FOMCは保険持たずに米経済を運転-深刻な景気後退リスク

米国経済という自動車は衝突時に備えた十分 な保険が無い状態で運転されている。

先のリセッション(景気後退)の谷からほぼ6年経過した米国では 持続的な成長が危うくなっているが、経済活動の縮小を押し返せるよう な金融、および財政の力が欠落している。

「恐らく先のリセッションよりも、次のリセッションとの距離の方 が短いように思われる」と指摘するのはHSBCホールディングス(ロ ンドン)のチーフ・グローバル・エコノミスト、スティーブン・キング 氏。「もし私が政策当局者だったら、リセッションの場合にどうすれば いいのかという心配で毎晩眠れないだろう」と語った。

不安なのは打てる手があまりないということだ。キング氏が今週ま とめたリポートによると、連邦公開市場委員会(FOMC)は1970年代 以降の景気低迷時にフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を平均 で6.2ポイント、最低でも5ポイント引き下げて対応したが、この金利 自体が事実上のゼロとなっている現状ではこうした対応は不可能だ。量 的緩和の追加は結局のところ資産価格を押し上げるだけで、需要を喚起 しないと同氏は分析する。

財政赤字が対国内総生産(GDP)比で約3%程度に縮小したとは いえ、過去の経済低迷期と比べれば総じて高いし、政府の借り入れ は2008年の金融危機前より大きい。

今リセッションになれば

「過去の景気サイクルにあてはめた場合、今頃政策は正常化してい たはずだ」とキング氏。「今リセッションになれば、ずっと厳しい闘い になるだろう」と述べた。

政策ツールが拡充されていないのは無理もない。現在の回復局面は 過去5回の回復期より弱く、リセッションが底を打って以降の成長率平 均は2%をわずかに上回る程度だ。インフレも弱く、キング氏によると FOMCはここまでインフレが低い時期に利上げを実行したことは一度 もない。

最後に利上げが実施されるまで、米経済は31カ月の成長期を要し た。今の経済成長はすでに70カ月が経過している。

キング氏はさらに、生産性の低迷と賃金上昇で企業利益が悪化すれ ば株価が下落する可能性や、年金基金や保険会社などノンバンクが抱え る将来の支払い義務、中国の景気減速が米国に波及する恐れなどが米経 済を引き倒しかねないと不安材料を羅列する。また欧州中央銀行( ECB)が2011年に犯した早過ぎる金融引き締めという過ちを、 FOMCがやらかす恐れも見落とせない。

非伝統的な解決策

リセッションを回避する、あるいは新たな刺激策を考案する能力に おいて政策当局を信頼できないとして、キング氏は非伝統的な解決策を 思いついた。

それは高齢者のリタイアを遅らせることによって貯蓄を減らすよう 国民に促し、その結果として得られる需要創出と税収増、金利上昇で次 の景気低迷期に備えるという方策だ。問題は高齢者の方が若者より投票 率が高いため、こうした改革が支持される確率が低いということだ。

「結局のところ、リセッションと闘うための手段は不足したまま で、深刻な経済縮小のリスクは格段と高まるだろう」とキング氏は悲観 する。

原題:U.S. Nearer Next Recession Than Last Lacks Fed Insurance Policy(抜粋)