古い敵の来襲におびえ始めた米債券トレーダー、TIPS購入

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3カ月前に米国のデフレに身構えていた債券 トレーダーが今やインフレを心配し始め、物価上昇に備える米国債に飛 び付いている。

3カ月で何が変化したのか。もちろん原油相場と関係がある。5カ 月間で1バレル=100ドル以上から50ドル弱に急落した原油安に歯止め がかかった。

しかし、重要なのは、米連邦準備制度に対する債券市場の見方の変 化だろう。債券トレーダーは、政策金利をゼロ近くから引き上げる当局 の方針で経済成長が妨げられると懸念するのではなく、連邦準備制度が 利上げに踏み切る前に原油急落で失速した米経済が再び勢いづくと今や 確信している。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの運用担当者、ジェームズ・エバ ンス氏は原油相場について、「悪影響は乗り越えた。連邦準備制度は利 上げになお非常に慎重だ。インフレ加速の土台が整っている」と指摘し た。

エバンス氏は期間5-10年のインフレ連動債(TIPS)を購入し ており、同氏のようにインフレシナリオを受け入れる市場参加者が増え ている。バークレイズが分析した連邦準備制度のデータによると、米国 債の取引高全体に占めるTIPSの割合は今月過去最高の約2.75%に達 した。

債券市場の変化

債券市場ではTIPSの需要増加と同時に今後数年の消費者物価上 昇ペースの見通しが上振れしている。ブレークイーブンレートによれ ば、債券トレーダーは今後5年でインフレ率が平均1.7%になると予 想。これは2014年末に比べて0.5ポイント高く、年初からのこの時期ま での上振れ幅としては過去4年で最も大きい。

これは15年初めとは全く対照的な状況だ。当時は原油などの商品価 格急落で世界的なデフレスパイラルの観測が浮上。欧州や中国の中央銀 行は金融政策による需要刺激に動いた。米経済は世界でも明るい場所と 見なされているが、連邦準備制度が楽観的になり過ぎてエネルギー価格 下落に伴うリスクを見過ごしているのではないかと債券トレーダーは懸 念を示していた。

1月時点では米国債利回りは1年以内にデフレに直面する見通しを 示唆していたが、連邦準備制度理事会(FRB)当局者は低インフレの 影響を重視せずに景気判断を引き上げ、エネルギー価格下落が消費者の 購買力押し上げにつながるとしていた。こうしたスタンスは3月に変化 した。FRB政策担当者は年内の政策金利の上昇ペースの見通しを引き 下げ、イエレンFRB議長も3月27日の講演で利上げに慎重なアプロー チを採用する姿勢を示した。

3月の米消費者物価指数(CPI)は食料品とエネルギーを除くコ ア指数の上昇率が前年同月比1.8%と、昨年10月以来で最大となった。 原油価格が6年ぶりの安値から回復し、エネルギー価格は2カ月連続で 上昇した。

ナショナル・ペン・インベスターズ・トラストのジェームズ・バー ンズ氏は、連邦準備制度が緩和的な金融政策を維持する期間が長期化す ればするほど、米経済が石油ショックから回復する過程でインフレが加 速する可能性が高まると予測した。

原題:Here’s The Old Nemesis Starting to Spook U.S. Bond Traders Again(抜粋)

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