日銀:付利金利引き下げ含むあらゆる手段排除せず、追加緩和

日本銀行は当面追加緩和は必要ないとの姿勢 を維持しつつも、追加緩和が必要な際には、日銀当座預金の超過準備に かかる0.1%の付利の引き下げや撤廃を含め、あらゆる手段を排除しな い方針であることが複数の関係者への取材で明らかになった。

黒田東彦総裁は12日、参院財政金融委員会で、付利の引き下げ、な いし撤廃は「検討していない」と述べたが、複数の関係者によると、将 来、追加緩和が必要になった際は、その可能性を排除するものではない という。一方で、マネタリーベース目標を掲げた現在の枠組みを続ける 限り、付利の引き下げは困難との見方も日銀内では根強い。

日銀が2年程度を念頭に置いて2%の物価目標を実現するとして量 的・質的金融緩和を導入して2年が経過した。足元の物価上昇率は原油 価格の急激な下落もあって、消費増税の影響を除くとゼロ%近辺で推移 している。

黒田総裁は15日、都内で講演し、物価の基調は着実に改善している ことから、「今の時点でさらなる追加緩和が必要という考えは持ってな い」としながらも、「2%の物価目標の達成に必要なら躊躇(ちゅうち ょ)なく調整を行う考えに変わりない」と述べた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケット エコノミストは10月の追加緩和を予想。その手段として「国債買い入れ の平均残存期間の長期化と付利金利の0.05%への引き下げ」を想定して いる。マネタリーベースは「年間約80兆円増」で据え置かれるが、「よ り政策効果を強める措置、との説明になるだろう」としている。

白川時代に設定された0.1%の付利

日銀は2013年4月、量的・質的金融緩和を導入。金融調節手段の操 作目標を無担保コール翌日物金利からマネタリーベース(日銀券、日銀 当座預金、貨幣の計)に変更し、「年間約60-70兆円」に相当するペー スで増加するよう金融市場調節を行うことを決定。昨年10月の追加緩和 により、これを「年間約80兆円」に拡大した。

金融機関は預金規模に応じて日銀当座預金に一定の現金を積み立て ることが義務付けられている。当座預金のうち、そうした所要準備を上 回る超過準備に金利を付す補完当座預金制度は、白川方明前総裁時代 の08年10月に導入。当時0.1%に設定されて以来、現在に至っている。

量的・質的金融緩和の下で、日銀は大量の長期国債を購入してお り、長期国債を売却した金融機関は日銀当座預金に現金を積み上げてい く。当座預金残高は10日現在、208兆円に達している。

複数の関係者によると、日銀内では、マネタリーベース目標を掲 げ、大量の長期国債を買い入れる現在の枠組みを続ける限り、付利の引 き下げないし撤廃は、効果より副作用の方が大きいとの見方も根強くあ る。市場関係者の間でも、金融機関が当座預金に現金を積み上げるイン センティブを維持する上で、0.1%の付利は不可欠との声も出ている。

伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は「日銀当預残高ひいてはマ ネタリーベースの減少につながる恐れがあるため、日銀が超過準備への 付利を引き下げる可能性は低い」とみる。

憶測呼んだ日銀リポート

一方、日銀は1日、「量的・質的金融緩和-2年間の効果の検証」 と題したリポートを公表。量的・質的金融緩和が「累積で1ポイント 弱、実質金利(10年物金利換算)を低下させる効果があった」と指摘し た。同リポートでマネタリーベースについて一言も触れられてないこと から、日銀が量から金利に軸足を移すとの思惑も浮上している。

みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、同リポー トで「ことさら実質金利の低下が強調されていた以上、金利ルートを攻 める意味で付利引き下げが検討される可能性は否定できない」と指摘。

さらに、「どこかで『量』を追求することの限界に直面する可能性 が方々で指摘され始めている。仮に、技術的に購入できる量が減少した 場合、日銀には『テーパリング(量的緩和の縮小)容疑』がかかる恐れ もある。それを避けるためには、『量』ではなく『金利』への回帰が取 り得るべき『次の一手』になり得る」とみる。

為替への働きかけには有効

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは追加緩和の手 段について「国債増額は流動性低下などの副作用が大きくなっている現 状を踏まえると難しい。付利をマイナス圏まで引き下げるなど、ポジテ ィブサプライズを演出する可能性がある」と指摘する。

UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは「為替に働きかけるの であれば、付利引き下げも効果がある。ドル円の水準次第では付利引き 下げも導入される可能性もある」とみる。

一方で、JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「付利 引き下げの可能性はゼロではないが低い」とみる。付利引き下げは「理 論的には実質金利をマイナスにする効果を有するが、銀行の貸出金利が 極端に低下している状況下、付利を引き下げると銀行の収益環境を大幅 に悪化させ、金融システムを不安定化させるリスクがある」と指摘。

その上で、「現状の0.1%の付利は、日銀から銀行への補助金の性 格が強いが、特に政治的な反対が見られないので、このまま継続される 可能性が高い」とみている。