日銀は3つの呪縛で狼少年に、緩和は限界で修正必須-早川氏

元日本銀行理事の早川英男氏は、政策委員会 の内部分裂、2年の期限、マネタリーベース目標という3つの呪縛にと らわれ、日銀は「狼(おおかみ)少年」と化しており、市場との対話を 早急に修復しなければ出口で大きな混乱を来す恐れがある、と述べた。

現在、富士通総研エグゼクティブ・フェローを務める早川氏は7 日、ブルームバーグのインタビューで、「できれば7月、遅くとも10月 までに」、2年の期限撤回と限界に達しつつある異次元緩和の見直しを 行うべきだと主張。そうすることが、付利金利の引き下げを含め、いざ という時に有効な金融緩和の選択肢を確保することにつながると語る。

日銀が2%の物価目標を「2年程度の期間を念頭に置いてできるだ け早期に実現する」と宣言し、量的・質的金融緩和を導入して2年がた った。ちょうどそのタイミングで開かれた4月30日の金融政策決定会合 で、日銀は物価が2%に達するのは「16年度前半ごろ」として、従来か ら先送りする一方、追加緩和を見送った。

黒田東彦総裁は同日の会見で、2%達成時期を先送りしたことにつ いて、原油価格が昨夏以来の半年間で5割以上下落したことを挙げ、 「若干後ずれするだけだ」と指摘。量的・質的金融緩和は「所期の効果 を上げている」との見解を繰り返した。

早川氏は「物価がゼロ近辺に戻った理由としてはともかく、2%に 行かなかった理由に原油価格を挙げるのは無理がある。エネルギーを除 くコアコア消費者物価も0.5%以下にとどまっており、ほとんど理由に ならない」と言う。黒田総裁はコアコアにも原油下落の影響がそれなり に出ていると述べたが、「コアコアに対する原油の影響は極めて小さ い。円安の影響の方がはるかに大きい」と反論する。

そして、「結局、2年で2%達成の約束はどうなったのか。16年度 前半だから3年以上かかる。普通に考えればできなかったということだ が、黒田総裁は所期の効果を上げているとひたすら言い続けるだけで、 『できなかったけど、できた』みたいな答えになっている」と言う。

自縄自縛の3つの理由

2年で2%は達成できたのか、できなかったとしたらその理由、さ らに今後の対応について、「日銀は総括しなければならない」と述べ、 「ちょうど2年たったので、本来であれば先月30日公表した経済・物価 情勢の展望(展望リポート)で、それを示すべきだった」と語る。

早川氏は3つの理由を挙げて、日銀が自縄自縛に陥っていると指摘 する。1つ目は、政策委員会内の意見の不一致だ。「昨年の追加緩和で 5対4と票が真っ二つに分かれたことで、それが一層鮮明になった。今 回の展望リポートでも、中心的な見通しに対して3人が異を唱えた。こ れだけ意見が違うと量的・質的緩和を総括するのは難しい」と話す。

2つ目は、2年の位置付けだ。「昨年10月に追加緩和に踏み切り、 やはり2年程度でやるんだという姿勢を示したことで、市場は早期に 2%を達成できなかったら、どんどん緩和すると思い込んでしまった。 先月30日の金融政策決定会合も、直前まで追加緩和があるかもしれない と思っていた人たちがいる」と言う。

理不尽なマネタリーベース目標

出口が近付けば、市場との対話は非常に重要になるが、「昨年10月 に追加緩和に踏み切って以降、それが崩壊してしまった。市場はいつま たサプライズがあるか分からないと疑心暗鬼に陥っている。早く市場と の対話を修復しないと、日銀が言っていることは信じられないと思われ たら、出口で大混乱する可能性が非常に高い」と懸念する。

3つ目は、マネタリーベース(日銀券、日銀当座預金、貨幣)を目 標にしたことだ。「私自身は今すぐ追加緩和すべきだとは全く思ってな いが、欧州や中国情勢などを考えると何が起こるか分からないので、常 に緩和手段を持ってなければならない。ところが、マネタリーベースを 目標としている結果、もはや有効なカードがなくなっている」と言う。

追加緩和の手段として、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い 増しや地方債の買い入れを挙げる向きもあるが、「マネタリーベース目 標の下ではマネタリーベースを増やすことに意味がある。ETFやその 他の資産でどれだけマネタリーベースを増やせるのか。マネタリーベー スを年間10兆円単位で増やす手段は国債しかない」と述べる。

放棄すれば緩和手段は潤沢に

もっとも、「国債を毎月10兆円も買ってしまうと、これ以上増やせ ないだろう。日銀は増やせると言うだろうが、あと半年や1年だったら 可能でも、既に目標達成期限を16年度半ばまで先送りしているので、こ れから1年半は続く。ここからさらに増やしてしまったら、買い入れを 持続するのは無理だろう。事実上、できないということだ」と語る。

逆に言えば、マネタリーベース目標さえ捨てれば、「追加緩和の手 段はいくらでもある。ETF1兆円でも追加緩和だし、地方債や社債で もいい。貸出支援基金の枠を増やすという手もある。現在0.1%の付利 の引き下げはマネタリーベース目標をやっている限りできないが、これ をゼロ、あるいはマイナスにするという選択肢もある」としている。

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