ETF市場、5割保有の日銀効果で活性化-運用会社に恩恵も

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日本の指数連動型上場投資信託(ETF)市 場が活況だ。上場本数の増加や株高効果で純資産総額はこの2年余りで 約3倍となり、月間売買代金は3月に過去最高を記録した。異次元緩和 策でETFを購入し、純資産総額に占める保有比率が今や5割を占める 日本銀行の存在が好影響をもたらしている。

投資信託協会によると、2月末時点の国内ETFは128本、純資産 総額は12兆709億円で、第2次安倍政権が誕生した直後の2012年末と比 べると本数で23%増加、純資産で2.9倍になった。アベノミクス相場で TOPIXがこの間に77%上昇と株高が投資家の買い意欲を刺激した 上、指数の2倍動くレバレッジ型、指数と逆方向に動くインバース型が 登場するなど商品の多様化も背景にある。

ETF市場を活況に導くもう1つの要因が、デフレ脱却に向け大規 模金融緩和を続ける日本銀行の存在だ。東京証券取引所の試算では、2 月末時点の日銀のETF保有額は6兆17億円。国内ETF全体に対する 比率は5割に達する。

シンプレクス・アセット・マネジメントの運用本部ディレクターを 務める棟田響氏は、日本のETF市場の成長が「誰のおかげかという と、安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁」と言う。

特に株価下落時に日銀の購入が確認でき、相場の下支え役として市 場参加者からの信頼感は厚い。ETFと指数連動証券(ETN)の合計 売買代金は、3月に5兆4544億円(立会内)と過去最高となった。

日銀が景気刺激、金融市場の安定化を狙いリスク資産であるETF の購入を初めて表明したのは10年10月。買い入れ規模は当初4500億円だ ったが、黒田総裁による13年4月の異次元緩和で年間1兆円となり、昨 年10月の追加緩和では3倍の3兆円に引き上げられた。ブルームバーグ の試算では、日銀が購入可能なETF17本の純資産総額は、国内ETF 全体の85%となっている。

日銀の黒田東彦総裁は3月の国会答弁で、ETF購入について「株 価を押し上げることをもくろんでいるのではなく、市場におけるリスク プレミアムの圧縮を通じて市場全体が活性化していくことを期待してい る」と述べた

増えるアセット・マネジメント収益

ETF市場の拡大、活性化は運用会社の収益にとってプラス要因 だ。3月末時点の契約型公募投信の純資産額総額が23兆円と投信会社の 中でトップの野村アセットマネジメントは、日銀が購入可能なETF3 本を運用・管理し、合計純資産総額は5.4兆円とこの2年間で2.2倍にな った。米ブラックロックの2月時点のデータでは、野村アセットは世界 7位のETF運用会社で、2年前は9位だった。

野村アセットを傘下に持つ野村ホールディングスの15年3月期決算 を見ると、金融費用控除後の収益合計は前の期比3%増の1兆6042億 円。投信ビジネスを含むアセット・マネジメント部門は15%増の924億 円と、増収率はホールセール部門の3.2%を大きく上回り、株式委託手 数料の減少などで6.9%減少した営業部門を補った。同社の14年3月期 アセット・マネジメント部門の増収率も17%だった。

売買代金は海外勢5割超

東証の試算では、2月までの2年間で日銀のETF保有額はおよそ 4兆1000億円増えた。信託銀行を通じて購入する日銀の存在はETF自 体の認知度を上げ、純資産や取引量の増加につながった。しかし、3月 の投資部門別売買動向(委託売買代金ベース)によると、信託銀を含む 金融機関の比率は1.52%にとどまり、54%を海外投資家、42%を個人投 資家が占めている。

米ブラックロックのETF運用部ヘッドを務めるジェイソン・ミラ ー氏は、市場に対し日銀の動きは「明らかに影響がある」としながら も、「日銀の購入プログラムを考慮しなくても、驚異的な成長がベース にはある」と指摘する。

同社のETF「iシェアーズ日経225」は01年に上場し、日銀が異 次元緩和を行う前の13年3月時点の純資産総額は117億円だった。2年 後には1532億円と13倍となり、保険会社や地方銀行も買ってきていると ミラー氏。ブラックロックでは商品の多様化も進め、日銀がJPX日経 インデックス400連動型の資産購入を始めると発表した2カ月後の昨 年12月、「iシェアーズJPX日経インデックス400」も上場させた。

また、DIAMアセットマネジメントが1月、三井住友アセットマ ネジメントが日経平均連動の商品を新たに上場させるなど、ETF市場 全体の成長を見込んだ動きが運用会社の間で出てきている。

根強い追加緩和観測

日本株市場では、デフレ脱却の流れをより確実にするため、日銀が さらなる追加緩和に踏み切るとの観測が根強い。リスク資産の購入規模 が大きくなれば、ETF市場も一段と拡大する可能性がある。

3月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコアベー スで前年同月比2.2%上昇。消費税増税の影響を除くと0.2%上昇にとど まっており、日銀は4月30日に公表した経済・物価情勢の展望(展望リ ポート)で、物価上昇目標の2%程度に達するのは16年度前半ごろと従 来の15年度を中心とする期間から先延ばしした。

ブルームバーグが行った調査では、34人のエコノミストのうち、22 人が10月末までに日銀は追加緩和を行うと読む。野村証券では、10月に ETFの購入額が年間6兆円に増額されると予想。一方、16年10月以降 に購入額を減らし始めるだろう、とみている。

日興アセットマネジメントの今井幸英ETFセンター長は、日銀が ETFの購入額を減らす局面になれば、「需給面で影響が出てくる」と しつつ、その頃には「日本経済も良くなって、資本市場も活発になって いる」との認識を示した。