トヨタの種類株は市井の投資家に妙味-安定株主形成に期待

トヨタ自動車が発行を予定する種類株式は、 短期で一獲千金を狙うよりコツコツと安定した資産を築きたいと願う一 般投資家のニーズを満たす設計となっている。

三重県津市在住の中西久さん(77)もこの種類株に関心を寄せる一 人だ。大手私鉄を退職し、現在は妻と2人暮らし。銀行預金のほか株式 での運用もしているが「退職金と年金を補充する」程度で、「基本的に は安定志向」とし、リスクはできるだけ避けたいという。

トヨタの資料によると、第1回AA型種類株式の配当年率は発行年 度に0.5%、1年ごとに0.5ポイント上昇し、5年目以降は2.5%が支払 われる。発行後おおむね5年経過すると普通株式への転換が可能なほ か、株価が下落しても発行価格での換金機会が確保される。銀行定期預 金で5年ものの金利は、比較的に高いあおぞら銀行でも年0.35%

中西さんは、種類株が元本が保証される形になっているとし「退職 者にしてみればやっぱりそれが一番大きい」と述べた。人気で抽選にな る可能性があるとしながらも、「もし買えるとすれば私も多少投資して みたい」と話した。

トヨタの種類株は非上場ながら議決権があることも特徴。調達資金 は燃料電池車(FCV)など次世代技術を含む研究開発投資に充てると している。名古屋市の主婦、築山真子さん(40)はリスクが限定されて いる上に配当も高く投資対象として魅力的と話す。トヨタの経営権の一 部を持って「日本の経済をけん引することに一役買うこともできる」こ とにもひかれるという。

ファナック、GM

米投資ファンド、サード・ポイントを率いるダニエル・ローブ氏や ハリー・ウィルソン氏などのアクティビスト(物言う株主)がファナッ クや米ゼネラル・モーターズ(GM)などに攻勢をかけて大幅な株主還 元を引き出すなか、トヨタは3月に個人投資家向け説明会を開催。豊田 章男社長が約4000人を前に経営方針を語るなど中長期にわたって会社を 支えてくれる安定株主の形成に向けた取り組みを続けてきた。

6月の総会後に決まる1株の発行価格は、決定日の東京証券取引所 での終値の1.2倍以上となり、当初の5年間は原則的に換金ができない などの制限がある。このため、トヨタは「機関投資家は株式の流動性を 重視するため、中心は国内の個人投資家になる可能性が高い」と考えて いるとしている。

マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは、上場企業であ れば通常は会社が株主を選ぶことはできないが、トヨタの種類株は投資 家を選択する新しいアプローチだと指摘。最低5年の継続保有などの条 件は機関投資家の投資対象としては不向きで、トヨタがどういう層にこ の株に投資してほしいかは明らかだ、と話した。

長期なら機関投資家も

SBI証券の鈴木英之投資調査部長は、トヨタが種類株の発行に伴 い、普通株の希薄化を避けるために同数程度の自己株式を取得する予定 であることについて、差し引きでの資金調達額は少ないようにみえる が、「会社側のニーズに合った投資家層が増える」などのメリットが考 えられると話した。

鈴木氏は将来の配当収入が見えているため、個人だけでなく機関投 資家でも長期資金を運用するところには十分投資の選択肢になりうると 話し、トヨタの取り組みが成功すれば、他の日本企業にも同様の動きが 広がる可能性があると話した。