・スイス証券の望月政広アナリストは、 リクシルGは「ジョウユウに関して監査法人が監査したものを見てい る。監査法人が正しいと言って証明を付けたものなので、監査法人に問 題がある」との見方を示す。

同氏は、海外子会社問題にとどまらず、国内市場でも「新築住宅の ダウンの影響が大き過ぎる」ことが現在のリクシルGの評価につながっ ていると語った。前期(15年3月期)の事業概況によると、国内売上高 は消費増税の影響もあって、前年度比4%落ち込み、国内事業利益は前 年度を147億円下回る741億円だった。

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