EUに向かう移民、夏季に向けリビアの混迷深まれば急増か

ボートに人を乗せて目的地まで送り届ける運 び屋稼業を15年にわたってしてきたアブ・サミール氏は、顧客を安心さ せる必要があることを分かっている。

「海が荒れている時は出航しない。きょうのようにないでいる時に 出発する」。5月のある日の夕方、アブ・サミール氏は欧州の方角を見 やりながら移住を望む人に話していた。

壊れそうなボートで地中海を渡る危険な旅を切望する移住希望者が 増えているため、アブ・サミール氏の商売は繁盛している。リビア国内 の状況が悪化すれば、さらに忙しくなりそうだ。同氏は仕事では実名を 名乗っていない。

アフリカ最大の原油埋蔵量を誇るリビアが崩壊の瀬戸際にある中、 同国の内戦と社会の崩壊によりシリア人やソマリア人、ナイジェリア 人、スーダン人の居住者のほか、一部のリビア人までもが脱出を余儀な くされ始めている。送電網の不具合が多い上、水道管が適切に管理され ていないことも溺れる危険を冒してまで人々が海を渡って欧州を目指す 一因になっている。

欧州外交評議会(ロンドン)のリビア専門家、マッティア・トアル ド氏によれば、昨年、欧州に避難した人々の大半はリビア人ではない。 「情勢が悪化し続ければ」そのような状況は変化するだろうと同氏は語 る。

既に今年、すし詰めのボートから救助した人数が過去最多に達して いるイタリアなど地中海沿岸諸国は懸念を強めている。欧州連合 (EU)は国連安全保障理事会に、密航業者が利用するボートに対して 軍事行動を取る権限を付与するよう求めている。

カダフィ政権崩壊から4年を経てリビアは内戦状態にある。2つの 政府が対立し情勢が不安定であるため、イスラム過激派組織「イスラム 国」が勢力を拡大している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) の推計によれば、リビアの人口約600万人のうち約40万人が内戦によっ て難民となっている。

原油価格と生産が共に落ち込む中、リビア当局は昨年、国家運営の ため外貨準備1060億ドル(約12兆7000億円)のうち25%余りを切り崩し た。サレム電力相は首都トリポリからインタビューに応じ、8月までに 全国規模の最長10時間の停電が複数回発生する可能性が高いと述べた。

原題:Libya’s Looming Summer of Turmoil May Swell Migrant Flow to EU(抜粋)

--取材協力:Saleh Sarrar、Glen Carey.