商社決算:残る追加減損懸念、逆風下での株主還元も注目-市場関係者

総合商社の前期(2015年3月期)の決算発表 が5月1日から始まる。原油急落など資源安で住友商事が16年ぶりの最 終赤字に陥るとの見通しをすでに発表。大手5社がこれまでに予想した 計5700億円の前期の減損損失がさらに拡大することが懸念されている。 市場関係者は株主還元策に注目している。

昨年7月まで1バレル当たり100ドルを超えていたニューヨーク原 油先物相場。今年に入り09年以来となる50ドル割れの水準まで下落し、 足下でも50ドル台にとどまる。鉄鉱石や石炭価格も昨年と比べて約半分 に落ち込んだ。資源関連の権益などを保有する商社各社は資産の収益性 低下で帳簿上の価格を引き下げ、損失計上を余儀なくされている。

前期に3250億円の減損を計上した住商のほか、丸紅も1200億円の減 損を計上するとして前期の純利益予想を期初予想比で半減の1100億円に 修正。三井物産も原油下落を主因とする700億円の減損計上で、純利益 予想を3800億円から3200億円へと下方修正した。

追加減損が懸念の材料だ。大和証券の五百旗頭治郎アナリストは三 井物産に注目。原油などの大幅下落を受けて「資産の質が悪いわけでは ないが、エネルギー関連の保有資産が大きいだけに相当額の減損を計上 する可能性はある」。減損認識の基準が各社異なり予測は難しいとしな がらも、数百億円単位の追加減損を見込み、最大1000億円規模に達した としても驚きはないとみる。

期初の業績予想を据え置いている三菱商事も第4四半期(1-3月 期)に350億円程度の減損を会社側で織り込んでいるほか、伊藤忠商事 もブラジル鉄鉱石事業で減損計上の可能性があると説明している。た だ、三菱商事は過去に減損処理したローソン株の株価回復による戻り 益、伊藤忠は頂新ホールディングス株の再評価益でともに約600億円計 上するとして業績を下支えする見通し。

今期も厳しい

ブルームバーグが集計した15年のニューヨーク原油先物価格のアナ リスト予想の中央値は1バレル当たり55ドルと、今期も足下の価格から の大きな反発は見込めない状況だ。

JPモルガン証券の森和久アナリストは「今期の業績見通しは厳し く、限られたキャッシュをどう配分するのかがポイント」と語る。資源 価格の低迷で営業キャッシュフローの低下が懸念され、投資額も抑制さ れるとみる。「市場では減配を避けて欲しいという期待感が非常に強 く、逆風下での株主還元を求められるタフな状況になる」。

株主還元に関しては赤字転落を発表した住商が配当金予想を1株当 たり50円に据え置いた。今期からの新中期経営計画では配当金50円を下 限とし、配当性向25%以上を目安にする株主還元策を盛り込んだ。50円 の配当は連結純利益2500億円をベースとした配当性向25%に当たる。

ジェフリーズ証券のファム・タアインハ・アナリストは、配当の下 限を設定したことは投資家にとっては安心感があると評価。安定した利 益貢献が見込める非資源事業の比率が高まれば、商社株は今後再評価さ れると指摘する。

PBRが1倍割れ

総合商社の株価純資産倍率(PBR)は1倍を割り込む状態が続 く。企業の解散価値を下回る低水準に放置されている状態。これまでフ リーキャッシュフロー(純現金収支)が赤字になったとしても各社は積 極投資を続けてきた。

JPモルガンの森氏は、資源急落という事態に見舞われた結果、投 資リターンの低い高値づかみの案件となり株主価値をき損してきたと見 られていることが株価低迷を招いた要因の一つだと分析している。

大和証券のまとめによると14年3月期までの2年間で資源分野を中 心とした商社5社合計の減損額は約2800億円。これに15年3月期分を含 めると過去3年での減損合計は1兆円に迫る規模となる。

こうした結果も踏まえて五百旗頭氏も「キャッシュをどう次の成長 に使っていくのか。投資に回すのか、株主還元に回すのか配分の規律や 戦略が最大の注目点になる」と指摘した。

【総合商社5社の純利益予想】
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            前期会社予想      今期市場予想      
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三菱商事        4000(  11)        3935(-1.6)
三井物産        3200(-8.6)        2999(-6.3)
伊藤忠          3000(  22)        2983(-0.6)
住友商事        -850( -- )         2359( -- )
丸紅            1100( -48)          2050( 86 )
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 (注:単位は億円、カッコ内は前の期比%、今期市場予想は27日時点
のアナリスト予想の平均値でカッコ内は前期会社予想との比較)
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