7月追加緩和予想を後ずれ、目標達成先送りで-ゴールドマンなど3社

日本銀行が2%の物価目標の達成時期を先送 りしたことを受けて、エコノミストの間で追加緩和の予想時期を後ずれ させる動きが相次いでいる。

追加緩和予想を後ずれさせたのは、1日時点でゴールドマン・サッ クス証券、HSBCホールディングス、JPモルガン証券の3社。いず れも早ければ7月の追加緩和を予想していたが、ゴールドマンと HSBCは次回展望リポートが公表される10月30日に、JPモルガンは 来年1月ないし4月に変更した。

ブルームバーグが先月30日の金融政策決定会合と経済・物価情勢の 展望(展望リポート)公表前にエコノミスト34人を対象に行った調査で は、追加緩和予想は4月30日が2人(5.9%)、6月ないし7月が10人 (29%)、9月ないし10月が11人(32%)で、年内は23人(68%)と過 半数を超えていた。同調査は4月20日から25日にかけて行われた。

ゴールドマンの馬場直彦チーフエコノミストは2日付リポートで、 展望リポートの「最大のサプライズ」は、2%物価目標の達成時期を 「これまでの『2015年度を中心とする期間』から『2016年度前半』へと 明確に先送ったことだった」と記した。

今回の達成時期の先送りは「引き続き『2年程度で2%を実現する とのコミットメントを変えるつもりはない』とする黒田総裁のメッセー ジと整合性を欠いている」と指摘。「これまで7月中間評価時点での追 加緩和をベースライン・ケースとしてきたが、これを受けて、10月末の 次回展望リポート時に先送る」としている。

様子見姿勢強める日銀

日銀は展望リポートで15年度の消費者物価(生鮮食品を除くコア CPI)の前年比見通し(政策委員の中央値)を従来の1%上昇か ら0.8%上昇に下方修正。2%程度に達するのは「16年度前半ごろ」と して、従来の「15年度を中心とする期間」から後ずれさせた。

JPモルガンの菅野雅明チーフエコノミストも先月30日付リポート で、日銀が2%の達成時期を後ずれさせたことを背景に追加緩和予想時 期を変更した。

HSBCの日本担当エコノミスト、デバリエ・いづみ氏(香港在 勤)は1日付リポートで、2%達成時期の先送りと黒田総裁の会見によ り、「政策委員会が短期的には様子見姿勢を強めていることが示唆され た」ことを変更理由に挙げている。

早期の緩和観測をけん制

黒田東彦総裁は先月30日の会見で「確かに15年度を中心とする期間 から、16年度前半ごろと、若干2%程度に達する見込みが後ずれしてい るのは事実だが、物価の基調は着実に改善しているし、今後とも改善が 続くという見通しなので、今の段階で何か追加的な緩和は必要ない」と 述べた。

一方で、「2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現す るというコミットメントは、これを変更する考えはない」と言明。「物 価の基調が変わってくれば、躊躇(ちゅうちょ)なく政策の調整を行う 考え方に変わりはない」と述べた。

大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは先月30日付リポート で、「黒田総裁は、会合後の会見で『物価の基調』は着実に改善し、改 善傾向は今後も続く、との判断を強調した。基調が変化すれば『躊躇な く行動』するとも述べ、政策対応余地は残しつつも、追加策が早期に投 入されるとの観測についてはけん制したといえそうだ」としている。

緩和予想時期の後ずれが相次ぐ中、バークレイズ証券の森田京平チ ーフエコノミストは1日付リポートで、日銀が7月14、15日の金融政策 決定会合で追加緩和に踏み切るとの予想を維持した。

量より質の緩和を予想

理由は第1に、日銀は展望リポートでコアCPI前年比は「当面 0%で推移する」としており、「マイナスへの転化をメインシナリオと 想定している様子はない」一方で、森田氏は5月に失速、6月ないし7 月にマイナスとなり、その状態が11月ごろまで続くと見ていること。

第2に、今のところ予想インフレ率は粘り腰を見せているが、「消 費財国内品の企業物価指数(消費税除く)が急速に前年比マイナス幅を 広げていることを踏まえると、6月調査短観における『企業の物価見通 し』(7月2日発表予定)では予想インフレ率が下がる可能性がある」 ためだ。

追加緩和の具体的手段として森田氏は、指数連動型上場投資信託 (ETF)買い入れオペの加速(年間3兆円から5兆円へ)と、日銀当 座預金の超過準備に対する付利(現行0.1%)の0.05%への引き下げを 想定しており、「量的」というよりも「質的」な緩和を予想している。

--取材協力:James Mayger.

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