【日本株週間展望】下値試す、低金利変調-FRB議長発言も

5月第2週(11-15日)の日本株は下値を試 す展開となりそうだ。昨年から続いていた世界的な金利低下に変化の兆 しが見え、リスク資産に対する先行き不透明感が広がりやすい。ギリシ ャ債務問題の動向次第では、下げ幅が大きくなる可能性もある。

みずほ信託銀行の中野貴比呂シニアストラテジストは、「大型連休 後に金融市場の景色が変わってきている気がする」とし、「はっきり株 価が高いと発言したイエレン議長による影響は引きずるだろう。調整の 週にならざるを得ない」とみている。

第1週の日経平均株価は週間で0.8%安の1万9379円19銭と、1月 以来の続落。海外で長期金利が急上昇したことなどが嫌気され、電機や 精密機器、医薬品、食料品株などを中心に安くなった。

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は6日、ワシント ンでの講演後の質疑応答で、「現時点で株式市場のバリュエーションが 総じてかなり高くなっていることに留意してほしい」と発言。さらに、 「債券のような安全資産のリターンに比べれば、株式のリターンはさほ ど高くない。債券のリターンも非常に低い。しかし、ここに危険性が潜 んでいる可能性がある」とも述べた。債券利回りについては、初回利上 げをきっかけに「急激に上昇する可能性がある」としている。

「米利上げ後も金利は激しく上昇せず、株価は大崩れせずに上がっ ていくというのがこれまでの市場の見方だった」とみずほ信託の中野 氏。米国の利上げ局面が現実味を帯びる中でも、過剰流動性継続への期 待で株価は上昇してきたが、「利上げ局面では経済が力強さを発揮しづ らい。イエレン議長発言は利上げした際のことを考えてほしい、という メッセージ」と受け止める。

欧州中央銀行(ECB)の債券購入プログラムを受け、利回りが歴 史的低水準にあった欧州の国債価格は大幅に下落(利回りは上昇)して いる。ドイツ10年債利回りは4月中旬に0.049%まで低下したが、7日 には一時0.78%と昨年12月以来の高水準に上昇。欧州発で世界の債券が 下落し、米10年債利回りも2.25%と年初来の高水準を付けた。

行き過ぎたグローバルデフレ論

4月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比横 ばいだった。3月まで4カ月続いた消費者物価の下落に歯止めがかかっ たことは、大規模な資産購入がデフレ回避に奏功しているとするドラギ ECB総裁の見解を裏付ける。

三井住友アセットマネジメントの金本直樹シニアファンドマネージ ャーは、「昨年からのグローバルデフレによる原油安と欧州でのマイナ ス金利は明らかに行き過ぎていた」と指摘。グローバルデフレの流れが 終わったかどうかはまだ不透明としながらも、足元の金利上昇は一時的 なリターン・リバーサルか、トレンドの完全な転換か、いずれかを見極 める必要があると話す。

また、いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、米国 売り・ドイツ買いに向かったマネーの巻き戻しが起きているとの見方 だ。「マクロは堅調だが、ドル高で企業業績が頭打ちの米国に対し、デ フレ継続によるユーロ安で恩恵を受けるドイツの株・債券買いが続いて きた」と同氏。しかし、米経済統計が予想ほど良くなく、ドイツではデ フレ脱却の状況になりつつあり、今までの流れが反転していると言う。

米供給管理協会(ISM)による4月の製造業総合景況指数は51.5 と、活動の拡大と縮小の境目を示す50は上回ったものの、前月同様 に2013年5月以来の緩やかなペースにとどまった。5日発表の3月の米 貿易赤字額(国際収支ベース)は、前月比43%増の514億ドルと08年10 月以来で最高。貿易収支の結果は、1-3月期の国内総生産(GDP) の下方修正要因になる。

いちよしアセットの秋野氏は、ドイツ買いの流れは日本株にも波及 効果をもたらしていたとし、巻き戻しの動きが強まれば、日本株への売 り圧力も高まると指摘。米景況感の悪さが一段と鮮明になると、「1ド ル=117円台の可能性は十分ある」と円高進行リスクにも懸念を示す。

ギリシャ債務問題への警戒もくすぶりそうだ。ECB当局者ら は、11日に予定されるユーロ圏財務相会合での交渉進展を望んでいる が、実現しない場合はギリシャの銀行向け緊急流動性支援の制限を検討 する見込み、としている。

短期下値めどは1万9000円

丸三証券の牛尾貴投資情報部長はギリシャ問題について、欧州連合 (EU)に占める経済規模の小ささだけに目を向けるべきではないと言 う。07-08年当時、サブプライムローンの規模が米ローン残高全体の1 割に過ぎないなどと軽視された結果、最終的にはリーマン・ショックに つながった。「ギリシャが本当に救済を受けられず、デフォルトになれ ば、大きなインパクトを与える」と同氏は話している。

国内企業の3月期決算発表も続く。東京証券取引所によると、第3 週は連日200社以上が続き、1日当たりの発表ピーク日は15日の355社。 牛尾氏は、企業業績について「慎重予想が散見される。業績期待の剥落 が売りを誘ってもおかしくない」とし、日経平均は心理的節目の1 万9000円が当面の下値めどと予想した。さらに、4月23日終値の2 万187円で既に日本株が高値を付け調整入りしたとすれば、中期的には 1割程度調整した1万8000円どころが目安の1つになると言う。

このほかの投資材料は、米国で13日に4月の小売売上高、15日に4 月の鉱工業生産や5月のニューヨーク連銀製造業景気指数などが公表予 定。欧州では13日にユーロ圏の1-3月期GDP、国内では13日に4月 の景気ウオッチャー調査などがある。