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日銀追加緩和見送り、15年度物価見通し下方修正でも-サーベイ

日本銀行が30日に示す物価見通しが仮に下方 修正されても、下げ幅は小幅にとどまるとの見方が強く、金融政策運営 は現状維持を決定するとみられている。ブルームバーグが実施した調査 で明らかになった。

ブルームバーグが4月20日から25日にかけてエコノミスト34人を対 象に行った調査で、32人が現状維持を予想した。大和証券の野口麻衣子 シニアエコノミストは「見通し数値の下方修正やシナリオ表現の修正が あったとしても、『物価の基調』が弱含んでいるとの判断に至らなけれ ば、追加の対応は必要ないとの結論になりそうだ」という。

2月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は増税の影響 を除くベースで前年比ゼロ%に落ち込んだ。日銀は昨年10月に2015年度 のコアCPI見通し(中央値)を1.9%から1.7%上昇に下方修正、さら に今年1月に1%に下方修正しており、30日公表の経済・物価情勢の展 望(展望リポート)で下方修正すれば3回連続となる。

複数の関係者によると、たとえ15年度の見通しが下方修正されて も、日銀は物価の基調は着実に改善するとみており、16年度、17年度と 2年連続で2%程度上昇するとの見通しが示される見込みだ。

自民党の山本幸三衆院議員は24日、ブルームバーグのインタビュー で、物価が目先マイナスになる可能性があり、日銀も物価見通しを下げ るという状況の中、「何もしないという話はちょっとあり得ない」と述 べ、30日の金融政策決定会合で追加金融緩和に踏み切るよう促した。

日銀はコアCPI前年比について、15年度を中心とする期間に2% に達する可能性が高いという見通しを示してきた。BNPパリバ証券の 河野龍太郎チーフエコノミストは「日銀はこれまでも目標達成時期に関 する表現を微妙に調整しており、今回、表現を多少後退させたからと言 って、追加緩和の可能性が高まるわけではないと見られる」という。

物価の基調を強調

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストも「展望リポー トで景気・物価の基本シナリオは維持される可能性が高く、政策委員の GDP成長率とコアCPI見通しの修正も小幅にとどまる」と予想。

「実際には日銀の強気な物価見通しと現実との乖離(かいり)は一 段と拡大しているように思われるが、日銀は緩やかな景気回復とそれに 伴う需給ギャップ改善、予想インフレ率の高まりといった『基調』を前 面に出すことで、物価シナリオの書き換えを回避する可能性が高い」と みる。

もっとも、日銀はいずれ物価見通しの大幅な下方修正を迫られ、早 晩、追加緩和に追い込まれるとの見方が根強い。ブルームバーグの調査 では、23人(68%)が年内の追加緩和を予想している。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「『15年度を中 心とする期間に2%程度に達する可能性が高い』という表現を修正する のは時間の問題だろう。2%の物価目標は変えないだろうが、期限は先 送りせざるを得ないだろう。その際、円高、株安、期待インフレ率の低 下を避けるために追加緩和に踏み切るだろう」とみる。

黒田総裁は限界論にはくみしない

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「日銀の強 気の物価見通しが実現する可能性はほとんどない。見通しの抜本的な修 正とセットで追加緩和を行わない場合、2%目標達成に向けた日銀の 『やる気』が疑われ、海外投資家が日本株売りや円買いに動く可能性が 高い。そうした事態を回避するためにも追加緩和は行われる」とみる。

さらに、巨額の国債買い入れが限界に近づいているという「物理的 制約などを根拠にして追加緩和の可能性を否定する論者もいるようだ が、黒田総裁の発言内容などから考えて、そうした見方は妥当とは言い 難い」という。

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストも「期限内の物 価目標達成は見込みが低い。目標を延期する手もあるが、日銀への信任 低下を招き、その後の政策効果を阻害してしまうリスクがある」と指 摘。「最終的には延期をせざる得なくなるにせよ、何もせずに延期する とは考えづらい」とみる。

森本委員の後任にトヨタ出身

政府は21日、6月30日に任期が満了する森本宜久審議委員の後任に トヨタ自動車相談役の布野幸利氏を起用する人事案を提示した。森本委 員は昨年10月31日の追加緩和で、石田浩二委員、佐藤健裕委員、木内登 英委員とともに反対に回った。

ブルームバーグの調査で、黒田総裁が年内に追加緩和を提案した場 合、森本氏の後任審議委員が賛成すると思うか聞いたところ、回答し た28人中27人が「はい」と回答した。

伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は布野氏について、「輸出企 業の出身であり円安進行に対する抵抗感は小さいとみられ、前任者との 比較において追加緩和のハードルは下がった」と指摘。三菱UFJリサ ーチ&コンサルティングの小林真一郎シニアエコノミストも「黒田総裁 の意見が通りやすくなりそうだ」とみる。

一方、バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「ドル円 が120円となった今、布野氏がさらなる円安を求めるとは考えにくく、 金融政策には中立の人事だ」と指摘。ジャパンマクロアドバイザーズの の大久保琢史チーフエコノミストは「布野氏は2%の物価目標の達成よ りも、むしろ為替相場の安定に重きを置き、追加緩和は支持しないだろ う」とみている。

日銀ウオッチャーを対象にしたアンケート調査の項目は、1)今会 合の金融政策予想、2)追加緩和時期と手段や量的・質的金融緩和の縮 小時期および「2年で2%物価目標」実現の可能性、3)日銀当座預金 の超過準備に対する付利金利(現在0.1%)予想、4)コメント-。

1)日銀はいつ追加緩和に踏み切るか?
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調査機関数            34    100%
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4月30日                2    5.9%
5月                    0    0.0%
6月                    1    2.9%
7月                    9   26.5%
8月                    0    0.0%
9月                    1    2.9%
10月7日                0    0.0%
10月30日              10   29.4%
11月                   0    0.0%
12月                   0    0.0%
2016年1月              2    5.9%
2016年2月              0    0.0%
2016年3月              0    0.0%
2016年4月以降          0    0.0%
追加緩和なし           9   26.5%
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2)追加緩和の具体的な手段
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マネタリーベースの増加ペースの引き上げ    19
長期国債の買い入れペースの引き上げ        14
ETFの買い入れペースの引き上げ             18
J-REITの買い入れペースの引き上げ           8
付利の引き下げ                             6
その他                                     7
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3)日銀は生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI、消費増税の影響を
除く)前年比が2016年度の「見通し期間の中盤頃に2%程度に達する
可能性が高い」としてますが、この見通しは実現しますか。
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調査機関数                                31
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はい                                       3
いいえ                                    28
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4)日銀が2%の「物価安定の目標」が安定的に持続すると判断し、
量的・質的金融緩和の縮小を開始する時期はいつ?
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調査機関数                        32    100.0%
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 2015年上期                        0      0.0%
 2015年下期                        0      0.0%
 2016年上期                        0      0.0%
 2016年下期                        2      6.3%
 2017年上期                        0      0.0%
 2017年下期                        5     15.6%
 2018年以降                        9     28.1%
見通せず                          16     50.0%
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5) 日銀は30日、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で2015年
度、16年度、17年度の生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)前年
比(増税の影響を除く)と実質GDP成長率の見通しを公表します。
【エコノミストご自身の見通し】と【日銀の見通し(中央値)の予想】
をそれぞれお示しください。
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                         エコノミストの見通し/日銀の見通しの予想
15年度 - コアCPI             0.3%            0.7%
16年度 - コアCPI             1.1%            2.2%
17年度 - コアCPI             1.25%           2.1%
15年度 - 実質GDP              0.7%           2.0%
16年度 - 実質GDP              2.2%           1.6%
17年度 - 実質GDP              2.1%           1.0%
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6) 森本宜久審議委員の後任人事が21日に提示される見通しです。
その人物は黒田総裁が年内に追加緩和を提案した場合、賛成すると思わ
れますか。
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調査機関数                                  28
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はい                                        27
いいえ                                       1
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メリルリンチ証券、吉川雅幸                      10月30日
バークレイズ証券、森田京平                      7月
BNPパリバ証券、河野龍太郎                       追加緩和なし
キャピタルエコノミクス、Marcel Thieliant                 4月30日
シティグループ証券、村嶋帰一                    7月
クレディ・アグリコル証券、尾形和彦                      10月30日
クレディ・スイス証券、白川浩道                  9月
第一生命経済研究所、熊野英生                    10月30日
大和総研、熊谷亮丸                             10月30日
大和証券、野口麻衣子                           追加緩和なし
ゴールドマン・サックス証券、馬場直彦                     7月
HSBCホールディングス、デバリエ・いづみ                7月
伊藤忠経済研究所、武田淳                        7月
ジャパンマクロアドバイザーズ、大久保琢史                 追加緩和なし
日本総合研究所、山田久                          追加緩和なし
JPモルガン証券、菅野雅明                        7月
明治安田生命保険、小玉祐一                      10月30日
三菱UFJモルガンスタンレー証券、六車治美                 10月30日
三菱UFJモルガンスタンレー景気循環、景気循環研 嶋中雄二    4月30日
三菱UFJリサーチコンサルティング、小林真一郎                 7月
みずほ総合研究所、高田創                        10月30日
みずほ証券、上野泰也                            10月30日
ニッセイ基礎研究所、矢嶋康次                     7月
農林中金総合研究所、南武志                      追加緩和なし
岡三証券、鈴木誠                                追加緩和なし
信州大学、真壁昭夫                              6月
三井住友銀行、西岡純子                          追加緩和なし
SMBCフレンド証券、岩下真理                      10月30日
SMBC日興証券、森田長太郎                        2016年1月
ソシエテジェネラル証券、会田卓司                 10月30日
三井住友アセットマネジメント、武藤弘明                    追加緩和なし
東海東京証券、佐野一彦                          追加緩和なし
東短リサーチ、加藤出                            2016年1月
UBS証券、青木大樹                              7月

(表中の5番目の質問項目の日銀の見通し予想の数字は訂正済みです)

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