米エイボンへの買収案は実在せず-巧妙に見えても穴だらけ

米国の象徴的な企業と謎めいたプライベート エクイティ(PE、未公開株)企業。それに突拍子もない買収案。

化粧品の製造・販売を手掛ける米エイボン・プロダクツへの買収案 と称する法定開示文書にはその全て、そしてそれ以上のものが詰まって いた。それが偽情報だと分かるまで、14日午前に同社の株価は一時、急 上昇した。

後から考えれば、この話はふに落ちない点があった。米証券取引委 員会(SEC)に提出された文書には誤字や余分なスペースがあり、エ イボンに買収提案したとされるPE投資会社の名前も2種類あった。

株式市場では動揺する場面もあったがすぐに、これは果たしてあり 得るだろうかという冷静な疑念が浮上。SECへの提出手続きに関心が 集まった。SECの法執行部門は買収案の真偽を調査している。

この届け出が開示されたのはニューヨーク時間午前11時35分(日本 時間15日午前0時35分)。PTGキャピタル・パートナーズを名乗る者 からだった。買収案は経営の厳しいエイボンをPTGが1株当た り18.75ドルで買収する内容だった。

それは破格の条件だった。提示額は前営業日の株価の約3倍で総額 約82億ドル(約9800億円)と、今年に入ってからのレバレッジド・バイ アウト(LBO)としては最大規模だった。

投資家は出来過ぎた話かどうかを気にしなかったようだ。エイボン が買収される可能性はこれまでずっと取りざたされていた。株価は一 時20%近く上昇し、25分間で約9100万ドル相当が取引された。

疑問が浮上

しかし、買収案の信ぴょう性をめぐる疑問が市場やソーシャルメデ ィアなどですぐに指摘された。PTGの名前は誰も聞いたことがない上 に、買収の実績もない。グーグルで検索しても見つからない上、提出文 書でこの企業は自社の名前を「PTG」ではなく「TPG」と2回誤記 した。TPGキャピタルは長くからあるPE投資会社で、運用資産は 約670億ドル。

PTGと称する企業はTPGの名前を借りただけではなかったよう だ。提出文書の文面もTPGが過去に使った言葉遣いと似ていた。 TPGは2010年にエイボンの日本法人を買収している。TPGの広報担 当、オーウェン・ブリックシルバー氏は同社がエイボンに買収提案した ことはなく、PTGとの何の関係もないと説明した。

文書開示から約90分後にSECは買収提案の真偽を調査していると の関係者の話が伝わり、エイボンも電子メールでの発表文で、PTGか ら買収提案を受けておらず、こうした企業の存在も確認できなかったこ とを明らかにした。

ヘネシー・ファンズ(ボストン)のポートフォリオマネジャー、ス キップ・エイルスワース氏は「誰かが多額のカネを持ち去った」と話し た。

原題:The Avon Bid That Isn’t: An $8.2 Billion Offer Looks Like Hoax(抜粋)

--取材協力:Kiel Porter.